オーディオ機器並みのサウンドを手に入れる
最近は「PCオーディオ」という用語も登場し、オーディオマニアがPCをベースとしたオーディオ環境を構築するほど、PCの音質に注目が集まっている。
とはいえ、マザーボードが標準で搭載しているサウンド機能の音質が劣悪なのも事実。スペック上はオーディオ機器でも見たことがないほどの高性能をうたっているものの、実際はノイズがひどく、大音量では聞くに堪えないというケースも少なくない。
だからと言って、これがPCの音質だと考えるのは早計だ。サウンドデバイスを追加することで、まったく次元の異なる音に変身する。もちろん、実際の音の出口であるスピーカーもそれなりのものに交換することで本領を発揮するわけだが、オーディオ機器をも上回る音質にすることだって可能だ。
そこで、代表的なPC用サウンドデバイスをピックアップし、音質テストを行なってみた。オンボードサウンドとの違いがハッキリと見えてくるので、比較してみてほしい。
マザーボードのオンボードサウンドチップ

多くのマザーボードで採用されているRealtekのHD Audioチップ。スペックは悪くはないが、周辺回路が貧弱で音質がよくないことが多い
サイン波で音質はどこまで分かる?
下の波形は、1kHzのサイン波を再生したものを「ローランド OCTA-CAPTURE」という機材で取り込み、波形分析を行なったものだ。1kHz以外の部分に波形が出るほどノイズが多いことになる。上のグラフはマザーボードのオンボードサウンドデバイスの波形だが、1kHz以外の部分でもノイズが多く出ていることが分かる。この波形を基準にすれば、ほかのサウンドデバイスとも比較しやすいだろう。ただし、この波形で分かるのはTHDとS/Nの値であり、音質の優劣や好みは実際に聞き比べないと分からない。

THDとは?
全高調波歪率の略で出力に含まれる倍音成分がどのくらい含まれているかを示すもの。この倍音成分は基準音にはない歪み成分であるため、小さいほうがよいとされている。ただ数値は演算による誤差も大きいので波形を見たほうが直感的に分かりやすい。
S/Nとは?
S/NはSN比とも言われ、本来の信号に対してどの程度ノイズ成分が含まれているかを割合で示すもの。数値はdB(デシベル)で表記する。値が大きいほど、ノイズ成分の比率が少ないことを意味し、結果として高音質ということになる。
サウンドデバイス選びのポイント

形状や接続方式は多種多様
実際に使う上で重要なのはどんな端子が搭載されているか。アナログ、デジタルを含め、さまざまな入出力端子があるので用途に合わせてよく確認しておくとよいだろう。

高音質化の工夫をチェック
見た目だけで、高音質かどうかをチェックするのは困難だが、アナログ部品、とくにコンデンサの数やシールドのされ方などは一つの参考にはなるはずだ。
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-870(2.93GHz)、ベアボーンPC:Shuttle XPC SH55 J2(Intel H55)、メモリ:ノーブランド DDR3-1333 SDRAM 2GB×4、SSD:Micron Technology Crucial RealSSD C300 CTFDDAC064MAG-1G1(Serial ATA 3.0、MLC、64GB)、HDD:日立GST Deskstar HDS722020ALA330(Serial ATA 2.5、7,200rpm、2TB)、入力用オーディオデバイス:ローランド OCTA-CAPTURE、モニタスピーカー:ヤマハ MSP5 STUDIO、計測ソフト:WaveSpectra V1.40
ステップアップに最適な多様性
- 5.1ch
- PCI
- C-Media Oxygen HD CMI8786
- ゲーム用途
- ■■■■□
- 音楽用途
- ■■■■□
- AV用途
- ■■■■□
- ASUSTeK
- Xonar DG
- 実売価格:3,500円前後

手頃な価格ながらも音楽やゲーム、AVとさまざまな環境に対応できるのが魅力。サウンドチップは定番のCMI8786。ゲームではおなじみのEAX5.0再生もサポート。ドルビーヘッドホン対応でヘッドホンでのサラウンド再生も可能だ。

PC、マザーボードメーカーであり、音の専門メーカーではないが、かなり頑張っているという印象。全体的にノイズ成分があるが、非常に微小であり、聞いた感じでも、とてもクリアなサウンドとなっている
Specification音声入出力:S/P DIF OUT(光角型)、LINE OUT(5.1チャンネル、ミニ)、LINE IN/マイク(ミニ)、AUX IN(ピンヘッダ)
S/Nにこだわったフラグシップモデル
- 2ch
- PCI Express x1
- ASUSTeK AV100
- ゲーム用途
- ■■■■□
- 音楽用途
- ■■■■■
- AV用途
- ■■■■□
- ASUSTeK
- XONAR Essence STX
- 実売価格:15,000円前後

公称値124dBのS/Nを実現した同社の最上位モデル。独立したヘッドホンアンプを搭載し、オペアンプの交換にも対応、高音質化のためシールドも施されている。搭載チップはASUSTeK AV100で、ゲームサラウンドにも対応している。

グラフを見ると、Sound Blaster X-Fi TitaniumHDとも似た感じで、ノイズ成分は非常に少なく、S/Nも70dBを超す好成績。2kHzの倍音が若干目立つものの、この音質のよさがXonarシリーズ全体の高評価につながっている
Specification音声入出力:S/P DIF OUT(同軸/光ミニ)、S/P DIF OUT(ピンヘッダ)、LINE OUT(RCA)、LINE IN(ホン)、AUX IN(ピンヘッダ)
オーディオメーカーのこだわりが見える高音質サウンドカード
- 7.1ch
- PCI
- VIA Envy24HT
- ゲーム用途
- ■■■□□
- 音楽用途
- ■■■■■
- AV用途
- ■■■■□
- オンキヨー
- WAVIO SE-200PCI LTD
- 実売価格:20,000円前後

リスニング向けとして高い評価を得た定番カード、SE-200PCIの音質をさらに向上させた製品。独自の高音質化回路VLSCを銅製シールドでカバー、パーツ選定にもこだわっている。アナログ出力が金メッキRCA端子なのもうれしい。

実際に聞いてみると、まさにオーディオメーカーの音。奥行きのあるサウンドを味わえるが、波形で見ると意外にもノイズ成分がある程度含まれているのが分かる。ただ、こうしたものが音の味付けになるのも事実なのだ
Specification音声入出力:S/P DIF OUT(光角型)、LINE OUT(RCA)、LINE OUT(7.1チャンネル、ミニ)、S/P DIF IN(光角型)、LINE IN(RCA)、マイク(ミニ)
単体DACとしても使える外付けモデル
- 2ch
- USB
- 非公開
- ゲーム用途
- ■■■□□
- 音楽用途
- ■■■■■
- AV用途
- ■■■□□
- オンキヨー
- WAVIO SE-U55SX2
- 実売価格:20,000円前後

USB接続だが、ACアダプタを使うことによって単体DACやセレクタとしても動作するのが特徴。ダイヤルも大型で操作しやすく、デジタル入力3系統/出力2系統と入出力も充実している。DACはバーブラウンのPCM1796を採用。

SE-200PCI LTDによく似たグラフになっているのが分かる。聞いた感じでの音の傾向も近い。ただ、低域でのノイズがこちらのほうが少ないのが違いの一つとなっており、音質的な差としても現われている
Specification音声入出力:S/P DIF OUT(光角型)×2、LINE OUT(RCA)、S/P DIF IN(同軸)、S/P DIF IN(光角型)×2、LINE IN(RCA)、ヘッドホン(ミニ)、マイク(ミニ)
【問い合わせ先】
ASUSTeK:news@unitycorp.co.jp(ユニティ)/ http://www.asus.co.jp/
オンキヨー:050-3161-9555/ http://www.jp.onkyo.com/