チップセットの役割はCPUと周辺パーツの橋渡し
チップセットはマザーボードの性能や機能の多くを決める重要部品だ。チップセットの位置付けや概要を頭に入れておけばマザー選びもスムーズに運ぶ。
チップセットは、CPUに合わせて設計されるICチップ群で、CPUとほかのパーツとのデータのやり取りを制御することが主な役割だ。一般に1~2チップで構成され、2チップの場合は、メインのチップ(North Bridge)に加えて、主にI/O(ストレージインターフェースなど)関連機能を担当するSouth Bridgeが組み合わされる。近年ではそれまでチップセットが担当していた機能をCPUに統合する流れが進んでおり、チップセットの具体的な役割もCPUによって流動的に変動している。たとえば、低価格システム向けのGPUコアは従来チップセットに内蔵していたが、IntelのLGA1156プラットフォームでは低価格CPUにGPUコアを内蔵し、チップセットにはディスプレイの出力機能のみを持たせるように変わった。この映像出力機能があるかないかといった違いもまた、マザーボード選びに影響してくる。
プラットフォームごとにソケットが異なるIntel
さて、各種チップセットの位置付けと概要は上図に簡単にまとめている。ハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドとおおまかにグレード分けし、上にいくほど上位のチップセットという位置付けになっている。具体的な仕様については下のスペック表を確認してほしい。まず、グレードについてだが、Intel系は少しややこしい。と言うのも、ハイエンドはLGA1366、ミドルレンジからローエンドがLGA1156、超ローエンドがLGA775と対応するCPUソケットが異なり、利用可能なCPUの特徴も一緒に考慮する必要があるためだ。上の図でP55チップセットを搭載したマザーボードの価格帯の範囲がとても広くなっているのは、X58とP55では対応CPUが異なっていることの影響が大きい。LGA1366の下位CPUとLGA1156の上位CPUではパフォーマンス的に逆転する場面もあり、LGA1156の上位CPUでハイエンドのシステムを組みたいというニーズがあるため、P55チップセットを搭載したハイエンドマザーも売られているからである。一方、AMDの場合は現行CPUのソケット自体はSocket AM3で共通であり、シンプルなラインナップになっている。
Serial ATA 3.0対応に差
AMD系はSouth Bridgeに注目
マザーボードの実装にかかわってくるものとしては、ストレージインターフェースの違いがある。Intel系のチップセットはSerial ATAインターフェースの速度が3Gbps(Serial ATA 2.5)対応にとどまるのに対し、AMD系チップセットのSouth BridgeであるSB850は6Gbps(Serial ATA 3.0)の転送速度に標準で対応している。Serial ATAの3Gbpsと6Gbpsとで実際にどのくらいの差があるのかは、下のグラフの結果を見てもらいたい。6Gbpsに対応しているMicronのSSD「RealSSD C300」の性能をチップセット別に計測したものだが、連続読み出しのSequential Readの数値に違いがよく表われている。3Gbps対応にとどまるIntel系では270MB/s前後で頭打ちになっているのに対し、6GbpsのSB850を搭載したAMD系では340MB/sと、3Gbpsの理論上の転送速度(300MB/s)を上回るスコアをマークしている。
このように、Serial ATA 3.0の6Gbps転送は実際にその差を体感できるほどであり、RealSSD C300などがリーズナブルな価格で出回っていることから、USB 3.0とともにマザーボードの機能としてもニーズが高い。Intel系では別途Serial ATA 3.0コントローラを実装して対応しているが、SB850を搭載したAMD系マザーはそれを必要としないメリットがある。ただし、AMD系でも必ずSouth BridgeがSB850とは限らず、6Gbpsに対応しない旧世代のSB710が使われることもあるので、その点に注意したい。

6Gbpsネイティブ対応のSB850
AMD 8シリーズチップセットのSouth Bridgeで、6基のSerial ATA 3.0ポートをサポートしている。外部コントローラチップなしで、6Gbps転送対応SSDが持つ本来の性能を引き出せる
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-980X Extreme Edition(3.33GHz)、Intel Core i7-875K(2.93GHz)、Intel Core i5-655K(3.2GHz)※Intel H57とIntel H55で使用、AMD Phenom II X6 1090T Black Edition(3.2GHz)、マザーボード:ASUSTeK P6X58D-E(Intel X58+ICH10R)、ASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55)、ASUSTeK P7H57D-V EVO(Intel H57)、ASUSTeK P7H55D-M EVO(Intel H55)、ASUSTeK P5QPL-AM(Intel G41+ICH7)、ASUSTeK AT5NM10-I(Intel Atom D510+NM10)、ASUSTeK AT5IONT-I(Intel Atom D525+NM10+Next Generation ION[ION2])、ASUSTeK M4A89TD PRO/USB3(AMD 890FX+SB850)、ASUSTeK M4A89GTD PRO/USB3(AMD 890GX+SB850)、ASUSTeK M4A88TD-V EVO/USB3(AMD 880G+SB850)※標準状態でGPUがOCされているためAMD 880G相当の定格にダウンクロックして使用、ASUSTeK M4A87TD EVO(AMD 870+SB850)、メモリ:Corsair Memory CMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×4)※Intel X58では3枚のみ使用、ほかは2枚のみ使用、CFD販売 CFD ELIXIR W2U800CQ-1GLZJ(PC2-6400 DDR2 SDRAM 1GB)×2 ※Intel G41とIntel Atom(NM10)で使用、ノーブランドPC3-6400 DDR3 SDRAM SO-DIMM 1GB※Intel Atom(NM10+ION2)で使用、ビデオカード:EVGA 01G-P3-1371-KR(NVIDIA GeForce GTX 460)※内蔵GPU搭載CPUおよびチップセットでは未使用、SSD:Micron Technology Crucial RealSSD C300 CTFDDAC064MAG-1G1(Serial ATA 3.0、MLC、64GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版