空白の1カ月を経てSandy Bridge再始動
開発コードネームSandy Bridgeこと第2世代のCore iシリーズとそれに対応するIntel 6シリーズチップセットが発表されたのは2011年の1月6日。本誌3月号でお伝えしたように、その性能と電力効率は素晴らしく、自作市場は近年にないほどの盛り上がりを見せつつあった。
ところが、その盛り上がりもつかの間、2月1日にはIntelからIntel 6シリーズチップセットのSerial ATA 2.5(3Gbps)ポートに不具合があることが発表され、ほどなくIntel 6シリーズを搭載したマザーボードは出荷停止。CPUはあっても対応マザーボードがなく、事実上Sandy Bridgeでの自作はできない状態が続いていた。
不具合を解消したB3ステッピングのIntel 6シリーズチップセットを搭載したマザーボードの流通開始は4月以降とも言われていたが、3月に入ると状況が一変。各メーカーが販売を再開するとともに、不具合発覚前にマザーボードを購入したユーザーへの交換対応も始まっている。空白の1カ月を経て、Sandy Bridgeでの自作ができる状態に戻ってきた。
Sandy Bridgeシステムが魅力的な性能や機能、電力効率を備えていることは間違いなく、今PCを自作するならば、やはりSandy Bridgeシステムは選択肢の筆頭に挙げられる。今回は改めてSandy Bridgeに関する特集を企画した。
Sandy Bridgeの概要や性能検証などはすでに3月号で実施済みだが、その後Core i3、Intel H61チップセットが追加されており、当時とは状況が異なる。今月号ではそういった最新状況に加えて、3月号ではできなかった、より詳細な検証などをまとめてお送りする。

一連の事態の中ではかなり混乱もあり、気分的に水を差された感も否めないものの、Sandy Bridgeで自作することができる状況が戻ってきたのは素直に歓迎したいところだ
不具合が解消されたマザーボードが登場

B3ステッピングのIntel P67チップセット。外観は従来ととくに変わらない。ダイ上にマーキングされているsSpecで判別できるが、「B3」などという分かりやすい表示はない

ようやくマザーボードの販売が再開。レイアウトやチップセット以外の実装部品にはまったく変化はないが、多くの製品ではシールやシルク印刷でB3ステッピングであることを表示している
Sandy Bridgeの特徴をおさらい
Sandy Bridgeの特徴を簡単に言えば、とにかく速くて省電力であることだ。どちらにもマイクロアーキテクチャ(内部での命令処理の仕組)のリニューアルが大きく貢献している。
たとえば、内部命令キャッシュの増量などによって内部命令の処理効率を向上させているほか、従来の3次キャッシュに相当するLLC(ラストレベルキャッシュ)をコアごとにブロック分けして管理し、各ブロックをリング状の高速なバスで接続することで配線の集中を防ぐとともに、アクセス性能を大幅に向上させている。全モデルでCPUコアとGPUコアを同一の半導体チップに集積し、32nmプロセスルールで製造されていることも特徴と言える。
また、対応チップセットのIntel 6シリーズでは、Serial ATA 6GbpsやPCI Express 2.0の5GT/s転送対応、システムバスの高速化など各種データバス帯域を拡張しており、システムレベルで見るとさらにアドバンテージが大きい。
性能については下に掲載したベンチマークテスト結果を見れば明らかだ。Sandy Bridgeの主力モデルであるCore i7-2600Kは、PCでの作業全般をシミュレートするPCMark VantageではフラグシップモデルのCore i7-980X Extreme Editionを上回り、TMPGEnc Video Mastering Works 5の動画エンコードテストでも互角に近い。従来の主力であるCore i7-875Kに対してはすべてのテストで圧倒している。また、Sandy Bridge勢は1コアのみでレンダリングを行なうCINEBENCH R11.5のCPU(シングルコア)のスコアが軒並み高いことから、1コアあたりの処理性能が高いことが分かるだろう
電力効率のよさも消費電力のテスト結果を見れば一目瞭然だ。第2世代のCore i7-2600Kは、第1世代のCore i7-875Kに比べてアイドル時で15.8W、高負荷時で39.1Wと大幅に消費電力が低い。Core i5はさらに低く、エコ・節電という観点からも注目すべき存在だ。

新ソケット「LGA1155」を採用
Sandy BridgeではLGA1155という新しいソケットを採用している。外観は従来のLGA1156とほぼ同じだが、切り欠きの位置が異なっており、互換性はない

チップセットはSATA 6Gbps対応
Intel P67/H67チップセットは6基のSerial ATAポートを持ち、うち2基は6Gbpsに対応。左の写真のように6Gbpsポート(白)と3Gbpsポート(黒)と色分けしているマザーボードが多い
【検証環境】
[LGA1155]
マザーボード:Intel DP67BG(Intel P67)
[LGA1366]
マザーボード:ASUSTeK P6T SE(Intel X58+ICH10R)
[LGA1156]
マザーボード:ASUSTeK P7H55-M/USB3(Intel H55)
[共通環境]
メモリ:Corsair Memory CMX8GX3MA41600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×4 ※LGA1155/1156では2枚のみ使用、LGA1366では3枚のみ使用)、ビデオカード:MSI NGTX480 Lightning(NVIDIA GeForce GTX 480)、SSD:Philips&Lite-On Digital Solutions PLEXTOR M2S PX-256M2S(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版、電源ユニット:Corsair Memory CMPSU-850HXJP(850W)、アイドル時:OS起動5分後の値、高負荷時:CINEBENCH R11.5開始15秒以降の最大値