ソフトによって画質はどう違う?
先の変換所要時間の比較において、Quick Sync Videoが高速であることは確認できた。では肝心の画質はどうなのだろう。ハードウェアエンコーダはソフトウェアエンコーダと比べ柔軟性に劣るというのが一般的に言われてきたことだ。そこで、Quick Sync Video対応の各アプリケーションが搭載するソフトウェアエンコーダとの間で画質の比較を行なった。元ソースは1,440×1,080ドットのAVCHDフォーマット。映像出力の設定は、フォーマットがMPEG4 AVC/H.264、bitレートが6Mbps、解像度には手を加えていない。ただしアプリケーションにより統一不可能な項目もあるため、完全に同一の条件というわけではなく、あくまで各ソフトウェアごとの傾向を把握するという程度でご覧いただきたい。
トリップメーター部分の拡大で比較

今回用いたのはサーキット走行中の車載カメラの映像で、遠景の前走車のディテールにも差が出るが、なかでもエンコード処理によるつぶれが顕著に発生するトリップメーター付近を拡大して比較する
MediaEspresso 6.5

- 778MB
- 8分57秒
内蔵エンコーダ
うっすらとだが、パネルの数値も判別可能。そのほかのシーンでもブロックノイズを比較的感じさせない映像となっており、また、階調表現もきれいにまとまっている

- 774MB
- 4分13秒
Quick Sync Video
数値を読み取れるかどうかではソフトウェアエンコーダに分がある。また、フラットな部分ではブロックノイズが生じている。全体的にソフトフォーカスを加えたような印象だ
MediaConverter 7

- 795MB
- 5分40秒
内蔵エンコーダ
シャープネスもほどよく、かなり読み取りやすい。ブロックノイズも抑えられており、階調表現もきれいである。若干ファイルサイズは大きめだが、その分映像はクリアと言える

- 766MB
- 3分14秒
Quick Sync Video
Quick Sync Videoを適用するとインターレースで固定されるため、静止画比較ではハンデのある状況。パネル表示はボヤッとして読み取りづらく、色にじみなども発生している
TMPGEnc Video Mastering Works 5

- 723MB
- 18分30秒
内蔵エンコーダ
TMPGEnc Video Mastering Works 5は人気のx.264エンコーダを採用。メーター表示箇所に限れば、どれよりもはっきりと確認できる優秀な結果だ

- 774MB
- 8分44秒
Quick Sync Video
メーター数値はある程度確認できる範囲。ただし若干のノイズも生じている。ブロックノイズや階調表現に関してはほかのアプリケーション利用時よりもいくぶん抑えられている
LoiLoScope 2 ベータ版

- 775MB
- 10分45秒
内蔵エンコーダ
色にじみなどは少ないものの、文字の読み取りやすさはMediaEspressoと同等、ややソフトフォーカスがかかったような印象だ。階調表現もなめらかでブロックノイズも少ない

- 766MB
- 9分49秒
Quick Sync Video
コントラストが調整されているのか、ほかのエンコーダと比べ全体的にやや暗くなる傾向がある半面、文字に関してはほかのQuick Sync Video適用時よりも認識しやすい
設定を変えると画質はどう変わる?
今回比較した中で、一番画質設定項目が充実しているTMPGEnc Video Mastering Works 5を用い、各種のパラメータを設定することで画質に差が生じるかを検証してみた。先の検証ではCBRの6Mbpsで比較しているが、ここではVBRにおけるソフトウェアエンコードとQuick Sync Videoとの違い、そしてQuick Sync Videoにおけるプロファイルやレベルの違い(ともにCBRの6Mbps)を見ていこう。映像ソースは先の画質比較で用いた動画の別シーン。VBR以外のテストでは、対象となるパラメータ以外は統一してある。もともと画質のよかったTMPGEncだけに比較は難しいが、細かな違いをピックアップしてみた。
VBR (可変bitレート)設定
画質重視のユーザーが用いるVBR。VBRにおいてソフトウェアエンコーダとQuick Sync Videoとの間に違いが出るか、というのがこの検証。VBRの設定では平均bitレートを6Mbps、最大bitレートを10Mbpsに指定している。所要時間を見ると、ソフトウェアエンコードが前ページのCBRと比べ2倍にも増えた一方、Quick Sync Videoはほぼ同タイム。VBRが効いているのか不安になるが、画質には違いが出ている。

- 774MB
- 37分33秒
内蔵エンコーダ
ともにCBRと比べかなり画質が向上したが、若干差が出た部分としてここではハザードスイッチ周辺で比較しよう。ソフトウェアエンコーダではスイッチの滑り止め部分の凹凸がシャープだ

- 783MB
- 8分41秒
Quick Sync Video
Quick Sync Videoでエンコードしたデータでは、凹凸がやや甘くなってしまっている。そのほかにも、細かな線の部分が場所によってつぶれてしまうなど、ややシャープネスが弱い印象だ
プロファイル設定
MPEG4 AVCにはいくつかのプロファイルがあり、TMPGEnc Video Mastering Works 5では、そのうちBaseline、Main、Highが設定できた。ここではすべてQuick Sync Videoを適用した上で、プロファイルを切り換えることで画質に変化が出るのかを検証してみた。プロファイルの違いでは、とくにフレーム間予測や符号化の機能、色空間などの扱いで違いがある。

- 774MB
- 8分44秒
High
かなりきれいな映像でブロックノイズもほとんど見られない。だが、ややマットな画でディテールが甘くなってしまっている印象も受ける

- 774MB
- 8分42秒
Main
あくまで個人の感想で言えば、Highよりも線がくっきりきれいに映っているように感じる。ファイルサイズと所要時間はHighと変わらない

- 774MB
- 8分32秒
Baseline
これでも十分きれいと言えるのだが、Mainと比較すると若干色にじみがあり、線がつぶれてしまっている箇所がある
レベル設定
レベルは解像度やフレームレートの上限に影響する設定項目だ。今回試した1,440×1,080ドット、29.97fpsであればレベル4以上に限定されてしまうが、レベル4、4.1、4.2が設定可能であるのでこの違いを比較検証してみた。なお、ソフトウェアエンコードでは1,920×1,080ドット、120fpsにも対応するレベル5.1なども適用可能だ。

- 774MB
- 8分54秒
Level 4
ここではコーナー縁石部分を切り出して比較に用いるが、結論から先に言えば画質の差はまったくないと言ってよい

- 774MB
- 8分45秒
Level 4.1
1,440×1,080ドット、29.97フレームではレベル4の範囲に収まってしまい、レベル4以上を設定することはオーバースペックと言える

- 774MB
- 8分44秒
Level 4.2
レベル4.2では最大マクロブロックの上限が拡大されているが、この効果を確認できるほどの画質の違いは現われていない