ベンチマークテストで見るプラットフォームの特徴
さて、下のグラフでは、各チップセット別に総合性能と消費電力を計測している。CPUはそれぞれのチップセットで現在利用できる最上位のものを用意しており、またGPU内蔵型CPU/チップセットの場合は内蔵GPUを利用している。チップセットそのものの比較にはならないが、CPU、チップセットも含めたプラットフォームの特徴を理解する上での参考にはなるだろう。
はっきり分かるのは、LGA1366のX58環境が非常に高性能である一方、消費電力もかなり高いこと。とくにアイドル時の電力がLGA1156のP55環境に比べて大幅に高い。この点は、両者のPCI Express 2.0のレーン数とともに、X58を選ぶかP55を選ぶかの大きなポイントと言えるだろう。
興味深いのはAMD系で、ハイエンドのAMD 890FXとローエンドのAMD 870の差がないこと。性能ではむしろ後者が逆転している。両者の違いはPCI Express 2.0のレーン数とマルチGPUへの対応のみなので、シングルビデオカード環境で差がないのは妥当なのだが、ハイエンド製品だからと言って必ずしも性能が高いということにつながらない好例となっている。ただ、ハイエンドとローエンドのマザーでは電源部の設計や冷却性能などに大きな違いがあるため、信頼性まで含めて考えると、ハイエンドCPUとローエンドマザーなどという極端にアンバランスな組み合わせは避けたほうが無難ということを覚えておきたい。
気になるのは差が付かないと思われたIntel H57とH55のスコアで、これについてはチップセットではなくマザーのチューニングの違いが影響してしまったというぐらいしか考えられる理由がない。それらを除けば、Intel系ではそれぞれのプラットフォームで、グレード順にはっきりした性能差が付いており、分かりやすい序列だ。この傾向はシステムの消費電力についても当てはまっている。
システムの総合性能を比較
PCMark Vantage
Futuremarkの定番ベンチマークテスト。Windows 7/Vista環境でのHD動画の視聴やエンコード、ビジネス文書の作成など、コンピューティング全般をシミュレートする内容でシステムの総合的な性能の目安になる
あくまで通常用途の域を脱せない内蔵GPUの性能
最後に低価格システム向けの内蔵GPUの性能を見てみよう。前述したようにIntelのLGA1156環境ではチップセットではなくCPU側にGPUコアを統合しており、チップセット側には内蔵GPUの映像出力機能のみを持たせているのに対し、それ以外の環境ではチップセットにGPUを統合している点が異なる。もっとも、LGA1156でもCPU内蔵GPUコアを使うには映像出力機能を持ったH57/H55チップセットを利用する必要があるので結局チップセットが関係することは変わらない。各CPUおよびチップセットが内蔵するGPUのスペックは下の表にまとめているが、それぞれ構造がまったく異なるのでスペックの比較はあまり意味がない。
テストには3DMark06を利用したが、意外にも性能がもっともよいのはAtom D525+ION2の組み合わせだった。PCI Express x1接続のION2がチップセット内蔵GPUと言えるのか微妙だが、CPUともどもマザーボードにオンボード搭載された状態で入手するしか手段がない点では内蔵GPU扱いとしてもよいだろう。Intel系よりAMD系のほうがかなりスコアがよいが、AMD系はCPUにPhenom II X6 1090T Black Editionを使っていることが大きい。利用できるCPUが異なる以上、単純な比較はできないのでそれを踏まえて見ていただきたい。なお、内蔵GPUの動作クロックに140MHzの差があるAMD 890GXと880Gの差は約13%となっている。
いずれにしても3DMark06で1,000~2,000というスコアでは多くの3Dゲームはまともにプレイできず、ドングリの背比べと言ってもよいだろう。HD動画再生支援もないIntel G41やAtom D510は問題があるが、それ以外の環境での体感差はほとんどない。ちなみに、Core i5-655K+H57の組み合わせにローエンドビデオカード(NVIDIA GeForce GT 430)を使った環境のスコアは1,280×1,024ドットで7,669、1,920×1,200ドットで5,667である。内蔵GPUの性能はあくまでOSの基本的な操作をするのに問題ないというレベルでしかなく、3D系のゲームをするのであれば、ビデオカードを利用する必要がある。
内蔵GPUのグラフィックス性能を比較
3DMark06
Futuremarkの3Dベンチマークテスト。現行の3DMark Vantageの1世代前、DirectX 9.0c世代のテストで、最新ゲームの性能評価には適さない。息抜きに遊ぶようなオンラインゲームなどの快適度の目安にはなるだろう