必要な機能を把握し、低価格マザーボードを賢く選ぼう
付加価値は最小限必要な機能を最初に整理
ローエンド製品と言うと性能が低いというイメージがあるが、必ずしもそうではない。1万円以下の低価格な製品でも、チップセットが同じであれば基本的なパフォーマンスは変わらない。4コアや6コアの高性能なCPUを搭載できるものも多く、PCI Express 2.0x16スロットを使えば高性能なビデオカードも搭載できる。
差が出るのはチップセット以外の部分。具体的にはオーバークロック時の安定性にかかわる電源供給回路のフェーズ数、インターフェースの種類や数、マルチGPU構成への対応、付属品の充実度といった付加価値の部分だ。逆に言えばオーバークロックやマルチGPU構成を行なわないのであればローエンドモデルでも十分と言える。最近はUSB 3.0やSerial ATA 3.0に対応する製品も増えており、決して安いだけというわけではない。
こういった機能の有無による方向性の違いで、ローエンドマザーボードは下の3タイプに分かれていると言ってよい。ミドルレンジ以上でも方向性の違いは出てくるが、価格が高くなるほど全部載せの傾向が高まるため、ローエンドが一番差が出るレンジだろう。
これらを前提に置きつつ、自分に必要なものと必要ないものを切り分けていくのがローエンドマザー選びのポイントだ。作りたいPCの具体的なイメージをしっかりと整理し、製品選びに反映したい。
基本性能重視モデル
ATXタイプで拡張スロットの数、種類が豊富
ビデオカードなどを搭載するので、高機能なチップセットはいらないというパターンなら、Intel P55やAMD 770+SB850搭載のモデルを選ぶとよい。シンプルだが拡張性や品質に優れる
機能重視モデル
マザーだけで完結!多様なインターフェースでグラフィックスまわりも充実
オンボードグラフィックスは高機能なものが欲しい、あるいはHDMIやUSB 3.0が必要という人向きのモデル。基本的には拡張カードを挿さずにトータルコストを削減したい場合に選ぶ
予算重視モデル
安価な旧世代CPUに対応し、PCIスロットが多めで古いパーツを使い回せる
新PCへの組み替え後に余ってしまったパーツを活用してサブPCを作りたいなら、旧世代チップセットを搭載する非常に安価な製品がお勧め。機能も拡張性も最低限だが、とにかく安い
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-875K(2.93GHz)、メモリ:Kingston Technology KHX1600C9D3K4/16GX(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4※2枚のみ使用)、ビデオカード:ASUSTeK EAH6850 DirectCU/2DIS/1GD5(Radoen HD 6850)、HDD:Seagate Barracuda XT ST32000641AS(Serial ATA 3.0、7,200rpm、2TB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit 版
まずはインターフェースの種類と数をチェック
ローエンドモデルで一番違いが出やすいのがインターフェースの種類や数だ。これはどのカテゴリーのマザーボードでも同じことだが、ローエンドでは上位モデルに比べて種類や数が絞られているため、事前のチェックはより重要になる。静かで低消費電力のHTPCを作りたいなら、高性能なオンボードグラフィックス機能やHDMI端子などは必須だ。
6Gbps対応機器を使う予定があるならSerial ATA 3.0への対応は優先してチェックしたい。これに関してはAMD SB850が基本機能でサポートしており、AMDプラットフォームが有利だ。USB 3.0はIntel向けでもAMD向けでも追加チップが必要なので数は少ない。ストレージ目的ならeSATAで代用するという手もある。
HTPC用途ではデジタル出力端子が重要
地デジやBD再生用のPCが作りたいなら、HDCP対応の映像出力(HDMI、DVI)が必要。Dsub 15ピンでは再生できない。AVアンプでサラウンドを楽しみたいなら、デジタル音声出力が必要だ
高速転送に対応するSerial ATA 3.0
AMD SB850は標準で転送速度6GbpsのSerial ATA 3.0に対応しており、6Gbps対応のSSDとの組み合わせで非常に高速な転送を実現する。また、HDDをたくさん積みたいならポート数も重要だ
USB 3.0ポートは仕様にも注意
ローエンド帯でもUSB 3.0ポートを搭載する製品は増加しているが、対応端子は二つまでのものが多い。チップの仕様の違いにより、一つしかUSB3.0で通信できないものもある
メーカーによって大きく差が出るユーティリティツール
マザー自体の性能や機能性は、採用しているチップセットやオンボード機能が同じならどこのメーカーでもあまり変わらない。ただ、大手メーカーの製品は、ローエンド帯でもBIOSアップデートやオーバークロック(OC)、メンテナンスなどをサポートするユーティリティツールが充実しており、使い勝手に差が現われる。
この手のツールでは一般的なOC /モニタリングツールに加え、ASUSTeKではBIOSアップデートをBIOS画面からUSBメモリで手軽に行なえる「EZ Flash 2」を搭載。GIGABYTEではほかのPCからWebブラウザ経由でOC関連の設定が行なえる「Cloud OC」といった変わり種も備えている。ハードウェアスペックだけではなく、こうした便利なユーティリティ類にも注目したい。
OC関連のツールも大手メーカー製は充実
BIOSからだけではなく、Windows上から非常に細かいところまで設定できたり、ほかのPCからでも設定できたりするなど、大手メーカー製はとくに充実している
付属ユーティリティが多いのは大手
中小メーカーの製品でもユーテリィティは付属しているが、ASUSTeKやGIGABYTE、MSIなど大手メーカーのものは充実度が高い。大手メーカー製品を選ぶ一つの理由になるだろう