ハイエンドともミドルレンジとも違う“全部入り”
新たな目的に対応可能なアッパーミドル製品
ミドルレンジクラスの高性能化、高機能化も著しいが、アッパーミドルクラスはミドルレンジの機能をカバーしつつハイエンドの機能も取り込んでいる。そもそもハイエンドゲーマーやオーバークロッカーのように、PCの使用目的が明確な場合は最初からハイエンドセグメントを選べばよい。また、組み立て時のスペックで使い続けるならば、ミドルレンジやローエンドでよいだろう。しかし、一つ先を見越した信頼性や拡張性を備えるのがアッパーミドルクラスの製品の特徴だ。まずは堅実な1台を組み、使い続ける中で芽生えた新しい使用目的を叶えていこうと考えるなら、発展性を備えたアッパーミドルクラスがベストだ。
アッパーミドルの具体的な機能的特徴を見ていくと、まずは高品質なコンポーネントや基板設計が注目される。ほとんどの製品が低ESRの固体コンデンサをボード全域にわたって採用しており、なかにはより優れたタンタルコンデンサを採用する製品もある。そしてよい部材というだけでなく、ミドルレンジ製品よりも充実したVRMのフェーズ構成なども特徴だ。多フェーズ構成はオーバークロック上限を引き上げる必須条件でもある。
長期運用も安心の高品質な実装部品
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今や固体コンデンサは当たり前!
液漏れなしの固体コンデンサ
固体コンデンサは液漏れの心配がないほか、長寿命で高温下での信頼性などが向上する。現在ではすべてのコンデンサが固体タイプという製品も増えている
リーク電流が少ないため発熱が低減
高性能なタンタルコンデンサ
すでに高信頼性で固体コンデンサの次を狙った競争も始まっている。その有力候補がタンタルコンデンサ。MSIが積極的にCPUまわりで採用している
電流の損失を減らすことができ、発熱も減る
フェライトチョークが主流に
CPUに供給する電流を安定させるのがチョークコイルの役割。ひと昔前はコイルむき出しのチョークもあったが現在はフェライトチョークが主流だ
多フェーズは当たり前、CPU部以外も充実
OC時に限らず安定性向上に効果的
CPUとアンコア部をチェック
OCでは十分な電力を安定して供給するためにもフェーズ数が重要。アッパーミドルでもCPUに16フェーズ、アンコア部に2フェーズ用意する製品がある
North Bridgeにも多フェーズ化の波
CPUと同様、North Bridgeへの電力でも安定化と十分な電流供給のために多フェーズ構成を取る製品がある
OCメモリにも安定した電力供給が可能
CPU同様OCされるメモリ用VRMも多フェーズ化
メモリまわりも同様だ。CPUフェーズ数だけが注目されがちだが、North Bridgeやメモリなどトータルでチェックしたい
いざというときに役立つギミックの数々
高品質な基板やリッチな電源回路を備えたアッパーミドルクラスの製品は、そのままでもミドルレンジクラスよりも高クロック動作が期待できるが、さらにオーバークロックをサポートする各種の機能も備えたものも多い。とくにアッパーミドル以上の製品で特徴的なのが、OC時の作業性を上げる電源・リセット・CMOSクリアなどのオンボードスイッチ。ASUSTeKのMemOK!やMSIのイージーOCスイッチなど、メーカー独自機能をハードウェアスイッチとして実装する動きもある。
また、オーバークロック失敗の原因がCPUにあるのかメモリにあるのか、場所を特定する際に役立つPOSTコード表示LEDなどは主にアッパーミドル以上の製品でサポートされる特徴的機能である。そのほか、リモコンや別のPCからオーバークロックを制御する機能を採用するものがある。
最後はマルチGPU機能。とくにX58チップセット製品では、アッパーミドルクラス辺りでCrossFireXだけでなくSLIとの両サポートに切り換わる。また、アッパーミドルはほとんどが8レーン×2以上、ビデオカード2枚以上のマルチGPUをサポートし、3-way対応の製品も多い。2枚挿しならいつかやってみる可能性があるかも、という人も安心なのが、アッパーミドルの絶妙な"バランス"だ。
オンボード上にスイッチを搭載
電源、リセット、CMOSクリア
写真はEVGA製品に搭載されたスイッチ。アッパーミドル製品では電源、リセット、CMOSクリアが一般的だ
メーカー独自のスイッチも
MSIは電源などのスイッチに加え、「イージーOCスイッチ」も装備。BIOSを介さずにベースクロックを変更できる
押し間違い防止カバー
CMOSクリアが簡単だと間違えて設定が消えてしまうこともあるため、GIGABYTE製品ではカバー付きスイッチを採用する
不具合箇所を特定しやすいPOST表示LED
POSTコードはPCが今何をしているのかを示すもの
一般的にPOSTコードはPCのブート時のプロセスを16進数2桁の組み合わせで示す。BIOSの最後でFFと表示されれば正常起動。FFまでたどりつかず止まってしまった場合には不具合が生じていることになり、コード番号を参照することで原因を特定することができる
ブート後は温度計として使える製品もある
ブート後は役割を終えるPOSTコード表示用LEDだが、EVGA製品ではCPU温度の表示に活用
独自ユーティリティで差を付けろ!
メーカーの独自ユーティリティについても、アッパーミドルとそれ以下では違う場合がある。まずはユーティリティ自体の対応が異なる例としてIntelの純正OCツール「Intel Desktop Control Center」は、アッパーミドルクラスのDP55KGには対応するものの、同じP55搭載でも下位グレードの製品には対応しない。
次はハードウェアの違いによってグレードが異なる例。たとえばASUSTeKのTurbo V EVOとTurbo VはどちらもOS上からOCできる機能だ。しかし、前者が専用チップによってハードウェア的なBIOS設定同様のOCを実現するのに対し、後者はあくまでソフトウェア制御である。こうしたハードウェア的な違いは後から変更ができない分、購入にあたって考慮しておきたいポイントだ。
また、アッパーミドルクラスの製品は基板上のセンサーの数が下位製品と比較して多く、異常の検出ではこの情報量が役立つことも多い。
センサー数の違いがツールにも影響
PC ProbeはASUSTeKのステータス監視ユーティリティ。搭載センサーの増える上位製品では、下位グレードの製品と比べその分表示項目が多い