2~4万円の低価格モデルが高画質パネルで性能アップ
21型以上では、フルHD(1,920×1,080ドット)の解像度が当たり前になった液晶ディスプレイ。2010年は同じフルHDという土俵でも、高画質で定評のあるIPSパネルを採用しながら低価格を実現したり、動画の表示画質を向上する機能を組み込んだりと、製品のバリエーションが広がっている。また、バックライトにLEDの採用が本格化したことで、本体の薄型化にも拍車がかかった。
技術的には立体視も一つのトピックで、NVIDIA「3D Vision」対応ディスプレイが海外製品を中心に増えた。現状、対応ゲームは多く、映画やテレビ番組は少ないが、今後のコンテンツしだいでは伸びる可能性もある。
低価格VA/IPS採用の波が本格化
ほんの数年前まで、1万円台の液晶と言えば視野角の狭いTNパネルが当たり前で、斜めから画面を見ると画面が明るくなって文字が読めなかったり、色が変わって見えたりしていた。視野角の広さや色の再現性を求めるとVA/IPSパネル採用機が候補になるが、高価で手が出ない……。2010年はそんな常識に変化が訪れて、VA/IPSパネル採用機の低価格化に拍車がかかった。まずは5月に三菱電機から23型でIPSパネルを搭載した「Diamondcrysta WIDERDT232WX-S」が4万円台前半で登場。10月には、BenQから24型でVAパネルの「EW2420」が3万円台半ばで、さらに11月には、LG Electronicsから21.5型でIPSパネルながら最安が2万円を切る「FLATRON IPS226V-PN」が発売された。
こうしたトレンドを知っておけば、低価格モデルでも高品質・高機能な製品を選んで、納得のゆく買い物ができるはずだ。

高品位の代名詞だったIPSパネル搭載の液晶ディスプレイが、安いものでは1~3万円というレンジに。安価になったので、複数台手に入れてマルチディスプレイ環境を構築することも容易になった
高画質化アプローチが多様化
ミドルレンジ以上では、付加価値に力を入れている。シビアな判定が求められるFPSや音楽のゲームでは、通常の倍のフレームレートで表示して動きをなめらかにする「倍速(120Hz)駆動」の液晶が有利。解像度の低い画像を高画質化する「超解像」や、暗いシーンでの黒浮きを防ぐ「動的コントラスト制御」など、動画関連の技術が目立つ。

三菱電機は動画の高画質化に力を入れているメーカーの一つ。実売3万円台の「RDT232WX-S」でも超解像対応で、中間階調の応答速度は3.8msとかなり速い
LEDバックライトの勢力拡大
従来の冷陰極管に変わってLEDをバックライトに採用するモデルが増えた。点灯・消灯が高速なLEDの特性を活かした例としては、三菱電機の高級機「VISEO MDT231WG」が、1フレームの応答完了に合わせてバックライトを点灯して残像感を低減する「LEDバックライトブリンキング」機能を備えている。

LEDバックライト採用機の特徴が分かりやすく現われるのは、本体の薄さ。輝度を細かく調節できたり、従来よりも低い消費電力で使えたりといった点もメリットに挙げられる
出荷状態のカラーバランスをチェックする
次ページよりオススメ8製品の性能をチェックしていく。検証の一環として「i1Basic」によるキャリブレーションも行なった。工場出荷時と補正後のガンマカーブを比較することで、各社の初期状態における味付けを知ることができる。
- X-Rite
- i1 Basic
- 実売価格:170,000円前後
- 問い合わせ先:0120-980-258(エックスライト)
URL:http://www.xrite.com/

画面に直接測定器を取り付けて、コントラスト、輝度、色温度を調節。ガンマカーブの補正と色域測定が行なえる
価格破壊、ここに極まれり!
最安で2万円を切るIPSパネル機
2010年後半に話題を呼んだ低価格IPSパネル採用機。本機は同社が従来採用していた「H-IPS」より開口率を18%高めた「UH-IPS」(姉妹機IPS236Vで採用)から、さらに11.6%開口率を高めた「S-IPS II」パネルを搭載。また、LEDバックライトを搭載し、動的コントラスト比500万:1を実現している。パネルにこだわりながらも自社グループで部材を調達することで低価格を実現した。中間階調の応答速度が14msと遅めだが、ビジネスアプリやWebサービスを使う分には問題ない。
- 21.5型ワイド
- IPSパネル
- LEDバックライト
- 画質
- ■■■■□
- 入力端子
- ■■■□□
- コストパフォーマンス
- ■■■■■

- LG Electronics
- FLATRON IPS226V-PN
- 実売価格:20,000円前後

2万円前後とは思えない自然な色合いで表示してくれる。中心から上下左右と目線をずらしてみても、階調の不自然さがなく、色の反転もほとんど起らない

スタンド調節は前後の角度のみ。軽量かつVESAマウントに対応しているので、ディスプレイアームに取り付けて使う手もある

左のガンマカーブではブルーがややずれるが、ほぼ直線に沿っている。右の色域を表わすグラフでは三角の範囲が広く、色の再現性が高めであることが分かる
Specification 最大表示解像度:1,920×1,080ドット●応答速度:中間色域14ms●輝度:250cd/m2●コントラスト比:1,000:1(DFC5,000,000:1)●インターフェース:HDMI ×1、DVI-D(HDCP)×1、Dsub 15ピン×1●本体サイズ:514.7×230×403mm●重量:3.49kg
静止画も動画もそつなく表示
優等生タイプの27型モデル
入力端子が豊富で、サイズが大きめの27型ワイドなので、1台にPCやBlu-ray Discプレイヤー、ゲーム機などをつないで使いたいという用途にぴったり。TNパネルより視野角の広いVAパネルを採用しているので、たとえば、ごろ寝で映画を楽しむといった場合にも色の変化が起きにくい。文字や静止画はもちろん、中間色域の応答速度が6.5msなので、動画もきれいに表示してくれる。「超解像」技術で、解像度の低いストリーミング映像などのシャープ感を高めることも可能だ。
- 27型ワイド
- VAパネル
- LEDバックライト
- 画質
- ■■■■□
- 入力端子
- ■■■■■
- コストパフォーマンス
- ■■■■□

- 三菱電機
- Diamondcrysta WIDE RDT271WV
- 実売価格:49,000円前後

パネルは「ハーフグレア」で、正面に座ると自分の姿がぼんやり見える感じ。リモコンが付属しており、静止画や動画など、入力ソースに合わせてモードをすぐに切り換えられる

高さの調節は不可。チルト角は上20゚、下5゚に調節できる。HDMI、DVI-D、Dsub 15ピン、D5端子と入力が豊富に揃う

ガンマカーブは素直な直線で、色域もそこそこ広め。キャリブレータで計測する際も、色温度を追い込みやすかった。色以外にも画質の設定項目が多いため、こだわる人にはうれしい
Specification 最大表示解像度:1,920×1,080ドット●応答速度:中間色域6.5ms●輝度:300cd/m2●コントラスト比:3,000:1(CRO25,000:1)●インターフェース:HDMI×2、DVI-D(HDCP)×1、Dsub 15ピン×1、コンポーネント(D5)×1●本体サイズ:643×230×444mm●重量:約6.3kg
【問い合わせ先】
LG Electronics:0120-813-023(LG Electronics Japan)/ http://jp.lge.com/
三菱電機:03-3424-9298 / http://www.mitsubishielectric.co.jp/