現行プラットフォームの特徴
ロングライフのLGA1366
ポテンシャルが高いAM3
現在、そしてこれからのマザーボードを語るなら、やはり年明け登場予定の新CPU「Sandy Bridge」(開発コードネーム)とそれに対応するLGA1155システムを避けることはできないだろう。事前情報から判断する限り、CPU、チップセット、そしてそれを搭載するマザーボードともに、目新しく魅力の大きい製品になると思われる。
もっとも、LGA1155が現行のすべてを置き換えるかと言えばそうではないし、新しいもののよさもあれば、ノウハウが蓄積され完成度が高まっている技術的に枯れた製品のよさもある。ここでは現行プラットフォームについておさらいをしておこう。
IntelのLGA1366は、消電力性よりも性能優先でデータバス帯域を重視した仕様が特徴だ。CPUにトリプルチャンネルアクセス対応のメモリコントローラを内蔵しており、メモリを多く搭載でき、メモリアクセス性能も高い。Intel X58チップセットはPCI Express 2.0を36レーンサポートしており、フルレーンによるSLIやCrossFireXのマルチGPUシステムを構成できる。ウルトラハイエンドとしての役割は今後もにない続ける見込みで、2008年の登場以来続くロングライフのプラットフォームとなっている。マザーボードの仕様も熟成を重ねて洗練されてきている。
次に、現行のメインストリームをになうLGA1156は、グラフィックスインターフェース(16レーンのPCI Express 2.0)を内蔵したCPUを中核に据え、1チップのチップセットを組み合わせたスマートな構造で電力効率に優れる。低価格システム向けのGPUコアもCPUに統合されており、H57/H55チップセット搭載マザーボードにはディスプレイ出力機能が備わっている。後継としてLGA1155が控えるが、基本的にこの特徴は引き継がれ、上位にあるLGA1366との役割分担もそのまま継承されると予想されている。
AMDのSocket AM3については、ハイエンドからローエンドまで共通のソケット仕様でカバーすることが特徴。ハイエンドの890FXチップセットは42本と潤沢なPCI Express 2.0レーンをサポートする上、South BridgeのSB850がSerial ATA 3.0に標準対応するなど、Intel X58以上のポテンシャルを誇る。ただ、マルチGPU機能についてはライセンスの関係でNVIDIA SLIをサポートできる製品が現状なく、せっかくの広帯域を活かせる機会が半減してしまっているのが残念なところ。CPUの力関係もIntelのハイエンド製品にはおよばないことから、あまり追加チップなどを搭載せず、チップセットの多機能さをコストパフォーマンス面に活かしたマザーボードが多い。

USB 3.0とSerial ATA 3.0はマザーボードの標準装備に
USB 3.0とSerial ATA 3.0インターフェースはマザーボードの標準装備として定着した。今後はポート数やPCケースの前面ポートに使用するためのピンヘッダの有無、実効帯域の差などで差別化されていくだろう
現行マザーでは3TB HDDから起動できない?
Sandy Bridge世代では、BIOSのUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)化がトレンドの一つになりそうだ。UEFI導入のメリットの一つとして挙げられるのが3TB HDDからの起動に対応すること。少し細かく言えば、UEFI対応のWindows(64bit版Windows 7など)を利用する場合において、2.2TB(OS上で2TB)以上のHDDを1パーティションとして確保できるGPTパーティションからの起動をサポートしていることだ。
では現行のマザーボードでは3TB HDDを起動ドライブとして使うことができないのだろうか? 実は現行マザーボードでもIntelの製品はUEFIに対応しており、BIOSでUEFIブート機能を有効にすることで対応できる。また、ASUSTeKではUEFI非対応でも2.2TBを超えるHDDからの起動ができる「Disk Unlocker」というユーティリティを配布しており、GPTやUEFIをサポートしない環境でも、一部対応マザーボードで3TB HDDのほぼ全容量を認識でき、起動ドライブとしても使うことが可能(ただし、3TB全部を1パーティションにはできない)。UEFIを含め、3TB対応はマザーボード選びの新たなポイントとなりそうだ。

GPTパーティションのドライブに対する各OSの対応状況
※UEFIに対応したマザーボードに限る
※2GPT非対応だがMBRでパーティションを作ることで2TBまで認識可能

Disk UnlockerでGPT非サポート
OSでも3TB HDDの全容量が使える
GPTをサポートしないWindows XPでも2.2TB以上のHDDの全容量が使える「Disk Unlocker」。約2TBまではMBR、それ以後はバーチャルMBRのパーティションで確保される
Sandy Bridge登場で何が変わる?
開発コードネーム「Sandy Bridge」の名で開発が進められているIntelの新世代CPUの発表が間近に迫っている。このSandy Bridgeには新しいマイクロアーキテクチャが採用され、命令処理の効率化が図られているほか、3次キャッシュ/メモリコントローラまわりの構造に大幅な改良が施されており、これまで以上に電力効率が高まると予想される。さらに、従来のClarkdaleでは別々の半導体チップに形成されていたCPUコアとGPUコアを一つの半導体チップ上に集積し、キャッシュもCPUコアとGPUコアで共有するなど、よりスマートな構造となっている。
Sandy Bridge世代のCPUは現行のLGA1156の後継となるプラットフォームとして、新しいIntel 6シリーズのチップセットが用意され、全般的に機能強化が図られている。大型の新製品だけに、各メーカーの独自機能についてもこれまで以上に魅力的な機能が盛り込まれることは必至だ。

Sandy Bridge対応チップセットとしてはIntel P67、H67といった名前が明らかになっている。詳細は不明だが、従来P55やH55では少々不満だったストレージまわりの仕様も強化されると予想される