現行CPUの性能と消費電力をベンチマーク検証
CPUの基本要素は性能と消費電力が両輪。CPU選びにおいてはそれに価格も加わる。ここでは性能と消費電力のベンチマークテストを行ない、電力効率やコストパフォーマンスを考えてみたい。
まずはFuturemarkのPCMark Vantageの結果から見よう。このベンチマークはPCの総合的な基本性能の目安となる。ただ、暗号化処理を高速化するIntelの拡張命令「AES-NI」に対応した内容が含まれており、AES-NI対応CPUが有利になりやすい点は留意しておきたい。
結果を見るとCore iシリーズのスコアが良好だ。とくにCore i7-980X Extreme Edition(以下Core i7-980X XE)が飛び抜けているが、これは前述のAES-NIの効果も大きい。また、旧世代でもCore2 Quad Q9550のスコアは悪くなく、このクラスであればまだ現役で通用することも分かる。AMD CPUの上位クラスは振るわない傾向で、最上位のPhenom II X6 1100T Black Edition(以下BE)でもCore i5-760以下のスコアとなってしまった。しかし、低価格帯ではAMD CPUのほうが高い性能を発揮している。
次は、MAXONのCINEBENCH R11.5によるレンダリングテストの結果を見てみよう。CPUの同時実行可能スレッドをフルに利用する「x CPU」では、コア数と同時実行スレッド数の影響が強く出る。そのため、6コアで12スレッド同時実行可能なCore i7-980X XEが圧倒的。2位は接戦だが、Phenom II X6 1100TBEが4コア8スレッドのCore i7勢を抑え、6コアCPUの面目を保った。とは言え、マルチスレッドに最適化された処理では、Hyper-Threadingの効果も高いことが分かる。もっとも、Core i5-760とCore i5-661の値を見ると分かるが、同じスレッド数を処理できても、物理コアの数には敵わない。また、低価格帯ではAthlon II X4 645のスコアが目立つ。
1スレッドの「1 CPU」では動作クロックの影響が強く、Turbo BoostやTurbo COREの効果がよく出ている。定格の動作クロックにかかわらず、Turbo Boost/Turbo COREの上限クロックが高いモデルのほうがスコアもよい。
3Dゲーム系のテストとしては、DirectX 11に対応したFuturemarkの最新ベンチマークテスト「3DMark 11」を利用した。今回は「Performance」のスコアを掲載したが、数値は見事にバラついた。なかなか傾向を見い出しにくいのが正直なところだが、LGA1366対応CPUの優位はメモリアクセス性能が影響しているように見えるが、Core 2 Quad/Duoのスコアがよいところを見ると、キャッシュ容量なども影響していそうだ。
続いて消費電力を見てみよう。まず高負荷時ではLGA1366対応の2製品、次いでPhenom II X6 1100T BE、Phenom II X4 970 BEの高さが目立つ。TDPが前者が130W、後者が125Wと高く、スペックどおりと言える。また、Core i7-950のほうがCore i7-980X XEより大きいのはプロセスルールの差だろう。それ以外ではPhenom II X2 565 BEが高い数値を出しているが、だいたいTDPの序列を反映していると言えるだろう。アイドル時はLGA1366対応CPUの高さと、LGA1156対応CPUの低さが目立つ。AMD CPUは多少バラつきが見られるものの、基本的にはTDPの低いモデルのほうが実測値も低い傾向にある。
視点を変えて実売価格1,000円あたりのPCMark Vantageのスコアを算出してみよう。実売価格が安いCeleron E3400やAthlon II X2 265が目立つが、Core i3-540、Core i5-760、Phenom II X4 970BEなどもお買い得感が高いと分かる。また、消費電力1W(高負荷時)あたりのPCMarkスコアを見ると、電力効率がはっきり分かる。トップ3はCore i5-661を筆頭にCore i7-875K、Core i7-980X XEの順だ。消費電力は高いが、性能もそれに見合うということだ。
【検証環境】
マザーボード:ASUSTeK P6X58D-E(Intel X58+ICH10R)、MSI P55A-GD65(Intel P55)、ASUSTeK P5Q-EM(Intel G45+ICH10R)、MSI 890FXA-GD70(AMD 890FX+SB850)、メモリ:Corsair Memory CMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×4 ※X58環境では3枚のみ使用、P55/890FX環境では2枚のみ使用)、UMAX Pulsar DCDDR2-4GB-800(PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:AMD Radeon HD 6850リファレンスカード、Sapphire HD6850 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I/SL-DVI-D/HDMI/DP(Radeon HD 6850)、HDD:Seagate Barracuda7200.12 ST3500418AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、500GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版