フルラインナップが揃い、6コアは早くも普及段階へ
ClarkdaleコアのCore i5/i3シリーズが発表され、Core iシリーズのフルラインナップが揃ったのは2010年早々のことだが、もうずいぶん昔のことのように思える。さらに明けて2011年早々にはその後継となる新アーキテクチャのCPUがリリースされようとしているのだから、CPU市場にとって1年というのは実に長いと改めて思い知らされる。
2010年最大のトピックと言えば、CPUの最大コア数が4コアから6コアに増えたことだろう。最初のクアッドコアCore 2 Extremeが登場した2006年秋以来だから、実に4年ぶりのコア増加となる。1コアにつき2スレッドを同時実行するHyper-Threadingを実装しているIntel CPUではまだCore i7-980X Extreme Editionなどウルトラハイエンドのみの展開にとどまっているが、AMDのPhenom II X6は登場当初から廉価モデルを用意するなど普及に積極的で、すでにミドルレンジの価格帯でも展開している。
Intelから倍率ロックフリーのCPUが安価で登場したことも大きなトピックだ。メリットは、オーバークロックがしやすいことにつきる。OCについては当然自己責任が大前提ではあるが、PC自作市場においてOCはすでに遊び要素として定着しており、それをIntelも追認した格好だ。倍率アップによるOCはメモリやチップセットに負担をかけないためOC入門者でも試しやすく、OCの裾野を広げることにも貢献している。
6コアモデルの登場
2010年3月にCore i7-980X Extreme Editionが、4月にはPhenom II X6 1090T BE/1055Tと、Intel、AMDの両社から6コアモデルが相次いで登場。その後も両社とも6コアのラインナップを拡大しており、とくにPhenom II X6は登場当初からリーズナブルな価格設定で展開し、下位モデルはミドルレンジの価格帯で購入できる。同じ6コアでもマルチスレッド性能を引き上げるHyper-Threadingを実装しているIntelとそうでないAMDでは少し事情が異なるものの、4コアが普及まで2年近くかかったことを思えば、6コアの急速な展開は実に興味深い。

Core i7-980X Extreme EditionはHyper-Threadingに対応し、合計12スレッドもの同時実行が可能

6コアの威力は、動画エンコードやCGレンダリングなどのマルチスレッド処理で発揮される
“倍率ロックフリー”で簡単OC
2010年6月にIntelから登場したCore i7-875K、Core i5-655Kは、CPU倍率の上限ロックが解除されている「倍率ロックフリー」モデルだ。リテールパッケージにはCPUクーラーが付属せず、「UNLOCKED」とはっきり明示されている。AMDは以前からBlack Editionモデルで倍率ロックフリーとしているが、Intelでは高価なExtreme Editionモデル以外では初の解禁である。倍率ロックフリーのメリットは、倍率アップによるOCが試せること。メモリなどへ影響を与えないため、OCの上限を伸ばしやすく、またOC入門者でも気軽に試せるメリットがある。

6コアモデルを擁するウルトラハイエンド
- LGA1366
- 12/8スレッド同時処理
- 32/45nm
- TDP 130W
- 性能
- ■■■■■
- 価格
- ■■■□□
- 省電力性
- ■□□□□
- Intel
- LGA1366版Core i7

Intelのコンシューマ向けCPUの最上位ブランド。ラインナップは6コアモデルとクアッドコアモデルで構成されており、前者は最新の32nm製造プロセスルールを採用し、キャッシュ容量も多い。トリプルチャンネルアクセスに対応したメモリ性能はLGA1156版のCore i7より高速で、対応チップセットのIntel X58はPCI Express 2.0を36レーンという広帯域のデータバスを確保。マルチGPUなどのシステムで大きなアドバンテージを持つ。一方、全モデルでTDPが130Wとなっており、消費電力は非常に高い。

トータルバランスに優れる扱いやすいハイエンド
- LGA1156
- 8スレッド同時処理
- 45nm
- TDP 95W
- 性能
- ■■■■■
- 価格
- ■■■□□
- 省電力性
- ■■■□□
- Intel
- LGA1156版Core i7

Core iシリーズでは、ハイエンドをCore i7、ミドルレンジならCore i5、ローエンドはCore i3と単純に分類しているため同じブランドでもソケット仕様や内部構造が大きく異なることがあり、Core i7にもLGA1366とLGA1156とソケットの異なる2系統のモデルが存在する。性能最優先のLGA1366に対し、LGA1156のCore i7はミドルレンジの延長線上にある。CPU自体の性能はLGA1366のクアッドコアモデルに匹敵するが、メモリアクセス性能やシステム全体のデータバス帯域は見劣りする。半面、消費電力が抑えられており扱いやすい。

【問い合わせ先】
Intel:0120-868686(インテル)/ http://www.intel.co.jp/
【検証環境】
マザーボード:MSI P55A-GD65(Intel P55)、メモリ:Corsair Memory CMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×4 ※2枚のみ使用)、ビデオカード:AMD Radeon HD 6850リファレンスカード、HDD:Seagate Barracuda 7200.12 ST3500418AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、500GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版