内蔵GPUの改良点と動画エンジンの性能検証
DirectX 10.1に対応
動画エンジンを大幅強化
Sandy Bridgeでは、GPUコアをCPUコアと同じダイに集積している。この集積によってLLCの共有やメモリアクセスの高速化、消費電力の低減などを実現しているが、GPUコア自体の機能も大幅に強化されている。
第2世代のGPUコアはIntel HD Graphics 3000と2000の2種類が用意されており、高性能なIntel HD Graphics 3000は今のところ倍率ロックフリーの「K」モデルのみに搭載されている。両者の主な違いや第1世代のCore iシリーズ(Clarkdale)が内蔵していたIntel HD Graphicsとの比較は下の表にまとめたが、DirectX 10.1に対応したほか、HDMIのバージョンが1.4となり、3D映像の出力も可能となっている(Intel InTru 3D)。
また、Intel HD Graphics 2000の実行ユニット数は先代のIntel HD Graphicsと比べても少ないが、レジスタファイルの拡張や動作クロックの向上などによって実行ユニット1基の演算能力が大幅に向上しているため、描画性能は向上している。これらの3D描画性能の比較については、こちらで別に取り上げている。
Sandy BridgeのGPUコアにおける最大の強化点は、動画のデコード/エンコードなどメディア処理機能の強化である。GPUコア内部のビデオ処理エンジンである「マルチフォーマットコーデック」の機能を大幅に強化し、MPEG2とH.264のハードウェアエンコードにも対応した。従来は一部処理を実行ユニットで行なっていたMPEG2/VC-1/H.264のデコードもフルにハードウェア処理することで高速化と省電力化を実現している。Intelではこのハードウェアデコード/エンコード機能を「Intel Quick Sync Video」として強くアピール。開発キット「Intel Media SDK」を提供し、すでにQuick Sync Video機能を利用できる対応ソフトも登場してきている。

プログラマブルな実行ユニットとフィルタ処理などを行なう固定機能ハードウェアから構成されるGPUコア。Sandy Bridgeでは各固定機能ハードウェアを強化し、ハードウェア処理の比重を高めている。なお、ディスプレイ出力機能はメモリコントローラに近いシステムエージェントへと分離されている
製品名 | Core i7-2600K/2500K | それ以外のSandy Bridgeモデル | Core i7-600シリーズ |
---|---|---|---|
グラフィックス機能 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 2000 | Intel HD Graphics |
実行ユニット数 | 12 | 6 | 12 |
上限 GPUクロック | 1,350/1,100MHz | 1,350/1,250/1,100MHz | 900/733MHz |
対応 DirectX | 10.1 | 10.1 | 10 |
対応 Shader Model | 4.1 | 4.1 | 4 |
HDMIバージョン | 1.4 | 1.4 | 1.3 |
ハードウェアエンコード | ○ | ○ | × |

MediaEspresso 6.5は携帯電話など用途別プリセットが用意されており、簡単に動画変換できるソフト。エンコード処理の設定画面でハードウェアエンコーダ/デコーダの利用有無が確認できる

ペガシスの定番動画エンコーダの最新版「TMPGEnc Video Mastering Works 5」。出力設定画面で「Intel Media SDK Hardware」を選べば、ハードウェアエンコーダを利用できる
Sandy Bridgeでは内蔵のビデオエンジン「メディアフォーマットコーデック」を大幅に強化。MPEG2/V C-1/H.264のデコードに加えてMPEG2/H.264のエンコードに対応し、トランスコード処理の一連の流れ をすべてハードウェアで行なえるようになっている
ここではそのQuick Sync Videoの性能と省電力効果を検証してみよう。ペガシスのTMPGEnc Video Mastering Works 5ではAVCHDムービー(1,280×720ドット/約1分)を2本連結して512×288ドットのmp4 ファイルに変換する処理を行なった。Core i7-2600KでQuick Sync Video利用時は、ソフトウェア処理を行なうより33%高速。驚くほどの高速化ではないが、これはCore i7-2600Kの性能が高いためで、Core i5-655Kでのソフト処理では2600KのQuick Sync Video処理の2.5倍の時間がかかった。
MediaEspresso 6.5では、同じAVCHDムービーをiPhone用の動画に変換する処理を行なった。Quick Sync Videoを利用すると2本同時に変換しても驚くほどサクサク終わる。Core i7-2600Kのソフトウェア処理に比べてQuick Sync Video処理では約2.42倍も高速だった。第1世代のCore i5-655Kではハードウェアデコーダのみ有効にできるが、第2世代Core iシリーズのQuick Sync Videoに比べると3倍以上も時間がかかった。
MediaEspresso 6.5ではハードウェアエンコーダ/デコーダの利用の有無が選べるので、第2世代のCore i5-2400と第1世代のCore i5-655Kを使い、それぞれ設定を変えて行なってみた。当然ながら両方有効にしたほうが高速だが、デコーダのみでも有効にできればかなり高速化しているのが分かる。消費電力のテストは、デコード/エンコードをハードウェア処理することで消費電力の低減につながっているという主張の確認だ。第2世代はアイドル時からして10W以上も第1世代よりも省電力なのだが、エンコードのハードウェア処理による省電力効果はハッキリと表われている。




まとめ
省電力なのに爆速!
強烈なインパクトのハードウェアエンコーダ
Quick Sync Videoのハードウェアエンコード機能は非常に強力で、動画エンコードを行なっているとは思えないほどサクサクだ。ハードウェア処理だけにエンコードの設定は限定されるとはいえ、サイズやbitレートの設定はある程度柔軟性があり、十分実用的だ。また、Core i7-2600Kと2600ではまったく同じ結果だったように、Intel HD Graphics 3000と同2000の間に動画エンジンの処理性能の差はないことが確認できた。また、Core i5-2400もほとんど同等と言ってよい性能であり、下位グレードのCPUほど恩恵は大きい。これだけのハイパフォーマンスかつ省電力、このインパクトは強烈だ。ただし、GPUコアの機能だけにIntel P67搭載マザーボードでは利用できない点は惜しいところだ。
【検証環境】
[LGA1155環境]
マザーボード:ASUSTeK P8H67-M EVO(Intel H67)
[LGA1156環境]
マザーボード:ASUSTeK P7H55D-M EVO(Intel H55)
[共通環境]
メモリ:センチュリーマイクロ CK2GX2-D3U1333(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)、SSD:Micron Technology Crucial RealSSD C300 CTFDDAC256MAG-1G1(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、電源:Corsair Memory CMPSU-850HXJP(850W)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版