高機能でリーズナブルなP55マザーの最終形態
- LGA1156
- Intel P55
- ATX
- MSI
- P55A-GD65
- 実売価格:18,000円前後
P55チップセットが登場してから1年が過ぎた。すでに次の世代の製品へ興味が移っているユーザーもいると思うが、製品サイクルの終盤を迎えたこういう時期こそ、技術的にも機能的にも成熟し、完成度が高く、末永く使える製品を手に入れるチャンスでもある。P55A-GD65は、そんな成熟したP55マザーの典型と言える存在だ。Intel 5シリーズのマザーはチップセットが持たないUSB 3.0とSerial ATA 3.0(6Gbps)の機能をどう実装するかが注目ポイントの一つだが、本製品はそれぞれのコントローラチップにブリッジチップを接続し、P55チップセットの帯域不足を補っている。さらに、CPU用電源回路へのDrMOSの採用、NVIDIA SLIとAMD CrossFireXをサポートするマルチGPU機能、OC向けのオンボードスイッチ類も装備するなど、リーズナブルな価格ながら、ユーザーニーズの高い機能を漏れなく備えている。
【1】バックパネル
ミドルレンジクラスの製品として過不足のない内容。青色コネクタを目印とするUSB 3.0ポートは2基ある。6基のUSB 2.0ポートのうち1基はeSATAとのコンボポートだ
【2】定番のUSB 3.0コントローラ
ルネサスのUSB 3.0コントローラ「μD720200F1」をオンボード搭載している。USB 2.0対応機器との互換性を保ちつつ、最大5Gbpsの転送速度に対応している
【3】VRMにDrMOSを採用
電源部にはルネサスのDrMOS「206524」を採用している。2組のPower MOSFETとドライバICをワンチップ化しているため電力の変換効率が高く、低消費電力動作に貢献している
【4】ブリッジチップを搭載
PCI Expressブリッジとして、PLXのPEX8608を搭載。1レーンで5GT/s転送が可能なUSB 3.0&Serial ATA 3.0コントローラの性能を存分に発揮することができる
【5】Serial ATA 3.0にも対応
MarvellのSerial ATA 3.0コントローラ「88SE9128」を搭載。最大6Gbpsの転送速度に対応するが、コントローラのインターフェースはPCI Express 2.0 x1(5GT/s)だ
ココが最強!
・USB 3.0とSerial ATA 3.0に両対応
・電力効率に優れたDrMOSの採用
・NVIDIA SLIにも対応する高い拡張性
Specification
対応CPU:Core i7、Core i5、Core i3、Pentium●メモリスロット:PC3-17000 DDR3 SDRAM×4(最大16GB)●グラフィックス機能:-●ディスプレイ:-●拡張スロット:PCI Express 2.0 x16×2(x16/-またはx8/x8)、PCI Express 2.0 x1(2.5GT/s)×2、PCI×2●主なインターフェース:Serial ATA 3.0×2、Serial ATA 2.5×7、eSATA(Serial ATA 2.5)/USB 2.0コンボ×1、USB 3.0×2、USB 2.0×5●LAN:1000BASE-T×1
【問い合わせ先】
MSI:web@msi-computer.co.jp(エムエスアイコンピュータージャパン)/ http://www.msi-computer.co.jp/
最新ドライバを自動チェック&自動的にダウンロード
最近のマザーボードは付属ユーティリティの進化が著しく、BIOSバージョンの自動検出/更新といった作業が半自動で行なえるのは当たり前だ。MSIの「LiveUpdate 4」では、BIOSだけでなく、LANコントローラなどのオンボードデバイスのドライバまでもインターネット経由でMSIのサーバーから自動検出し、簡単な操作でアップデートすることができる。また、MSIのWebサイトには、Live Update 4 のクライアントソフトをインストールしなくともWebブラウザからアクセスするだけでアクセス元のPCからマザーボードのBIOSやドライバを自動検出する「Live Update Online」というサイトも用意されている。そのときの状況に応じて使い分けられるので便利だ。
「Live Update 4」ではマザーボードのBIOSだけでなく、チップセットやオンボードデバイスのドライバのバージョンチェックやダウンロードを自動で行なえる
ブリッジチップでUSB/SATA 3.0の帯域を同時確保
USB 3.0やSerial ATA 3.0のコントローラはPCI Express 2.0(5GT/s)接続に対応しているが、P55のPCI Express 2.0は2.5GT/sでしか転送できないため、普通に接続するとボトルネックになり、性能が出し切れない。本製品ではP55と各コントローラの間にブリッジチップを実装することで5GT/s転送を実現している。CPU側(ビデオカード用)のPCI Express 2.0 x16を2系統のx8に分割して使うという方法もあるが、この場合は5GT/s接続できるのはUSB 3.0かSerial ATA 3.0の片方のみで、ビデオカードの帯域も半減する。USB 3.0も5GT/s転送したい場合やマルチGPUを利用する場合は本製品のようなブリッジチップ搭載製品が望ましい。
5GT/s接続と2.5GT/s接続による影響は接続するデバイスの速度によって異なる。Crucial RealSSD C300など6Gbps対応の高速SSDでは、すでに2.5GT/s(1レーンの実効データ転送速度250MB/s)の限界を超える速度を持っているため、5GT/s接続の効果は非常に大きい
DrMOSとGreen Powerの省電力効果
MSIが積極的に採用しているDrMOSは、2組のPower MOSFETとドライバICを1パッケージに集積することで電源部の実装面積の縮小および高変換効率を実現しており、消費電力が低いことで知られている。本製品ではCPUコア部8フェーズ、アンコア部2フェーズの回路構成を採用しており、負荷に応じた自動フェーズ数切り換え(APS:Active Phase Switching)によってさらに消費電力を削減する省電力機能「Green Power」にも対応している。ASUSTeKの同クラス製品と消費電力の比較を行なった結果は下のグラフのとおりで、APSの効果は微妙ながらもDrMOSを含めてシステム自体が省電力設計であることが分かる。
総合ユーティリティのControl Center。Green PowerのON/OFF切り換えのほか、モニタリング、OC機能も備える
ライター鈴木雅暢の評価:
ワンクラス上の機能を備えた実力派
- USB 3.0&SATA 3.0最適化度:★★★★☆
- 省電力性能:★★★★☆
- コストパフォーマンス:★★★★☆
定番のP55マザーということで印象は地味だが、なかなかの実力派。PCI Expressブリッジチップの実装、SLIへの対応、8フェーズの電源回路搭載と、効果的かつコストがかかるため普及価格帯では省略されやすい部分をしっかり押さえている。価格もこなれており、現状の実売価格は実に買い得感が高い。
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-875K(2.93GHz)、マザーボード:ASUSTeK P7P55D-E(Intel P55)、メモリ:Corsair MemoryCMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM、2GB×4 ※2枚のみ使用)、ビデオカード:EVGA 01G-P3-1371-KR(NVIDIA GeForce GTX 460)、システムSSD:HANA Micron Forte plus HMSM064G-10(Serial ATA 2.5、MLC、64GB)、検証SSD:Micron Technology Crucial RealSSD C300 CTFDDAC256MAG-1G1(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版