LGA1156プラットフォームからは、登場以来高い人気を誇る倍率ロックフリーの「K」モデル2製品を取り上げる。
LGA1156対応CPUは、性能と消費電力のバランスに優れている点が魅力。そして、倍率ロックフリーモデルの魅力は、気軽にオーバークロック(OC)が試せることにある。ベースクロックを上げる通常のOCでは連動して上昇するメモリクロックなどにも気を使う必要があるが、動作クロックの倍率だけを上げられる倍率ロックフリーモデルならば、そういう心配は不要だ。故障などのリスクもほかのパーツにおよびにくい。
Core i7-875Kは、人気の高いCore i7-870の倍率ロックフリー版。デュアルコアCPUほど大幅なクロックの伸びは期待できない。もともとコストパフォーマンスがよいため、常用前提でOCも楽しみたいというユーザー向きと言える。
一方、Core i5-655Kは、最新の32nmプロセスルールを採用したデュアルコアモデル。パフォーマンスはクアッドコアモデルに見劣りするが、動作クロックは比較的上げやすい傾向にあり、OCの楽しみも大きい。また、Intelの倍率ロックフリーモデルとしてはもっとも安く、買いやすい点も魅力だ。
[写真左]
大人気クアッドコアCPUが倍率変更可能に
- LGA1156
- 4コア
- 8スレッド同時実行
- Intel
- Core i7-875K
- 実売価格:31,000円前後
[写真右]
倍率ロックフリーで活きるデュアルコアの機動力
- LGA1156
- 2コア
- 4スレッド同時実行
- Intel
- Core i5-655K
- 実売価格:19,000円前後
品名 | クロック(TB時) | コア/スレッド数 | GPU | TDP |
---|---|---|---|---|
Core i7-875K | 2.93GHz(3.6GHz) | 4/8 | - | 95W |
Core i5-655K | 3.2GHz(3.46GHz) | 2/4 | ○ | 73W |
倍率ロックフリー
倍率ロックフリーモデルには、パッケージにも「UNLOCKED」の文字が入っている。なお、CPUクーラーが別売りとなっている点には注意
BIOSで動作倍率を変更
Kモデルに対応したマザーボードであれば、BIOSでCPUの動作倍率を簡単に設定可能。Turbo Boost時の上限倍率をコア数ごとに調整できる製品もある
ココが最強!
・気軽にOCが試せる倍率ロックフリー
・定格でのコストパフォーマンスも優秀
・性能と消費電力のバランスも優秀
【問い合わせ先】
Intel:0120-868686(インテル)/ http://www.intel.co.jp/
定格での実力を検証
定格動作での性能と消費電力をチェックしてみる。比較用に掲載しているCore i7-870は、倍率ロックフリー以外の仕様はCore i7-875Kと共通。わずかに差が見られることもあるが、誤差や個体差と見てよい。
PCMark VantageでのCore i7-875KとCore i5-655Kとの差は少ない。もっとも、Core i7-980X XEと同様にAES-NIの影響があるので、Core i5-655Kにとっては、少し有利な条件となっている点は留意してほしい。
CINEBENCH R11.5のレンダリングテスト(x CPU)では大きな差が付いた。8スレッド同時実行のCore i7-875Kの値は、4スレッド同時実行のCore i5-655Kの2倍近くとなった。1CPUではCore i5-655KよりTurbo Boostの上限クロックが高いCore i7-875Kのほうが、よいスコアを出している点は興味深い。
FINAL FANTASY XIV OFFICIAL BENCHMARKは8スレッドまでのマルチスレッドに対応している。Highではビデオカードがボトルネックになる関係で小差だが、Lowでは33%もCore i7-875Kのほうがよい値を出している。
消費電力はアイドル時で9W、高負荷時では71WもCore i5-655Kのほうが低い。コア数だけでなく、32nmプロセスルールも効いていると思われる。
Core i5-655Kは4GHzオーバーで動作
オーバークロックのテストは倍率変更とベースクロックのアップを併用して行なった。Core i7-875Kは3.75GHz(150MHz×25倍)、Core i5-655Kは4.05GHz(150MHz×27倍)までOCさせている。結果、CINEBENCH R11.5のスコアはCore i7-875Kで17%、Core i5-655Kで21%アップ。とはいえ、スコアの伸びは少なめ。マルチスレッドのテストでは、動作クロックよりコアとスレッド数がモノを言うので仕方がないところ。
ライター鈴木雅暢の評価:
Core i5-655Kにより魅力を感じる
- Core i7-875K:★★★☆☆
- Core i5-655K:★★★★☆
- プラットフォームの魅力:★★★★☆
Core i7-875KはTurbo Boostでのクロック上昇幅が大きく、定格の性能も優秀。ただ、倍率ロックフリーでなくともOC自体はできるので、定格動作モデルとの価格差4,000円というのは少々割高に感じてしまう。一方、Core i5-655Kは価格差が2,000円程度と少ないので、こちらのほうが魅力的だ。
【検証環境】
マザーボード:ASUSTeK Maximus III GENE(Intel P55)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-2G88N3P-13H(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:EVGA 01G-P3-1370-KR(NVIDIA GeForce GTX 460)、HDD:日立GST Deskstar P7K500 HDP725025GLA380(Serial ATA 2.5、7,200rpm、250GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版