ここではAMD CPUにフォーカスを当てる。AMD CPUの特徴としては、基本的に同性能のIntel CPUよりも安価でありコストパフォーマンスが高いこと。そして、上位から下位まで共通のSocket AM3プラットフォームを採用しているため、6コアのCPUとオンボードGPUの組み合わせができるなど、選択の自由度が高いことだ。今回は9月の後半に投入された最新モデルから注目度の高い2モデルをピックアップした。
6コアのPhenom II X6ブランドから登場したPhenom II X6 1075Tは、先行して投入された1090T BE(3.2GHz)と1055T(2.8GHz)の間を埋めるモデルだ。動作クロックも中間の3GHzで、電力に余裕がある場合には、Turbo COREにより3コア単位で最大3.5GHzへと動作クロックが上昇する。一方、Phenom II X4 970 BEは、久々に登場したクアッドコアの最上位モデル。従来のPhenom II X4 965 Black Editionから動作クロックが100MHz向上している。倍率ロックフリーのBlack Editionモデルなので、OCがしやすいのも特徴。3GHzの6コアと3.5GHzの4コア。その力関係が大いに気になるところだ。
[写真左]
人気の6コアモデルに加わった新たな選択肢
- Socket AM3
- 6コア
- 6スレッド同時実行
- AMD
- Phenom II X6 1075T
- 実売価格:22,500円前後
[写真右]
倍率ロックフリーの最新クアッドコア
- Socket AM3
- 4コア
- 4スレッド同時実行
- AMD
- Phenom II X4 970 Black Edition
- 実売価格:17,000円前後
品名 | クロック(TB時) | コア/スレッド数 | GPU | TDP |
---|---|---|---|---|
Phenom II X6 1075T | 3GHz(3.5GHz) | 6/6 | - | 125W |
Phenom II X4 970 Black Edition |
3.5GHz(―) | 4/4 | - | 125W |
Socket AM3
Socket AM2とほぼ同じ形状だが、Socket AM2対応CPUは物理的に挿し込めないようになっている。リテンションキットは共通しているので、CPUクーラーは流用可能
取り扱いには注意
AMDのCPUパッケージでは、ソケット側にピンがあるIntelのLGAと違い、CPUの裏側にピンがある。ピンは細く折れやすいので、取り扱いには注意すること
ココが最強!
・コストパフォーマンスが高い
・マザーボード選択の自由度が高い
・Black Editionは倍率ロックフリー
【問い合わせ先】
AMD:0053-165-0441(日本AMD)/ http://www.amd.co.jp/
性能と消費電力を比較する
6コアの3GHzと4コアの3.5GHzではどちらが全体的に有利なのか、ベンチマークテストの結果を見ていきたい。PCMark Vantageでは、若干だが4コアのPhenom II X4 970 BEが上回った。Turbo COREがあるとはいえ、PCMarkでは6コアをフルに活かせる項目がほとんど含まれていないので、これは仕方がないところか。
その代わりCINEBENCH R11.5のレンダリングテスト(x CPU)では、6コアのメリットがフルに活かされていることが、スコアからも見て取れる。ただ、Intelの4コア(Hyper-Threadingで8スレッド同時実行)のCore i7-870におよばないのは少々淋しいところ。
FINAL FANTASY XIV OFFICIAL BENCHMARKでは、描画負荷が高いHighでは、Core i5/i7と同様にビデオカード性能によって頭打ちとなってしまっている。しかし、CPUの総合性能を比較的素直に反映するLowでも、ほぼ互角のスコアとなっている点は興味深い。
消費電力の測定では、高負荷時にはX4 970 BEのほうが32W低いが、アイドル時は逆にX6 1075Tのほうが10W低い。また、いずれもCore i7-870よりも高負荷時では低くなっており、TDP 125Wという数字のイメージほど扱いにくくはなさそうだ。
アプリによって使用するコアを指定する
マルチコアCPUの性能は、使用するソフトウェアによってはすべてのコアを使ってしまい、複数の作業を同時に行ないたいときに困ることがある。そこで「Process Lasso」のようなプロセス管理ソフトを使えば、アプリケーションごとに使用するコア(スレッド)の割り当てが可能になる。マルチスレッドをうまく使い分けよう。
タスクマネージャでも指定可能
実行中のプロセスを選択し、右クリックメニューから「関係の設定」を選択して指定。ただし、プロセスを終了するとリセットされる
Process Lassoを使う
「Default CPU Affinity」で使用コアを指定しておくと、アプリケーションの起動ごとにその設定が適用される。一時的な設定も可能
ライター鈴木雅暢の評価:
コストパフォーマンス抜群のX4 970 BE
- Phenom II X6 1075T:★★★☆☆
- Phenom II X4 970 BE:★★★★☆
- プラットフォームの魅力:★★★★☆
Phenom II X6 1075Tは低価格6コアCPUという点は魅力だが、1055Tという省電力の下位モデルがある状態では中途半端な印象。一方、Phenom II X4 970 BEはスペック的な部分ではあまりおもしろさを感じないが、実用性、コストパフォーマンスは抜群。倍率ロックフリーである点も魅力だ。
【検証環境】
[LGA1156環境]
マザーボード:ASUSTeK Maximus III GENE(Intel P55)
[Socket AM3環境]
マザーボード:ASUSTeK CrosshairIV Formula(AMD 890FX+SB850)
[共通環境]
メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-2G88N3P-13H(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:EVGA 01G-P3-1370-KR(NVIDIA GeForce GTX 460)、HDD:日立GST Deskstar P7K500 HDP725025GLA380(Serial ATA 2.5、7,200rpm、250GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版