話題のFusionはAtomより使えるか?
AMDから新登場したFusion APUが大いに注目を集めている。Atomに対するアドバンテージはどこにあるのか、そのスペックや特徴を解説するとともに、性能や消費電力をベンチマークテストで明らかにする。
スペックとベンチマーク結果を比較
Fusion
DirectX 11に対応し、動画再生支援機能が強力な最新のGPUコアを統合。チップセットがSATA 6Gbpsに対応するなど高機能だ
CPU機能 | |
コア数(最大スレッド数) | 2(2) |
動作クロック | 1.6GHz |
TDP | 18W |
GPU機能 | |
GPU名 | Radeon HD 6310 |
DirectX | DirectX 11 |
動画再生支援 | UVD3 |
GPGPU | OpenCL |
映像出力 | デジタル&アナログ |
チップセット機能 | |
PCI Expressレーン | 4(CPU)+4(チップセット) |
Serial ATA | 6Gbps×6 |
USB 2.0 | 14 |
Atom
消費電力は低いが、動画再生支援機能が弱くデジタル出力機能も持たないなどGPUコアの古さは否めず、多目的用途には向かない
CPU機能 | |
コア数(最大スレッド数) | 2(4) |
動作クロック | 1.8GHz |
TDP | 13W |
GPU機能 | |
GPU名 | GMA 3150 |
DirectX | DirectX 9 |
動画再生支援 | Clear Video(BD 非サポート) |
GPGPU | なし |
映像出力 | アナログ |
チップセット機能 | |
PCI Expressレーン | 4(チップセット) |
Serial ATA | 3Gbps×2 |
USB 2.0 | 8 |
新規設計の省電力CPUコアと最新世代のGPUコアを融合
「Fusion APU」はCPUコアとGPUコアを一つの半導体チップに集積した省電力CPUの総称だ。現行ラインナップは4モデルだが、デスクトップPC向けでは主に最上位のAMD E-350が使われる。
CPUコアには電力効率を重視して新設計したBobcatアーキテクチャを採用している。性能的にはAtomよりワンランク上を狙ったものだが、これに統合しているGPUコアはDirectX 11対応の最新世代で、チップセットのA50MもSerial ATAの6Gbps転送に対応するなど、システム全体で見た性能および機能では、CPUコアの性能差以上にAtomシステムに対するアドバンテージは大きい。
ベンチマークテストの結果もスペックを裏付けるものとなっている。PCMark05のスコアを見ると、CPUでは34%、Graphicsでは320%と大きく差が開いた。HDDスコアでは少し見劣りしているが、Serial ATA 3GbpsのHDDを利用しているためであり、CPUテストなどに比べて誤差が大きいテストなのでこのくらいの差は気にする必要はない。
3DMark06に見る3D描画性能の違いも歴然としている。3Dゲームがプレイできるほどではないが、Atomでは少しつらいようなカジュアルゲームなどは快適に動くはずだ。システムの消費電力はTDPどおり高負荷時で少し高くなっているが、アイドル時はAtomシステムとほぼ互角と健闘している。
【検証環境】
< Fusion環境>
マザーボード:GIGABYTE GA-E350N-USB3(rev. 1.0)(AMD E-350+A50M)、メモリ:Corsair Memory CMX4GX3M2B1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×2)
<Atom環境>
マザーボード:FOXCONN D52S(Intel Atom D525+NM10)、メモリ:Patriot Memory PSD24G800KH(PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB×2)
<共通環境>
HDD:Western Digital WD Caviar Blue WD5000AAKS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、500GB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版
強力なグラフィックス機能が大きなアドバンテージ
前項の結果のとおり、FusionのGPU性能の高さは明らかだが機能面の差も大きい。動画再生支援機能「UVD3」はH.264やVC-1のハードウェアデコードに対応しており、Blu-ray DiscタイトルやAVCHDムービーなどを低いCPU負荷で快適に楽しめる。また、SD動画のHD解像度へのアップコンバート機能など高画質化機能も豊富に備える。
さらに、著作権保護技術のHDCP/COPPに対応し、HDMI、DisplayPortなどのデジタル映像出力機能を備えている点もAtomシステムにはない優位点で、Fusionマザーもインターフェースが充実した製品が多い。省電力ながらAtomでは対応できなかったエンタテイメント系の用途にも活用できるFusionシステムの魅力は実に大きい。コンシューマ向けのサブマシンにはまさに最適と言える。
HDMIでテレビにつなげばリビングPCに
FusionはHDMI出力を標準でサポートしており、Blu-ray Discタイトルなどの映像や音声を家庭用テレビに出力して楽しむことが可能だ。家庭用テレビを液晶ディスプレイ代わりに利用するような使い方もでき、サブマシン用に液晶ディスプレイを購入するコストを浮かすことも
CPU使用率の差も大きいが、実際に見ると差はさらに歴然としている。Atomではコマ落ちが激しく視聴に堪えないのに対し、Fusionではスムーズに再生できる。AtomシステムはHDコンテンツのデジタル出力に必要な著作権保護機能に対応していないためか、PowerDVD 10では再生できなかった
Fusionマザーボードラインナップ
ファンレス&機能充実のMini-ITX
- ASUSTeK
- E35M1-I Deluxe
- 実売価格:19,000円前後
大型のファンレスヒートシンクを実装したFusionオンボードのMini-ITXマザー。CPUはAMD E-350、チップセットはA50Mを採用している。無線LAN(IEEE802.11b/g/n)とBluetoothに対応し、USB 3.0(フロント用端子も装備)、eSATA、HDMI出力などインターフェースも充実している。先進のEFI BIOSを採用し、グラフィカルな画面でマウスを使ってのセットアップができる。
高品質設計と豊富なUSB機能が光る
- GIGABYTE
- GA-E350N-USB3
- 実売価格:15,000円前後
長寿命日本製コンデンサを採用し、同社高品質規格「Ultra Durable3 Classic」に準拠したFusionオンボードのMini-ITXマザー。CPUはAMD E-350、チップセットはA50Mだ。2基のUSB 3.0ポートを含めてUSBポートはすべて通常の3倍の給電能力を持っており、スマートホンなどの急速充電が可能。PCの電源がOFFの状態からでも充電を開始できるOn/Off Charge機能も持つ。
豊富なインターフェースが魅力
- Sapphire
- IPC-E350M1
- 実売価格:18,000円前後
AMD E-350とA50Mチップセットを搭載したMini-ITXマザー。メモリスロットにSODIMMスロットを採用し、スッキリしたレイアウトにまとめている。拡張スロットはPCI Express 2.0 x16スロット(4レーン)に加えてPCI Express Mini Cardスロットも装備。HDMI、USB 3.0、S/P DIF OUT(光角型)、Bluetooth 2.1+EDRにも対応するなど、非常に豊富なインターフェースを備える点が魅力。
【問い合わせ先】
ASUSTeK:news@unitycorp.co.jp(ユニティ)/ http://www.asus.co.jp/
GIGABYTE:052-619-1560(CFD販売)/ http://club.gigabyte.co.jp/
Sapphire:03-5215-5650(アスク)/ http://www.sapphiretech.jp/