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TEXT:多和田新也 |
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地上デジタル放送とは? |
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2011年7月24日の地上アナログ放送停波が近付く中、地上デジタル放送に対応したPC用チューナー製品が登場し、自作PCなどでも地デジを楽しめるようになった。まずは、地デジ導入のメリットや、導入にあたっての要件などを整理しておきたい。 |
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地上デジタル放送への移行は、世界的な放送のデジタル化への流れや、電波の有効活用などを目的に、国の政策として行なわれている。地上アナログ放送が停波されると従来の地アナチューナーのみを搭載したテレビは利用できなくなるので、ユーザーにとって視聴用ハードウェア購入にコストがかかるというデメリットはある一方、地デジには、高画質な映像というメリットも存在している。
地アナでは、525本の走査線をインターレース表示しており、アスペクト比は4:3。PCに当てはめると640×480ドット程度の解像度となる。一方の地デジが採用するISDB-T規格では、1,440×1,080ドットのインターレース方式、アスペクト比16:9の映像となる。音声仕様は2または5.1チャンネルのMPEG2 AACで、映像と音声を合わせたbitレートは16.851Mbps。デジタル放送の魅力は何と言っても、このハイビジョン放送にあると言ってよいだろう。ちなみに、BS/CSデジタル放送で利用されているISDB-Sは、これを上回る最大25.44Mbps、1,920×1,080ドットのインターレース方式が利用可能だ。
ISDB-Tでは、現在UHF帯を使った13~62chの50チャンネルを割り当て、各チャンネルを13のセグメントに分けたOFDM方式で送受信を行なっている。多くの放送局ではこのうち12セグメントでハイビジョン放送、残り1セグメントで低解像度のワンセグ放送を送信している。後者の対応機器は2006年後半より発売されていたが、前者のフルセグ(つまりハイビジョン放送)に対応したPC向け地上デジタル放送チューナーの単体発売解禁が、今回の話題となるわけだ。
なお、地上/BS/CSデジタルのハイビジョン放送は、放送のコピー(録画)を制限する信号「CCI(Copy Control Information)」が組み込まれている。現行ルールでは1回(コピーワンス)に制限されるが、放送局の立場からは、ユーザーの機器に録画されたものが“放送局が持つオリジナルコンテンツのコピー”と解釈されるので、録画データをほかの媒体へコピーできず、BDやDVDなどにムーブ(移動)するしかないのが現状だ。これを見直し、コピー×9回+ムーブ×1回を可能にするダビング10(p.111参照)と呼ばれる新ルールが近々登場予定だ。
CCIは機器側の対応も不可欠で、機器側が情報を識別/制御しないと意味をなさない。そこで、登場するのがB-CASカードだ。デジタルハイビジョン放送はMulti2と呼ばれる方式で暗号化されて送信されている。これを復号するための暗号鍵を記録したのがB-CASカードで、チューナー各機器に付属している。これがないとデジタルハイビジョン放送は視聴できないが、カードの発給条件として先のCCIが正しく取り扱われることが前提とされているため、事実上、コピー制御を正しく行なう機器でしかデジタルハイビジョン放送を視聴できないのだ。
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放送波の仕様 |
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放送規格 |
bitレート
(最大) |
HDビデオ解像度
(最大) |
音声仕様 |
地上デジタル放送 |
ISDB-T |
16.851Mbps |
1,440×1,080/インターレース |
MPEG2 AAC、5.1/2チャンネル |
BSデジタル放送 |
ISDB-S |
25.44Mbps |
1,920×1,080/インターレース |
MPEG2 AAC、5.1/2チャンネル |
CSデジタル放送 |
1,280×720/プログレッシブ |
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地デジではUHF帯の50チャンネル(13~62ch)を利用。各チャンネルを13セグメントに分け、12セグメントをハイビジョン放送、1セグメントを移動体機器向け放送に利用するのが一般的 |
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地上/BS/110度CSのデジタルハイビジョン放送を視聴するのに必要なB-CASカード。受信可能な放送の種類により色分けされ、青色が地デジ専用、赤色が地上/BS/CSデジタルの3波対応となる |
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地デジは、地上アナログ放送とは異なる送信設備が必要になる上、周波数も異なる。2003年12月1日から東京、大阪、名古屋で試験放送が開始され、2006年12月までに各都道府県の県庁所在地をすべてカバーしたが、依然として国内の全世帯はカバーされておらず、放送エリアでも山間部や高層ビル街などでは、電波の干渉により視聴しにくい地域も存在する。
地デジの導入にあたっては、最低限、自分が住む地域が放送エリアに入っているかを事前に確認しておくべきだ。Dpa(社団法人デジタル放送推進協会)のWebサイトでは、住所や郵便番号をもとに、周辺の中継局をチェックすることができる。各都道府県別に受信可能地域の目安を示すPDFも用意され、今後のロードマップも示されているので、現在視聴ができない地域でも、いつ頃から視聴可能になるか目安を把握することができる。 |
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DpaのWebサイトでは、住所や郵便番号をもとにした地域周辺の中継局マップや、都道府県別の視聴可能エリアを紹介するPDFなどが提供されている |
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従来の地アナがVHF帯の1~12chとUHF帯の13~62chを使用していたのに対し、地デジではUHF帯から、主に13~52chを使用している。地アナでも、UHF帯での放送に対応するためUHF対応アンテナが設置されている場合もあるが、そうでないなら新たにアンテナを設置する必要がある。電波が強い地域なら、多数販売されている屋内用の地デジアンテナも手軽に設置できるので十分検討の余地がある。 |
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VHF帯用屋外アンテナ
地アナ用アンテナは、VHF帯にしか対応していないものが多い。UHF帯対応アンテナを設置していても、中継局が変われば向きを調整する必要がある |
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UHF帯用屋外アンテナ
地デジに必要なのは、UHF帯の13~62chを受信できるアンテナ。一般的には屋外にアンテナを取り付けたほうが電波を受信しやすい。ベランダに取り付け可能なタイプも存在する |
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BS/CSデジタル用アンテナ
衛星放送であるBS/CSデジタルを視聴するには、パラボラタイプのアンテナを取り付ける必要がある。地デジの視聴だけなら設置は不要だ |
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地デジ屋内アンテナ
コンパクトな屋内用アンテナも多数販売されている。電波が強い地域であれば十分に視聴可能なので、取り付けや配線の容易さなどを重視する場合は検討してみよう重視する場合は検討してみよう |
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地上デジタル放送と聞くと、なんだか特殊な放送のように受け止めてしまいがちだが、実際は現在のアナログ放送を置き換えるものである。そのため、地上/BSデジタルとも、CMが入る民放放送は無料で視聴できる。
ただしNHKは、アナログ放送同様に受信契約を結んだ上で料金を支払う必要がある。また、BSデジタルでは、WOWOWに代表される独立系チャンネルや、CSデジタル放送を視聴する際に個別契約となり、別途料金がかかる。いずれにしても、アナログ放送と同じ考え方で問題ない。 |
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NHK料金表(沖縄県以外、口座振替の場合) |
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2カ月払い |
6カ月前払い |
12カ月前払い |
地上契約 |
2,690円 |
7,650円 |
14,910円 |
衛星契約(地上契約含む) |
4,580円 |
13,090円 |
25,520円 |
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そのほかの料金表 |
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料金(月額) |
WOWOW(BS) |
2,415円 |
e2 by スカパー!(CS) |
410円+α※ |
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※ チャンネルまたはパックセットの契約が必須 |
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