ゲームから動画、一般的な操作まで
PCシステムの中で、画面の描画とディスプレイへの出力を担当するのが、ビデオカードだ。加えて、描画に関する計算処理も担当する。そういった計算処理はビデオカードの中心となるGPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれるプロセッサが行なうが、近年では、このGPUの著しい進化に伴ってビデオカードの活躍の場が急速に広がっている。
ビデオカードの利用目的として筆頭に挙げられるのは3Dゲームだ。ゲームに使われるリアルタイム3DCGをリアルに描画するには高度な計算処理が必要になっており、どんなタイトルをどれくらいきれいな画質で、どれだけ快適にプレイできるかというのはビデオカード(に搭載されるGPU)の種類によって大きく変わってくる。
また、最近では動画の再生(デコード)、圧縮(エンコード)、変換(トランスコード)といった作業もビデオカードが担当する場面が増えている。もともとはCPUが担当していたが、GPUの進化により、より効率よく(高速かつ低消費電力で)処理できるようになったためだ。
Windows 7では、こうして進化してきたビデオカードの描画能力を活かすため、積極的にビデオカードの機能を利用してデスクトップを描画する仕組を採用している。
そのほか、ビデオカードの利用目的としては、液晶テレビに接続するためにHDMI端子を追加したり、高解像度出力を可能にするデュアルリンク対応のDVI端子を追加したりというインターフェースの増設といった目的もある。また、クリエイティブツールの作業性を上げるため、あるいはネットトレーディングをスムーズに行なうためデュアル/トリプルディスプレイにする際にも用いられる。
このように、ビデオカードを導入する目的はさまざまあり、それぞれ求められる性能や機能は異なる。必ずしも高価な製品のほうがよいというわけではない。目的に合わせてビデオカード選びのポイントは変わってくる。ハイエンドGPU搭載モデルはもちろん高性能だが、その分消費電力や発熱も大きく、オーバースペックな環境で運用する場合はデメリットが目立つ。また同じGPUを搭載する製品でも、最近ではカードメーカーが独自にオーバークロックを行なったり、基板や冷却機構などを工夫したり、インターフェースを増やしたりするなど、仕様が多様化してきている。実際に選ぶ際にはそれぞれの製品ごとの特徴も考慮する必要があるだろう。
そこで、今回は少し視点を変えて、あえてGPUで分類せずに、利用目的や製品の特徴で分類し、それぞれのジャンルの中での人気製品、お勧め製品を厳選して取り上げた。もちろん、性能や静音性の検証も行なっているので、あわせて参考にしてもらいたい。
ビデオカードの利用目的

最新ゲームには欠かせない
ビデオカードと言えばやはり最初に連想するのは3Dゲームだろうか。グラフィックス品質の高いゲームタイトルを高画質・高解像度で快適にプレイするにはハイレベルな3D描画性能が求められる

日常的な用途にも
Windows Vistaから採用された3Dデスクトップの「Windows Aero」に加え、最新のInternetExplorer 9ではWebブラウジングの際にもGPUの支援機能を使用できるようになった

動画再生/変換を支援
ビデオカードの動画再生支援機能はYouTubeやニコニコ動画などの動画視聴にも活用される。また、GPUのGPGPU機能に対応したソフトでは動画のエンコードも格段に高速に行なえる

マルチディスプレイで作業性向上
1台のPCで複数のディスプレイを使うマルチディスプレイ環境は、クリエイティブツールや株式投資ソフトなど多くの情報を一度に表示させたい場合に有効だ。5画面以上の出力を実現するものも
【検証環境】 CPU:Intel Core i5-2500K(3.3GHz)、マザーボード:BIOSTAR TH67XE(Intel H67)、メモリ:Patriot Memory PSD34G1333KH( PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)、HDD:Western Digital WD Caviar Blue WD6400AAKS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、640GB)、OS:Windows 7 Ultimate SP1 64bit版、室温:約13℃、暗騒音:約31.5dB、動作音測定距離:ファン軸上から約5cm、アイドル時:OS起動5分後の値、高負荷時:OCCT Perestroika 3.1.0実行中の値