昨今のPCパーツの発熱量の増大に伴ない、ケースは単なる「システムを保護する箱」ではなく、「冷却装置」としての役割が大きくなった。発熱の小さいエントリー/ミドルクラスのパーツで静音PCを作るというのももちろんアリだが、それでも冷却を無視するわけにはいかないのが現在のPC事情だ。ここ数年でCPUを含めた各パーツの省電力機能は強化されたものの、高負荷時の発熱量は増え続けている。下のグラフは現行(Intel Core i7)と旧世代(Core 2 Quad)のハイスペック環境を、ロングセラーの静音ケース「Antec SOLO BLACK」に組み込み、その冷却能力を比較したものである。環境ごとに温度センサーが異なるので厳密な比較ではないが、現行スペックマシンのほうが各部の温度が高い傾向が見て取れる。とくに高負荷時のCPU温度は、もはや限界といったところであり、ケースの冷却能力不足は明らかである。
それでは現行スペックを考慮した最新のケースはどうだろうか? この特集では各メーカーの売れ筋モデル、最新モデルを取り上げ、その性能や機能を徹底チェックする。
【検証環境】
[旧世代スペック]CPU:Intel Core 2 Quad Q9550(2.83GHz)、マザーボード:ASUSTeK P5Q-E(Intel P45+ICH10R)、メモリ:Patriot MemoryPSD24G800KH(PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:NVIDIA GeForce 9600 GTリファレンスカード、HDD:Seagate Barracuda7200.11 ST3320613AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、320GB)、電源:Sea Sonic Electronics M12 SS-700HM(700W)、PCケース:Antec SOLO BLACK、CPUクーラー:CPU付属品、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版
[現行スペック]CPU:Intel Core i7-930(2.8GHz)、マザーボード:ASUSTeK P6X58D-E(Intel X58+ ICH10R)、メモリ:Corsair Memory XMS3CMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×4 ※3枚のみ使用)、ビデオカード:玄人志向 RH5770-E1GHD/DP/G3(ATI Radeon HD5770)、Seagate Barracuda 7200.12 ST31000528S(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、電源:Sea Sonic Electronics Xseries SS-650KM(650W)、PCケース:Antec SOLO BLACK、CPUクーラー:CPU付属品、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版
【検証内容】検証環境に示したパーツを各ケースに組み込み、HWMonitor 1.16にて各部の温度を測定。動作音はそれぞれケース正面から約20cmの距離で計測。ファンの回転数を調整できる製品は、回転速度を最小と最大に設定し、それぞれ計測。アイドル時はOS起動から10分後の値、高負荷時は3DMark Vantageを2回動作させた際の最高値。暗騒音は30.7dB。室温26℃。[各部の値]CPU:もっとも値の大きいCoreの値、チップセット:SYSTINの値、ビデオカード:GPU Coreの値、HDD:HDDの値