まず最初に言及したいのは、ケースの内部空間の違いだ。今回大型と呼べるのは、ダークフリートDF-85とFortress SST-FT02Bだが、これらは内部空間が広い分、熱がこもりにくい。周囲のパーツとの熱干渉や熱だまりが少ない製品は有利だ。しかし、SST-FT02Bの狭いシャドーべイに入れたHDDは、よく冷えるCPUと逆に温度が高めになっている。完成度が高いケースも、改良の余地はあるわけだ。こうしたパーツやドライブの間隔は購入前にも見た目で判断しやすいので、目安の一つにするとよいだろう。
一方、内部空間がより狭いmicroATXケースは冷却面では不利となるのだが、Dragon SlayerはCPU温度が高めなものの、ゲーマー向けをうたうだけあり、全般的には善戦していると言える。逆に、同じmicroATXでもsmart 230Tはこのハイスペック構成では荷が重い。この製品はスペックを抑えて、特性である静音性を活かすべきだろう。本誌初参戦となるFractal DesignのDefine R3も、アイドル時で38.8dBと優れた静音性を発揮している。ファンコントロールや追加ファンを駆使することで、性能と静音をバランスよく詰められそうだ。R120-3BKやElementGは、ファンの回転数を最大にしてもそれほど音量は上がらず、常用してもよいレベル。しかしMS1000-HS2は逆で、冷却効果もあまり変化がない。ファンコントロールの効果は確かにあるものの、まずはファンの性能向上のほうが重要といったところだ。
ハイスペック構成ではDF-85とSST-FT02B、ミドルレンジ構成ではElementGやPC-8FIA、性能を抑えた静音向けでは、Define R3、smart 230T、月光サイレントがよい仕事をしてくれそうだ。
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-965 Extreme Edition(3.2GHz)、マザーボード:ASUSTeK P6X58D-E(Intel X58+ ICH10R、ATX)、ASUSTeK RampageIII GENE(Intel X58+ ICH10R、microATX)、メモリ:OCZ Technology OCZ3X1333LV3GK(PC3-10600 DDR3 SDRAM 1GB×3)、ビデオカード:MSI R5770 Storm 1G(ATI Radeon HD 5770)、HDD:Western Digital WD Caviar Black WD1001FALS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、電源:Corsair Memory CMPSU-850HXJP(850W)、クーラー:リテールクーラー、OS:Windows 7 Ultimate 64bit 版
【検証内容】
検証環境に示したパーツを各ケースに組み込み、HWMonitor 1.16にて各部の温度を測定。動作音はそれぞれケース正面から約20cmの距離で計測。ファンの回転数を調整できる製品は、回転速度を最小と最大に設定し、それぞれ計測。アイドル時はOS起動から10分後の値、高負荷時は3DMark Vantageを2回動作させた際の最高値。暗騒音は30.7dB。室温26℃。[各部の値]CPU:もっとも値の大きいCoreの値、チップセット:SYSTINの値、ビデオカード:GPU Coreの値、HDD:HDDの値