マザーも標準搭載へ
オプションパーツにも注目
マザーボードに初めて搭載されたUSB 3.0コントローラチップは、ルネサス エレクトロニクスの「μPD720200F1」だ。サポートするポート数は2基で、信頼性の高さで定評があり、いまだにハイエンドマザーではこのチップがよく使われている。一方、ローエンドからミドルクラスでは他社のUSB 3.0対応チップが搭載されることが多い。VIA Technologiesの「VL800」では1チップで4ポートまでサポートするなど、ポート数では上回るものもある。ちなみに、μPD720200F1を搭載するマザーには4基以上備えるものがあるが、これはコントローラチップを複数搭載したり、ハブチップを搭載したりすることによって、ポート数を増やしている。マザーボードのUSB 3.0機能は、今のところバックパネルにのみ搭載される製品が多いが、最新モデルの中には、さらにピンヘッダ経由でケースのフロントインターフェースなどに引き出せるものもある。ポート数を重視するユーザーにはチェックポイントだ。
マザーボードへの搭載例のある、主立った5種類のUSB 3.0対応チップの転送速度を比較してみた。各チップが出揃ったのがIntel P67/H67世代のマザーなので、ここでは第2世代Core iシリーズを検証環境としている。ただし、FRESCO LOGICのみこの世代の搭載製品が存在せず、P55世代のASRock製品を使用しているのでCPUが異なる。これは参考値として見ていただきたい。結果を見ていくと、マザーボード選びでUSB 3.0対応チップの性能差にこだわる必要はなさそうだ。
ただし、P55搭載製品を選ぶ際には、「ブリッジチップ」の有無を確認したい。P55と各種インターフェースチップが共用する帯域は、PCI Expressの1レーンあたり2.5Gbpsと狭い。PCI Expressを4レーン使い、内部で1レーンあたりの帯域を5Gbpsに拡張するブリッジチップがないと、USB 3.0本来の速度が引き出せないことがある。また、H55搭載製品でも、ビデオカードを使用する場合には同じ問題が発生する。高速なSSDを使いたい場合には、とくに注意が必要だ。なおP67/H67やAMD 8シリーズの場合、チップセットと各インターフェースチップ間の通信帯域は十分に確保されており、ブリッジチップなしでも性能の低下は起きない。
最近では1万円前後の低価格マザーでも、USB 3.0ポートを搭載する製品が増えている。外付けHDDなどを快適に使いたいなら必須の機能だ
ASRockの「P55 Pro/USB3」のバックパネルの様子。FL 1000Gを搭載したモデルだが、USB 3.0対応ポート(中央の内部が青いポート)は1基しかない
ASUSTeKの「MaximusIV Extreme」では、バックパネルの8基とピンヘッダ経由の2基、合計10基のUSB 3.0ポートが利用できる。ただし実売4万円を越えるハイエンドモデルだ
3.5インチベイや拡張ブラケットなどを利用し、USB 3.0ポートを増やせる製品も最近では増えてきている。写真はASRockの「P67 Extreme6」に付属するインターフェースボックス
ASRockのマザーボードには、USB3.0の転送速度をさらに高めることができる「XFast USB」というユーティリティソフトが付属している
主なUSB 3.0 対応コントローラチップとハブチップ
- ASMedia Technology
- ASM1042
PCI Express 2.0に対応し、サポートするポート数は2基まで。ASUSTeKの「P8H67-V」などに搭載されている
- Etron Technology
- EJ168A
PCI Express 2.0に対応し、サポートするポート数は2基まで。ASRockやECSの低価格マザーで採用例がある
- FRESCO LOGIC
- FL 1000G
PCI Express 1.0に対応し、サポートするポート数は1基と少ない。現行のマザーボードでの搭載例はあまりない
- VIA Technologies
- VL800
PCI Express 2.0に対応。サポートするポート数は4基と多い。ZOTACの「H67I TX-A-E」などに搭載されている
- ルネサス エレクトロニクス
- μPD720200F1
PCI Express 2.0に対応し、サポートするポート数は2基。最初に登場したUSB 3.0コントローラでもあり、採用例は非常に多い
- VIA Technologies
- VL810
2010年1月に発表された世界初のUSB 3.0対応ハブコントローラチップで、1ポートを4ポートに分割することができる
USB 3.0のギモン
USB 3.0の転送速度が落ちる?
P55/H55世代では性能を出し切れない?
本文でも解説したように、P55/H55世代のマザーでは、ブリッジチップの存在は重要だ。そこで、ブリッジチップを搭載するASUSTeK「P7P55D-E EVO」(P55)と、ブリッジチップを搭載しないGIGABYTE「GA-P55-USB3」(P55)で、USB 3.0のシーケンシャルリード/ライト性能を比較してみた。P7P55D-E EVOと比較してGA-P55-USB3は22%も性能が低下しており、ブリッジチップがないとUSB 3.0が本来の性能が発揮できないことが分かる。ただし、GA-P55-USB3には、USB 3.0チップをチップセットではなく、CPUに接続して通信帯域を確保する「Turbo USB3.0」という機能がある。この機能をBIOSで有効にすると、P7P55D-E EVOよりも約13%性能がアップした。参考までにZOTACの「H67ITX-A-E」(H67)を使ってビデオカードのあり、なしの検証も行なっている。H55マザーで起きていたインターフェースの制限による速度低下も、P67/H67世代では解消されていることが分かる。
ブリッジチップの有無は要確認
アッパーミドルクラス以上のマザーボードでは、PLX Technologyの「PEX8608」というブリッジチップを搭載することで、Serial ATA 3.0やUSB 3.0用に帯域を確保し、転送速度の低下を防いでいる
【検証環境1】CPU:Intel Core i5-2500K(3.3GHz)、Intel Core i7-860(2.8GHz)、メモリ:Micron Technology Crucial Ballistix BL3KIT25664BN1608(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×3 ※2枚使用)、ビデオカード:EVGA 01G-P3-1371-KR(NVIDIA GeForce GTX 460、1GB)、システムSSD:Samsung 470 MZ-5PA064(Serial ATA 2.5、MLC、64GB)、SSD:Micron Technology Crucial RealSSD C300 CTFDDAC064MAG-1G1(Serial ATA 3.0、MLC、64GB)、電源:Corsair Memory CMPSU-850HXJP(850W)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版、Serial ATA 2.5→USB 3.0変換デバイス:センチュリー どっち~もBOX2.5REDLINE USB3.0+ eSATA[ASMedia Technology ASM1042]マザーボード:ASUSTeK P8P67-M(Intel P67)[Etron Technology EJ168]マザーボード:ASRock P67 Extreme6(Intel P67)[FRESCO LOGIC FL 1000]マザーボード:ASRock P55 Pro/USB3(Intel P55)[VIA Technologies VL800]マザーボード:ZOTAC H67ITX-A-E(Intel H67)[μPD720200F1]ASUSTeK Maximus Ⅳ Extreme(Intel P67)
【検証環境2】[P55マザー ブリッジチップあり]CPU:Intel Core i7-860(2.8GHz)、マザーボード:ASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55)、メモリ:A-DATA Technology AD3U1333C2G9-DRH(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:GIGABYTE GV-R577UD-1GD(AMD Radeon HD 5770)、システムSSD:A-DATA Technology S592 AS592S-128GM-C(Serial ATA 2.5、MLC、128GB)、電源:サイズ 鎌力4プラグイン 650W[P55マザー ブリッジチップなし]CPU:Intel Core i7-860(2.8GHz)、マザーボード:GIGABYTE GA-P55-USB3(rev. 2.0)(Intel P55)、メモリ:Corsair Memory CMX4GX3M2A1333C8(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)×2組、ビデオカード:ZOTACZT-40503-10L(GeForce GTS 450)、システムSSD:アイ・オー・データ機器 SSDN-ST128H(Serial ATA 2.5、MLC、128GB)、電源:サイズ 鎌力4プラグイン 550W[H67マザー]CPU:Intel Core i7-2600(3.4GHz)、マザーボード:ZOTAC H67ITX-A-E(Intel H67)、メモリ:A-DATA Technology AD3U1333C2G9-DRH(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:GIGABYTE GV-R577UD-1GD(AMD Radeon HD 5770)、システムSSD:ADATA Technology S592 AS592S-128GM-C(Serial ATA 2.5、MLC、128GB)、電源:サイズ 鎌力4プラグイン 650W[共通]SSD:Micron Technology Crucial RealSSD C300 CTFDDAC064MAG-1G1(Serial ATA 3.0、MLC、64GB)、Windows 7 Ultimate 64bit版、Serial ATA 2.5→USB 3.0変換デバイス:センチュリー どっち~もBOX2.5REDLINE USB3.0+ eSATA