IE9のベンチマークと年内エントリーから傾向と対策をつかめ!IE9の速さのツボを探る!

GPUアクセラレーション時代の次世代Webブラウザで遊べ IE9β先取り使いこなしガイド TEXT:清水理史

コンテンツが主役になった新インターフェース

2010年9月からβ版の提供が開始された次世代Webブラウザ「Internet Explorer 9」(IE9)。今年に入って、この存在感がにわかに高まってきた。そのパフォーマンスを活かせるハードウェア環境が整ってきたことも大きいが、IE9そのものの使いやすさにも高い注目が集まっている。

IE9では、ボタンやツールバーが少ないシンプルなインターフェースが採用されているが、これによってブラウザそのものではなく、その中身、つまりコンテンツがより目立つようになった。WebメールやSNS、ゲームなど、ブラウザは今やアプリケーションプラットフォーム化しつつあるが、こうしたコンテンツにユーザーが集中しやすく、快適に利用できる。速くて、快適。それがIE9の魅力だ。

ジャンプリストを使ってWebサービスの機能を直接実行

IE9を使えば、Webサービスもより快適に利用できる。たとえば、Webメールなどのページを表示後、アドレスバーのファビコン(サイト固有のアイコン)をWindows 7のタスクバーにドラッグすると、タスクバーにWebサービスのアイコンが固定され、クリックすると直接Webアプリケーションが起動できるようになる。まるでローカルのアプリケーションのように使えるわけだ。しかも、HotmailやTwitterなど、IE9に対応したサービスの場合、それぞれのサービス固有の機能がジャンプリストに表示される。この機能を使えば、ジャンプリストから直接Hotmailのメール作成画面を表示したり、Twitterのメッセージ投稿画面を表示したりできるため、少ない操作でWebサービスを利用可能だ。


IE9βの性能をベンチマークテストで検証

JavaScriptの実行速度をテスト/ SunSpider

IE9の快適さの秘密は、使いやすいインターフェースに加えて、パフォーマンスが大幅に向上している点にある。とくに「Chakra」と呼ばれるJavaScriptの実行エンジンは、マルチコアに最適化されており、従来に比べ大幅にパフォーマンスが向上している。

実際、JavaScriptの実行速度を計測する「SunSpider」の結果を見ると、バージョンの違いが顕著に結果に現われている。JavaScriptは、Webメールやカレンダー、企業の業務システムなど、普段よく使うWebサービスで多用されているため、日常の作業が高速化されるのは大きなメリットだ。CPUの性能も影響するため、なるべく高速かつコア数の多いCPUを選んでおくとよいだろう。


HTML5のレンダリング速度をテスト/WebVizBench

続いて、HTML5のレンダリング性能を計測してみた。画像や動画を多用する非常に「重い」ブラウザ向けベンチマークソフトとして知られる「WebVizBench」の速度を比較したのがこのグラフだ。

CPU性能に左右されたJava Scriptに比べて、こちらはGPUの性能が大きく結果に影響している。IE9では、描画にDirectXを利用するGPUアクセラレーション機能を搭載しているが、やはりこの効果は高性能なGPUほど大きいようだ。Sandy Bridgeなら内蔵グラフィックスでも十分に実用的だが、できるだけ高性能なビデオカードを搭載しておいたほうがよいだろう。今後、Webサイトで動画やアニメーションなどが多用されるようになることを考えると、IE9の性能を活かせるGPUを選ぶことが大切になってきそうだ。


SunSpider WebVizBench Internet Explorer9

溝口宗太郎氏

2010年9月にβ版が公開され、すでに2,000万ダウンロードを達成したというMicrosoft「Internet Explorer 9」。見た目の新しさだけでなく、GPUアクセラレーションなどハードウェアと密接に関連した画期的な新機能で、世界中から注目を集めている。その魅力について、同社コンシューマーWindows本部の溝口宗太郎氏に聞いた。

高速、洗練、信頼、相互運用が
IE9のポイント

IE9の特徴は大きく分けて、「高速」、「洗練」、「信頼」、「相互運用性」の四つがあると言う。
「まずは『高速』ですが、これは単にパフォーマンスが高いというだけでなく、GPUなどのハードウェアをうまく活用できるのがIE9の特徴です。『洗練』はデザイン面での特徴です。IE9では、ブラウザの本当の役割は何なのかが見直された結果、シンプルなデザインが採用されています。これにより、ブラウザ本体よりも、そのコンテンツを目立たせ、Webアプリなどがより使いやすくなっています。『信頼』は安全性です。SmartScreenフィルターの進化によってマルウェアからの保護を強化し、製品候補版(RC)から搭載予定のトラッキングプロテクションによってユーザーが自分の意志で、オンラインにおける行動を第三者によって追跡されるのを防止できるようになっています。最後の『相互運用性』はWebサイトの開発に携わる方向けのポイントとも言えますが、HTML5などの標準機能をサポートすることによって、互換性を高めることに注力しています」(溝口氏)

マルチコアで高速処理
Webアプリに強いIE9

まさにブラウザとして正常な進化を遂げたと言えるIEだが、前述した四つの特徴の中でも、やはり注目したいのは「高速」という点だろう。そのテクノロジについて溝口氏に聞いてみた。
「IE9の高速化を支えているポイントは二つあります。一つはマルチコア対応です。IE9では、『Chakra』(チャクラ)と呼ばれる新しいJavaScriptエンジンを搭載しています。これまでのJavaScriptエンジンはマルチコアCPUに最適化されていませんでしたが、ChakraではマルチコアCPUに最適化され、通常処理を実行しながら、同時にバックグラウンドで次のJavaScriptのコードを高速に実行できるネイティブコードへと次々に変換します。これにより実行速度が大幅に向上しており、SunSpiderというベンチマークでトップレベルの性能(現時点の開発版)となり、IE8の17倍も高速に処理できます。また、JavaScriptのエンジン自体もIE9からはブラウザ内部への実装に変更され、これも高速化に大きく影響しています」と言う。
今やJavaScriptはWebサイトに必須のプログラム言語と言え、とくにWebメールなどのサービスで多用されている。この処理が高速化するということは、Webでの生産性の向上に直結すると言っても過言ではない。

GPUをフルに活用
最新CPUを活かすIE9

IE9にはもう一つ自作ユーザーならではの恩恵を受けられる注目のポイントがある。GPUアクセラレーションだ。
溝口氏によると「IE9では、描画処理を従来のGDIから、DirectX(Direct2DとDirectWrite)に変更しました。これにより、GPUによってテキストやグラフィックスを高速に描画できるようになっています。リッチなサイトをよりスムーズに表現できる上、再生支援機能を使って動画をなめらかに再生することなどもできます。また、処理にGPUを使うことで、その分、CPUの負荷を軽減できるのもメリットです」とのことだ。
IntelのSandy Bridge、AMDのFusionなど、GPU内蔵のCPUが登場していることを考えると、これらのCPUのメリットもIE9で活かせることになる。とはいえ、GPUアクセラレーションはほかのブラウザでも採用される方向にある。この辺りと何か違いはあるのだろうか?

「GPUアクセラレーションには、いくつかの段階があります。ページを各要素ごとに描画する『レンダリング』、それらを一つに合成する『ページ合成』、そして生成したページをWindowsの画面に表示する『デスクトップ合成』の3段階です。どの部分にGPUを使うのかは、ブラウザによって異なる場合がありますが、IE9ではすべての処理でフルにGPUを活用することができます」(溝口氏)

なお、GPUアクセラレーションは、前述したようにDirectX(Direct2D/DirectWrite、デスクトップ合成にはDirect3D)を利用する。このため、DirectX 10.1以降をサポートしたGPUで利用するのが理想だ。DirectX 9世代でもないよりはマシかもしれないとのことだが、当然、GPUのパフォーマンスが上がれば、Webコンテンツのパフォーマンスやクオリティも向上する。GPU内蔵の最新CPU、もしくは最新のビデオカードを用意するのがお勧めだ。

今後はさらなる展開も
ゲームやアドオンでもGPUを

溝口氏も「将来的にはブラウザで本格的なゲームが楽しめるようになるかもしれません」と語っていたが、マルチコアとGPUを駆使するIE9のパフォーマンスを実際に体験してみると、確かに、それも遠くなさそうだと実感できる。また、Flashなどブラウザと一緒に利用する技術についても、将来的にはIE9経由でGPUを活用できるようになる見込みとなっている。
古いブラウザのままで、ハードウェアの性能を眠らせておくのはもったいない。PCのリソースをフル活用できるIE9を利用して、より快適にWebサービスを楽しめるようにしておくべきだろう。

溝口宗太郎氏

IE9の性能を体験できる各種デモ・ベンチが揃えられた特設サイト「Internet Explorer Test Drive」(http://ie.microsoft.com/testdrive/)。GPUアクセラレーションの効果やHTML5レンダリング速度、JavaScriptの実行速度などを試すことができる

HTML5デモの一つ「HTML5 Blizzard」。レンダリングが早いほど降雪量が多くなり、画面右上にスコア(単位はSnowflakes)が表示される

最速Webブラウジング部門・年内応募プレゼント当選者発表!

2010年末までに、2010年12月31日までに最速Webブラウジング部門にご応募された方の中から抽選で10名に「自作PCパーツパーフェクトカタログ 2011 Windows 7対応版」、「パソコン自作入門講座 2011」、「PC自作・チューンナップ虎の巻 二〇一一」のいずれかお好きな1冊をプレゼント! 当選者様には近日中に祭典事務局より個別に連絡がまいりますので、ご希望をお伝えください。期間中の該当部門応募者は7名だったので、抽選なしでみなさま当選です!!

<当選者>
抹茶 様、 (´・ω・`) 様、 ぽぽろ 様、 4453 様、 けせもい 様、 DeuTerium 様
あやたかパパ 様

Webブラウジング部門注目マシンをピックアップ!

2010年12月31日までに最速Webブラウジング部門に応募されたマシンを一部紹介します。
快速なIE9をさらに速く動作させるための秘訣はどこに!?

自作するお! 氏

http://wolftale.blog37.fc2.com/blog-entry-17.html

まずは、12/31の時点で最速Webブラウジング部門においてWebVizBenchで最高のスコアを収めた自作するお!氏のマシン。IE9の快適動作にはCPUとGPUの両方の性能のバランスが大切と思われますが、現状ではまだベストの回答は見付かっていません。このマシンでは、パワフルなCore i7-965 XEにミドルレンジクラスのベストセラーGPU GeForce GTX 460というCPU重視の組み合わせでアプローチ。快適なWebブラウジングマシンを組み上げるよいヒントとなりそうです。

あやたかパパ 氏

http://blog.goo.ne.jp/ayatakapc/e/
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こちらはSunSpider JavaScript Benchmark 0.9.1で良好な結果を残したあやたかパパ氏のマシン。Mini-ITX対応の小型ケースに、クアッドコアのCore i5-750とDirectX 10に対応したGeForce GT 240を搭載しています。低コストのSSDをRAID 0で使用するなど、サイズ・性能・コストのバランスを意識した構成と言えるでしょう。

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