DOS/V POWER REPORT

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OCGP 2010 - Core i7&i5 オーバークロックチャレンジ - 豪華景品多数! OC初挑戦も世界記録狙いも全部集まれ!!


世界屈指のオーバークロッカーduck氏にオーバークロックの神髄を聞く!! 聞き手、文:夏目敬介
世界屈指のオーバークロッカーduck氏にオーバークロックの神髄を聞く!!
6年前にオーバークロックの世界記録を樹立してから現在にいたるまで、トップを走り続けるduck氏。今回は幸運にもそのduck氏に話をうかがう機会を得て、性能向上の極意や、適したパーツの見分け方を伝授してもらうことができた。
——まずはオーバークロック(OC)を始めたきっかけを教えてください。

duck(敬称略) 最初は実用のためです。ミュージシャンとして活動していた関係で、音楽データを扱う機会が多くありました。データの編集にはPCのパワーが必要です。そこで作業効率を高めるために、CPUのOCを試したのが始まりです。インターネットでノウハウを探していたところ、動作クロックやベンチマークのスコアを競い合う大会の存在を知りました。それを見ているうちに、自分もやってみたいと思うようになり、システムを冷蔵庫に入れたり、いろいろと試していました。そんな活動中、あるオーバークロッカーから液体窒素の使用を勧められて試したところ、世界新記録を樹立してしまいました。

——OCは、ハードルが高いと思っている人も多いと思うのですが?

duck 最近はOC対応のマザーボードが一般的になってきました。BIOSの設定も豊富ですし、OC用のユーティリティが付属しています。これを利用すれば、パーツを破損させるようなムチャな設定はできません。失敗しても、初期状態で再起動できるので安心して試せます。電圧を上げる(昇圧)とマザーを破損させる恐れがありますが、昇圧しなくても十分高い動作クロックに引き上げることはできるのです。

 空冷、極冷(液体窒素やドライアイスを冷媒にした冷却方法)のどちらにも共通する注意点が一つあります。同時に複数の要素を変更をしないこと。一度に新しいパーツを複数付けたり、何箇所も設定を変更したりしてはいけません。思ったより動作クロックが上がらなかったり、不具合があったりした場合に、原因の特定が困難になります。新しいパーツをすぐに試したい気持ちは分かりますが、1ステップずつ着実に作業しましょう。

——このたび開催される「OCGP 2010」というOCコンテストでは初心者歓迎をうたっていますし、気軽にOCを始められる土壌ができつつあるのかもしれませんね。OCでもっとも重要なパーツであるCPUですが、OCに適したモデルを教えてください。

duck 性能重視のベンチマークで記録を狙うのなら、やはりIntelのCore i7-980X Extreme Editionでしょう。コア数が6個で、12スレッドの同時処理ができて、スコアを伸ばしやすいです。低コストで作業時間を短縮したい、クロック重視のベンチで記録を狙いたいといった目的には、Core i5-661や670をお勧めします。空冷でも高いレベルでOCできるのがポイントですね。Celeron E3200やCore 2 Duo E8600といった、歴代の名モデルの特徴を受け継いでいる印象を受けました。上位モデルと同じ設計で、標準の動作クロックを低く設定してあるモデルなら、向上させられる幅が大きい分、OCに向いたCPUと言えるでしょう。
Japan Cooling Artist
duck

Pentium 4の8.2GHz駆動をはじめ、数え切れないほどのオーバークロックの世界記録を樹立している。現在はOC専用パーツブランド「Japan Cooling Artist」を立ち上げ、日本のOC界、自作PC界繁栄のために日々奮闘中。

Japan Cooling Artist
URL:http://duckjca.com/
duck氏
 
OCに最適なCPUを選ぼう
OCに最適なCPUを選ぼう
OCに挑戦するなら、OCに適したCPUを使用するのがベストだ。いつかは世界記録を塗り替えるというのなら、6コア12スレッドのCore i7-980X XE(左)、気軽にOCを楽しんでその効果を体感したいならCore i5-661(右)がお勧めだ
——ほかに重要なパーツはありますか?

duck CPUクーラーが冷却能力に優れていることは必須です。最近はサイドフロータイプが多いですが、使用しているマザーの稼働時に実際に手で触れてみて、CPU周辺に熱を感じたら、トップフロータイプを選ぶのもアリですね。ほかに重要なパーツはマザーと電源です。マザーは、2、3万円付近の製品がよいでしょう。高機能なユーティリティが付属していて、搭載している部品も上質です。数時間の作業では違いが分からないかもしれませんが、何度もOCを試したり、長期間運用したりするとなると、コンデンサなど各部品の劣化が始まります。マザー自体が低発熱であることも重要です。マザー上のパーツをしっかり冷やせば、ベースクロックの調整だけで動作クロックは大幅に向上しますし、昇圧の必要もありません。メモリは、有名メーカーのミドルクラス以上の製品であれば、問題ありません。過度に高価なものを揃える必要はないです。

 また、今まで動いていたベンチマークが急に完走しなくなった、スコアの伸びが悪いといった場合、原因は電源であることが実体験として多くありました。電源選びで重視したいのは、+12Vが1系統であること。系統が複数のモデルは、マザーに供給する電力に大きなブレが生じる場合がほとんどでした。環境によって異なりますが、(ハイエンド電源であれば)70Aもあれば十分です。総出力よりも+12Vの仕様で選んでみてください。最近はケーブルを着脱できるプラグインタイプが人気ですが、OCをするなら、避けたほうが無難でしょう。接点が増えれば抵抗も増え、その分ロスにつながるからです。ちなみに、私は電源を買うときに「低い出力のわりに高価」なモデルを選んでいます。そういった製品は、高品質なパーツが使われているのだろうと考えているからです。

——最後に読者へ、OCをする上で、気を付けておきたい3か条を教えてください。

duck まず、地味ですが静電気対策をしてください。パーツを手に取る前に、金属のケースや机を触る程度で問題ありません。パーツは思っている以上に繊細です。次に、OCがうまくいかないときは、パーツではなく自分のテクニックを疑ってください。ついつい「このCPUは外れだ」などとパーツの問題にしがちですが、多くの場合は自分のミスが原因です。取り付けや設定、冷却方法に不備はなかったか、徹底的に調べて、必ず原因を明確にしてください。失敗の経験をデータとして残しておくことこそが、OC成功の近道です。そして何より重要なのが「楽しむこと」です。CPUが非常に高性能になり、OCをして得られる実利はそれほど大きなものではなくなりました。そこに固執するのではなく、OCを通じて得られる知識や経験、達成感などを大切にしてください。OCGP 2010のように初心者に広く門戸を開いたOCイベントなどに気軽に参加してみると、自作PCの世界観がさらに広がり深まると思いますよ。
ちょっとこだわれば普通のPCパーツでもOCデビューできる
MSIのP55-GD80OCをいろいろと試したり、システムを長期運用したりするなら、マザーは上質なパーツを搭載した、2万円以上の製品を選びたい。写真は機能満載のお買い得マザー、MSIのP55-GD80   CPUを除けば電源がOCには最重要パーツだと語るduck氏CPUを除けば電源がOCには最重要パーツだと語るduck氏。最近使ってみてよかったのが、Silver StoneのSST-ZM1200Mと、プラグインながらサイズのENERGIA-1000Pだったそうだ
ThermaltakeのFrio 冷却魂(左)と、Cooler MasterのHyper 212 Plus
CPUの冷却はOCにとっては重要だが、低価格でも優れた性能を持つクーラーは多い。写真はThermaltakeのFrio 冷却魂(左)と、Cooler MasterのHyper 212 Plus
 
メモリ
定評のあるメーカーのミドルクラスの製品であれば、OCを行なうにあたってメモリはそれほど重要視することはないパーツとのこと。過度に高級な製品を買う必要はないそうだ
duck氏の極冷を拝見
duck氏専用冷却システムの全貌
duck氏が「極冷」でOCを行なうときに使用する冷却システム。銅のブロックをくり抜いて作ったPOTに、冷媒として液体窒素を入れてCPUを冷却する。POTは万力のような固定具を使い、数トンの力でCPUに押し付けている
点滴のように足しながら温度を微調整
点滴のように足しながら温度を微調整
容器に小分けした液体窒素をPOTに注ぐ。POTも凍結するので、氷の膜を除去しながら作業を進める。氷が張ってしまうと、それだけで冷却能力が著しく下がってしまうとのこと
蒸気を噴き出しながら極冷の世界へ
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液体窒素をPOTに注ぐと、POTの熱で沸騰して蒸気が霧のように噴き出してくる。POTの上部に小型ファンを用意して蒸気を一定方向に逃がし、下にあるマザーがなどが濡れないようにしている
バナナで釘が打てるどころの話ではない
バナナで釘が打てるどころの話ではない
液体窒素で冷却を始めて数分で、CPUの温度が−140℃以下に到達。最初は徹底的に冷やして、そのCPUが動作する温度の下限を見きわめるそうだ。今回は−147℃付近でシステムがフリーズした
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