実践!Core 2 Quadオーバークロック設定術 手軽に“2ランク”性能アップ!!

TEXT:鈴木雅暢

3万円のCPUが6万円以上のCPUに!? そんなウマい話が……実はある!!

 設定をちょっと変えるだけで、高価なCPUと同等の性能をゲットできる!? そんなウマい話を現実にしてしまうのが、オーバークロックだ(OCと略されることもある)。オーバークロックとは、CPUなどのPCパーツを定格以上のクロックで動作させる行為。たとえば、Core 2 Quad Q9450の動作クロックは2.66GHzと決まっているが、この設定を変えることで、2.66GHzより上のクロックで動作させることができる場合が多多ある。当然、クロックを上げた分だけパフォーマンスもアップし、仮にCore 2 Quad Q9450がオーバークロックによって3GHz以上で動作すれば、上位モデルのCore 2 Quad Q9650(定格3GHz)を凌駕するパフォーマンスを得ることができる。つまり、3万円台で買えるQ9450が本来6万円以上もするQ9650と同等品以上に化けるわけで、これは非常にオイシイ話だ。もちろん、Q9650をオーバークロックすれば、さらに上の性能を目指すことができるだろう。
 オーバークロックは、通常マザーボードのBIOS設定などで行なうが、その際には、クロックが影響する範囲を理解しておく必要がある。図のように、CPUは、PLL ICと呼ばれる外部チップから生成されるクロック(FSBクロックまたはベースクロック)をCPU内部で何倍かにして動作させている。たとえば、2.66GHz動作のQ9450ならば、333MHzのFSBクロックをCPU内部で8倍にして、2.66GHzとして動作させているわけだ。理屈の上では、この倍率を9倍にすれば3GHzで動作することになるが、内部倍率は基本的にロックされており変更できない。そのため、オーバークロックを行なう場合は、FSBクロックのほうを上げていくことになる。ちなみに、図に書かれている「システムバス」とは、CPUとチップセット(MCH)をつなぐバスであり、そのクロックは「FSBクロック×4」と決まっている。そのため、Core 2 Quad Q9450のシステムバスクロックは、1,333MHz(333MHz×4)となる。
 FSBクロックを上げるときに注意したいのは、メモリクロックがFSBクロックと連動しているということだ。たとえば、Core 2 Quad Q9450で、DDR3-1066のメモリを定格で使う場合は、システムバスクロックとメモリクロックの比率がそれぞれ、5:4(1,333MHz:1,066MHz)になっているが、この比率のままFSBクロックを400MHzにすると、メモリも1,280MHzにオーバークロックされてしまう。メモリがオーバークロックされて高クロックで動作するならばそれに越したことはないのだが、CPUと違ってオーバークロックしたところで性能アップはごくわずか。その一方、オーバークロックすることで動作が不安定になったり、CPUオーバークロックのボトルネックになったりする可能性も大きいので、できるだけメモリのオーバークロック動作は避けるのが基本と言える。
 そのためこの場合、システムバスとメモリの比率を5:3にすれば、メモリは960MHzで動作し、オーバークロック状態にならない。あるいは、5:4のままでDDR3-1333対応メモリを使えば、定格より低い1,280MHzで動作することになり、オーバークロックにならない。このように、CPUだけでなく、メモリとの連動を意識して設定を行なうことがオーバークロック成功のカギとなるのだ。

Core 2 Quad Q9450を簡単に高クロック化できる! オーバークロック前後の比較動作図

総合スコアが約19%アップ!
PCMark Vantage Build 100

【検証環境】 CPU:Intel Core 2 Quad Q9450(2.66GHz)、Intel Core 2 Quad Q9650(3GHz)、マザーボード:GIGABYTE GA-EP45T-DS3R(Intel P45+ICH10R)、メモリ:Corsair Memory TW3X2G1600C9DHX(PC3-12800 DDR3 SDRAM、CL=9、1GB×2)、ビデオカード:NVIDIA GeForce 8800 GTリファレンスカード、HDD:Western Digital WD Caviar Blue WD6400AAKS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、640GB)、OS:Windows Vista Ultimate SP1


Core 2 Quad Q9450の定格動作とオーバークロック動作の違い
  FSBクロック × 内部倍率 動作クロック
定格 333MHz × 8 2.66GHz
オーバークロック 400MHz × 8 3.2GHz
オーバークロックは危険?

オーバークロックを行なえばメーカーの保証は失効する。また、オーバークロックは必ず成功するとも限らない。成功しても製品寿命が多少なりとも縮まるのは確実だし、失敗すれば、ファイルシステムが破壊されたり、CPUやマザーボードなどのパーツが故障したりするリスクもある。しかし、実際のところ極端に電圧を上げて動作させたりしない限り、パーツが即故障することはまれなので、それほど怖がる必要はない。動作クロックのマージンを大きめに取ってあるCPUも多く、本稿で述べているようなしかるべき注意を払いさえすれば、オーバークロック状態で常用するのも非現実的なことではなく、そのように使っているユーザーも数多くいる。あくまで自己責任が大原則だが、遊びと割り切って行なえるのであれば、それほど過剰に構える必要はないだろう。

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