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TEXT：鈴木雅暢

PCの進化とともに重要になるHDDの信頼性

　PCの普及とともに、写真や映像をデジタル化してPCに保存、管理するといったことがごく普通に行なわれるようになってきた。しかし、デジタルカメラで撮影した写真をまとめた電子アルバムも、わが子の成長を記録し一生懸命に編集したオリジナルムービーも、PCの故障などによりHDDが動作しなくなると失われてしまう可能性がある。また、最近はHDDの大容量化も顕著だが、万一の故障の際に失われるものも大きいとも言える。一般化が進めば進むほど、そして大容量化が進めば進むほど、HDDの信頼性がより重要になってくる。

　高信頼性というキーワードから、ハイエンドユーザーを中心に大きな注目を集めているのが、ニアライン向けのHDD。ニアラインとは、常に最前線で頻繁なデータ要求をこなす「オンライン」と、データの長期保存に適したテープドライブなどのオフラインとも呼ばれる「アーカイブ」の中間的な存在で、バックアップサーバーなどが主な用途だ。ニアライン向けのHDDには、リーズナブルな導入コストと、比較的アクセス頻度が低いながらも1日24時間365日稼働を前提とした高い信頼性が求められる。もともとは企業向けながら、ニアライン向けのHDDが満たす要件は、現在のハイエンドユーザーのニーズにピッタリと合致する。

　今回取り上げるBarracuda ESは、Seagateの最新ニアライン向けHDD。Barracudaに「Enterprise Storage」を意味するESを加えた新ブランド名が与えられている。同社デスクトップPC向けブランドのBarracuda 7200.10とプラットフォームは共通で、7,200rpmの回転速度や平均シークタイムなど、基本的なスペックも共通。しかし、ニアライン向けとして、1日24時間365日稼働を前提にしたMTBF（平均故障時間＝製品寿命の目安となる）は120万時間を誇る。これは、従来のNL35シリーズよりもさらに20％もアップしている。

　この高信頼性という要素は、ただメーカーが保証する・しないというだけの問題ではない。Barracuda ESは、エンタープライズの技術を活かした生産工程の中で、さらに厳しい品質基準をクリアした中でもきわめて優秀なHDDであり、製造面での裏付けがはっきりとあるわけだ。またこのBarracuda ESは、ほかの同社製品同様に5年間の長期保証も大きな特徴の一つ。これも高い信頼性へのSeagateの自信の表われである。

インターフェースは現在のところSerial ATAのみ。Serial ATA 2.5対応で、読み出しの効率を上げるNCQや3Gbps転送をサポート

Seagate Barracuda ESシリーズ

型番	インターフェース	NCQ対応	転送レート	容量	キャッシュ
ST3750640NS	Serial ATA 2.5	○	3Gbps	750GB	16MB
ST3500630NS	Serial ATA 2.5	○	3Gbps	500GB	16MB
ST3320820NS	Serial ATA 2.5	○	3Gbps	320GB	16MB
ST3250620NS	Serial ATA 2.5	○	3Gbps	250GB	16MB

ベンチマークテストでは、1世代前のニアライン向け製品であるNL35.2と性能を比較している。記録密度向上の効果で、Sandra 2007.SP1のシーケンシャルリード／ライトでは約30％の性能アップ。ランダムアクセスのレスポンスの目安となるPCMark05 Build 110 HDD Test Suiteの各項目でも平均約7％の性能向上が見られる

大容量化のカギを握る垂直磁気記録方式

　また、本製品は最大容量で従来の1.5倍となる750GBを実現している。この大幅な大容量化や信頼性向上に貢献しているのが、ニアライン向けとして初めてとなる垂直磁気記録の採用だ。HDDの記録容量向上のための切り札として長年研究が続けられてきた重要技術だが、原理的に熱ゆらぎに強く、データの安定化が図れたことがメリットで、高温下での信頼性向上にも貢献している。2.5インチHDDのMomentus 5400.3、3.5インチHDDのBarracuda 7200.10と、Seagateは他社に先駆けてこの技術を量産化した実績があり、信頼性を考えた場合に非常に心強い。また、Barracuda ESはニアラインならではのフィーチャーとして、ドライブの温度および動作を監視し、内部の温度が上がり過ぎないようドライブが自動的にリード／ライトを最適化する「Workload Management」という機能を搭載しているのも特徴だ。

　写真や映像データのデジタル保存が一般的になった昨今、バックアップ用RAIDシステムやファイルサーバーを家庭で管理しているユーザーも少なくないだろう。そういった用途に、ニアライン向けであり、優れた温度管理機能を持つ本製品はまさに最適と言える。金銭には代えられない世界にたった一つだけの「データ」を永久的に残していくためには、ストレージの信頼性には配慮のし過ぎはないはずだ。