残像感を低減する新技術
「液晶パネルの表示映像は残像が見えやすい」という指摘がある。この残像は「液晶の応答速度が遅いから」と言われるが、今や、ほとんどの液晶パネルはフレームレート60fps(毎秒60フレーム)程度の要求応答速度には間に合っている。なのになぜ、いまだに「液晶は残像が出やすい」と言われるのか。
結論から言うと、これは液晶パネルの映像表示の仕組が「ホールド型」だからだ。ホールド型とは、次の映像を表示する直前まで前の映像を表示し続ける仕組をいう。人間の視覚では、突然映像が切り換わると、それまでに知覚していた映像が残像として残ってしまう。
ホールド型の対極に位置するのは「インパルス型」で、ブラウン管などがこれにあたる。ブラウン管の映像は一瞬だけ高輝度に描き出されるが、次の瞬間には完全に消失する。この消失動作に、残像をも消し去る効果があるのだ。
しかし、現実世界の情景は点滅していない。にもかかわらず、人間が現実世界で動くものを見ても残像を感じにくいのは、現時世界のフレームレートは無限大だからだ。この考え方を液晶の表示システムに応用して、残像を低減させようというのが「倍速駆動」技術だ。
もともと毎秒60フレームしかない映像を2倍の120fps、4倍の240fpsにするには、新たにフレームを生成しなければならない。そこで倍速駆動技術とセットで用いられるのが「補間フレーム」技術で、前後フレームとの相関関係から中間フレームを算術的に予測して生成する。
なお、LEDが蛍光管よりも桁違いに高速応答できるという特性を活かして、CRTのようなインパルス型のバックライト制御を行なう製品も登場している。こうした技術を組み合わせることで、ホールド型では避けられない残像感を格段に低減することができる。
LEDバックライトによるインパルス型表示
120フレームの倍速補間
インパルス型表示の高級機
三菱電機のVISEO MDT231WGはゲーマーを強力に意識した製品で、インパルス型表示を行なうLEDバックライトと倍速補間技術を搭載している(1月7日更新の記事に掲載)
解像感を強調する独自回路
EIZOのFORIS FS2331は、超解像とは異なるアプローチで解像感の強調を行なう「PowerResolution」を搭載し、低~高解像度のコンテンツを問わず効果がある(1月7日更新の記事に掲載)
超解像技術とは何か
東芝の液晶テレビ「REGZA」に採用されてから高画質化ロジックの一大潮流となり、最近ではPC向けディスプレイにも波及しているのが「超解像」技術だ。
現実世界の情景の解像度は無限大だが、デジタル映像となる際、カメラで撮影されるなどして、ある解像度の映像に落ち込む。逆に発想すると、今手元にあるデジタル映像はより高い解像度であったと仮定できる。撮影されたことで低解像度になったのだから、カメラによる撮影の逆変換ができれば、より高解像度に復元できるはずだ。
この発想で解像度変換を行なうのが超解像処理だ。現在実用化されている超解像技術として有名なのは「再構成型」と「自己合同性型」の2タイプだ。
超解像は時間のかかる処理であるため表示遅延が大きくなるが、PCでは表示遅延が問題になりやすいので、PC向け製品は局所的な処理だけにとどめて、表示遅延時間を最低限に抑え込んでいる。
最新トレンドが詰まった液晶ディスプレイ10製品を評価
次のページからは、ここで解説した最新キーワードを盛り込んだ弊誌オススメの液晶ディスプレイ10製品を、実売4万円台を境に高級モデル・低価格モデルに切り分けて取り上げている。
なお、検証の一環として、工場出荷値にリセットした状態でカラーキャリブレーションを実施している。得られた理想のガンマカーブに対して、工場出荷時の値を比べることで、初期状態の各社の味付けを知ることができる。同時に各製品の色域も測定できているので、製品選びの指標として利用してほしい。
X-Rite
i1 Basic
実売価格:170,000円前後
問い合わせ先:050-5807-1619(加賀電子)
URL:http://www.i1color.jp/
輝度と色温度を設定してキャリブレーションすることで、ガンマカーブ補正と色域測定が行なえる。ガンマカーブが0 縲鰀255の直線に近いほど、出力特性がリニアで安定していると考えることができる
【図版参考資料】 シャープ、東芝、三菱電機