今回、電源の性能を検証するにあたって、定格出力700W未満の製品と700W以上の製品では異なるパーツ構成で検証を行なっている。700W未満ではCore i5-750+Radoen HD 5770搭載ビデオカードというミドルレンジ構成。700W以上ではCore i7-860+GeForce GTX 480搭載ビデオカードというハイエンド構成を用意した。
各製品の解説ページにあわせて掲載している負荷テストの結果は、3DMark Vantageを最大負荷であるExtremeモードで動作させ、開始から終了までのデータを計測したもの。3DMark Vantageでは大きく分けてGPU性能を見る「Graphics Test」、CPU性能を見る「CPU Test」、GPUのテクスチャ性能などを見るための「Feature Test」があり、計測項目によって、GPUやCPUにかかる負荷が大きく変化することから、こうした変化が起きたときに安定して電圧を供給できるかなどを電圧の変動からチェックできる。
それでは実際にテスト結果をチェックしてみよう。700W未満クラスの電圧安定性ではEnermaxのPRO87+ EPG500AWTが飛び抜けて高く、ほかの製品に関しては一長一短といった印象だ。700W以上クラスではSilverStoneのStrider SST-ST75F-Pが電圧のブレが少なく、変化も小さい。そのほか、CorsairMemory CMPSU-850HXJP、Sea Sonic Electoronics Xseries SS-750KMの2製品も十分安定している。サイズの超力2ノーマル850WもATX24ピンの電圧降下幅がやや大きいが、不安定というレベルではない。
次に消費電力を見てみると、700W未満クラスでは80PLUS GoldのPRO87+ EPG500AWT、Thermaltake Toughpower Grand650Wの2製品が優秀で、順当な結果と言える。しかし、700W以上クラスでは80PLUS SilverのCMPSU-850HXJPが一番消費電力が小さいという番狂わせが起きている。次点で80PLUS GoldのXseries SS-750KM、超力2ノーマル 850Wの2製品がよい。もともと、CMPSU-850HXJPは当初80PLUS Goldで発売予定だったという経緯もあり、その効率の高さを証明した形だ。
最後に静音性を見てみよう。700W未満クラスでは、PRO87+ EPG500AWTがその効率の高さのおかげもあってか非常に優秀。次点が玄人志向 KRPW-V560WとToughpowerGrand 650Wとなる。後者はスペック上の回転数(最大1,900rpm)から考えるとかなり静かと言える。
700W以上クラスでは、ファンが回転せず実質ファンレス状態であったXseries SS750KMの結果が飛び抜けている(ただし、今回の検証はバラック状態で行なっているため、実際にケースに入れた場合はファンが回りやすくなると思われる)。また、定番の静音ファンを搭載している超力2ノーマル850Wも優秀な結果。ただ、700W以上クラスについては極端にうるさい製品はないと言える。
今回は、以上の結果に加え、各製品の品質やコストパフォーマンスまで加味して考えた結果、700W未満クラスでは静音性・安定性ともに優れ、80PLUS Gold認証電源としては最安で購入できるEnermaxのPRO87+EPG500AWTを、700W以上クラスでは1万4,000円前後という価格ながら750Wの大出力と優れた電圧安定性を備え、フルプラグインケーブルシステムを採用するSilverStoneStrider SST-ST75F-PをそれぞれGold Recommendedに選出した。
Enermax PRO87+ EPG500AWT ■ 700W未満クラス

静音性、安定性、品質の高さに加え、実売価格も80PLUS Gold認証取得製品の中では最安クラスと非常に優秀。出力は500Wと控えめだが、ハイエンドビデオカードを使わないユーザーにはあまり問題にはならないだろう。次点としては、実売価格が飛び抜けて安いわりに静音性に優れる玄人志向 KRPW-V560Wが、このクラスでは有力な選択肢となる。
SilverStone Strider SST-ST75F-P ■ 700W以上クラス

上記のPRO87+ EPG500AWTと変わらない価格ながら、750Wの大出力と高負荷環境時の安定性が秀逸な電源。プラグインケーブルの使い勝手も上々だ。次点ではやや高価ながら安定性と変換効率に優れるCMPSU-850HXJPや、コストパフォーマンスに優れる超力2ノーマル 850Wが挙げられる。価格は高いが静音性と品質を求めるならXseries SS-750KMもよい。
【検証環境】
[700W未満]
CPU:Intel Core i5-750(2.66GHz)、ビデオカード:玄人志向 RH5770-E512HD/G2(Radeon HD 5770)、
[700W以上]
CPU:Intel Core i7-860(2.8GHz)、ビデオカード:MSI N480GTX-M2D15(GeForce GTX 480)
[共通環境]
マザーボード:ASUSTeK Maximus III Extreme(IntelP55)、メモリ:Corsair Memory TR3X6G1333C9(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×3 ※2枚使用)、HDD:Western Digital WD Caviar Blue WD10EALS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版、室温:約28℃、暗騒音:32.5dB、アイドル時:OS起動5分後の値、高負荷時:3DMark Vantage実行中の最大値
電圧変動グラフの見方
電圧変化についてはグラフ上の赤線がマザーボードに接続するメインケーブルであるATX24ピン、青線がビデオカードに接続するPCI Express6ピン、茶線がCPUまわりに電力を供給するEPS12Vである。電圧グラフは3DMark Vantageの開始から終了までを計測。各テスト実行時における電圧変動を表示している。各テストの内容は以下のとおり。
[1]Graphic Test1:Jane Nash
[2]Graphic Test2:New Calico
[3]CPU Test1:AI(Merry Go Round AI Show)
[4]CPU Test2:Physics(Crash'n' Burn Physics)
[5]Feature Test1:Texture Fill
[6]Feature Test2:Color Fill
[7]Feature Test3:Parallax Occlusion Mapping
(Complex Pixel Shader)
[8]Feature Test4:GPU Cloth
[9]Feature Test5:GPU Particles
[10]Feature Test6:Perlin Noise(Math-heavy Pixel Shader)

ビデオカードをアップグレードする際には電源に注意!
最近のミドルレンジ以上のビデオカードは消費電力がCPUと比較しても大きく、ハイエンドクラスのビデオカードはPCでもっとも電力を消費するパーツと言っても過言ではない。下でビデオカード以外同一の環境での電圧安定性と消費電力を比較しているが、高性能になるにつれて、電源の負荷が高まっているのが分かる。なお、下の結果はハイエンドクラスの電源を使用した際の結果なので、安価で低出力な電源を使用しているユーザーは、ビデオカードのアップグレードの際に、電源の交換も念頭に置いたほうがよいだろう。9月には大作MMORPG「FINAL FANTASY XIV」の発売も控えているので、ビデオカードの買い換えを考えているユーザーは、電源もチェックしてみてほしい。

ハイエンドビデオカードではPCI Express 8ピンと6ピンの同時接続が要求される。購入検討時には使っている電源の端子もチェックしたい
Radeon HD 5770

GeForce GTX 460(OC版)

Radeon HD 5870

【検証環境】
ビデオカード:玄人志向 RH5770-E512HD/AC(Radeon HD 5770)、MSI N460GTX Cyclone 1G OC/D5(GeForce GTX 460)、MSI R5870 Lightning(Radeon HD 5870)、電源:Thermaltake Toughpower Grand 650W、CPU:Intel Core i7-860(2.8GHz)
[共通環境]
マザーボード:ASUSTeK Maximus III Extreme(IntelP55)、メモリ:Corsair Memory TR3X6G1333C9(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×3 ※2枚使用)、HDD:Western Digital WD Caviar Blue WD10EALS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、OS:Windows 7Ultimate 64bit版、室温:約28℃、暗騒音:32.5dB、アイドル時:OS起動5分後の値、高負荷時:3DMark Vantage実行中の最大値