PC冷却の話題で意外と忘れられがちなのがシリコングリス。グリスはCPU/GPUといった熱源と、クーラーのヒートシンクの微細な隙間をミクロン単位で埋めることによって熱伝導率を高める。グリスの熱伝導率が高ければ高いほど、より効率的にヒートシンクに熱を伝えることができるわけだ。高性能なグリスを使うと、1ランク上のクーラーに交換するほどの冷却性能を得られることもある。
グリスの性能を示す指標としてよく使われるのが物質の熱の伝わりやすさを示す熱伝導率だ。多くの製品は「W/mK」という単位で表示され、数値が大きいほど高性能ということになる。ただしこの熱伝導率は表記されていないものもある。そこで今回は人気の市販グリスを集め、同一条件下で性能テストをしてみた。テスト結果を見てもらうと分かるが、比較用の低価格モデルBB-10と比べると最大で16℃もの差が出る結果となった。現在のクーラーの冷却性能に不満のある人はぜひ一度グリスも見直してみてほしい。

Thermalright製のスタンダードグリス
- 3.5W/mk
- Thermalright
- CF3
- 実売価格:1,300円前後
- 問い合わせ先:support@scythe.co.jp(サイズ)
- URL:http://www.thermalright.com/

高性能CPUクーラーメーカーのThermalrightから販売されているグリス。本製品は3代目にあたる。ケースは注射器型で粘性は高め。初代モデルと比較すると約4℃程度冷却能力が向上したとされる。
容量:4g
純銀を含んだ定番高性能グリス
- 9.0W/mk
- アイネックス
- Arctic Silver 5
- 実売価格:1,400円前後
- 問い合わせ先:042-467-7676
- URL:http://www.ainex.jp/

純度99.9%の純銀のほか、さまざまな微粒子を組み合わせることで、密着性を高めて熱伝導率9.0W/mKを実現した高性能グリス。ケースはコンパクトな注射器型となっている。
容量:3.5g
硬化しにくいスタンダードタイプ
- 5.1W/mk
- アイネックス
- Ceramique
- 実売価格:700円前後
- 問い合わせ先:042-467-7676
- URL:http://www.ainex.jp/

長期間放置しても硬化したり、分離しないタイプのオイルを採用することで安定性を高めたグリス。素材に酸化アルミ、ボラゾン、酸化亜鉛などを超微粒子サイズで混入させ、冷却性能を高めている。
容量:2.5g
GELIDブランドのハイエンドモデル
- 8.5W/mk
- サイズ
- GELID GC-EXTREME
- 実売価格:1,200円前後
- 問い合わせ先:support@scythe.co.jp
- URL:http://www.scythe.co.jp/

GELIDブランドのフラグシップ。熱伝導率などは非公開となっているが、同ブランドの旧モデルGC1-Aと比べると冷却性能が約3、4℃程度改善されていると言う。ヘラが付属しているのも特徴。
容量:3.5g
サイズ独自の配合設定による高性能グリス
- 非公開
- サイズ
- Thermal Elixer
- 実売価格:1,400円前後
- 問い合わせ先:support@scythe.co.jp
- URL:http://www.scythe.co.jp/

同社のCPUクーラーに付属するグリスよりも5%ほど冷却性能を高めたというグリス。最大TDP 180W程度のCPUやGPUでの使用を想定して作られていると言う。
容量:3.5g
熱伝導率の高いダイヤモンドを含んだ製品
- 4.5W/mk
- 親和産業
- Innovation Cooling ICD7C
- 実売価格:1,400円前後
- 問い合わせ先:03-3488-1526
- URL:http://www.shinwa-sangyo.jp/

ダイヤモンドパウダーを約7カラット分、全体の比率で92%含む高性能グリス。ダイヤモンドは銀の406~429W/mKに対して、2,000~2,500W/mkと5倍以上の熱伝導率を誇る。
容量:1.5g
シリコングリスの塗り方(サイズ GELID GC-EXTREMEの場合)

[1]グリスを出す
グリスはCPUの中心に直接出す。大きさは小豆大くらいのサイズが目安。粘性が高いものや逆に低いものはやや少なめにしておいたほうが広げやすい

[2]ヘラで広げる
付属のヘラなどで薄く塗り広げる。CPU上からはみ出さないように注意しよう。ヘラが付属していない場合は、代用できる形状のものならば何でもOKだ


[3]完了
きれいに塗り広げられれば終了だ。ていねいに塗り広げなくても、表面積の7割程度がカバーされていれば十分だ。また、もっと手軽にやりたい場合は、左下の写真のようにCPUクーラーの底面で押し広げてそのまま固定すれば圧力で自然に広がる
【検証環境】CPUクーラー:サイズ KABUTOクーラー+Cooler Master Blue LED Silent Fan(2,000rpm)
CPU:Intel Core i7-965 Extreme Edition(3.2GHz)、マザーボード:ASUSTeK P6T Deluxe V2(Intel X58+ICH10R)、メモリ:Corsair Memory TR3X6G1333C9(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×3)、ビデオカード:玄人志向 GF8500GT-E256H/HP(NVIDIA GeForce
8500 GT)、HDD:日立GST Deskstar 7K1000.B HDT721010SLA360(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、CPUクーラー:サイズ KABUTOクーラー、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版、暗騒音:32.5dB、室温:28℃、騒音測定距離:ファンから約10cm、アイドル時の条件:OCCT Perestroika 3.1.0終了5分後の値、高負荷時の条件:OCCT Perestroika 3.1.0を40分間実行後の値、ファンコントローラ検証にはCooler Master Blue LED Silent Fan(2,000rpm)を使用