2/4/6コア環境での安定度を検証
ミドルレンジとハイエンドの2種類のビデオカードと各CPUを組み合わせ、定格出力の異なる電源ユニットを接続。ストレステストソフトにより高い負荷をかけた状態でシステム全体の消費電力を計測し+12V出力の変動を記録した。
平均して安定した結果を見せたのは600W電源で、6コアCPUも問題なく駆動可能。400Wクラスはいずれも厳しい結果。ビデオカードの利用は避けたい。
【検証環境】 CPU:Core i5-661(3.33GHz)、Core i7-870(2.93GHz)、Core i7-980X Extreme Edition(3.33GHz)、マザーボード:ASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55)、ASUSTeK P6X58D-E(Intel X58+ ICH10R)、メモリ:Corsair Memory CMX6GX3M3A1333C9(PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×3※LGA1156環境では2枚のみ使用)、ビデオカード:MSI N465GTX Twin FrozrII(NVIDIA GeForce GTX 465、ミドルレンジビデオカード環境で使用)、MSI R5870 Lightning(ATI Radeon HD 5870、ハイエンドビデオカード環境で使用)、HDD:Seagate Barracuda 7200.11 ST3320613AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、320GB)、電源: サイズ CoRE PoWER 400W(400W)、Enermax PRO87+ EPG600AWT(600W)、SilverStone Strider Plus S ST-ST1000-P(1,000W)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版●テスト内容:OCCT Perestroika 3.1.0のPower Supply Testを30分間実行し、生成された12V出力のグラフを掲載、アイドル時:OS起動から15分後の値、高負荷時:OCCT Perestroika 3.1.0 Power Supply Test 実行中の最大値
重要性を増す「EPS12V」コネクタの基礎知識
EPS12Vとは
EPS12Vはサーバーやワークステーションのための電源仕様で、Server System Infrastructure (SSI) Forumで定めていることから、「SSI EPS12V」とも呼ばれる。EPSとはEntry Chassis Power Suppliesの略称で、ExtendedATXサイズのマザーボードが収納できるサーバーとしては比較的小規模な筐体で、CPUを2個搭載するシステムに使うことを想定している。
EPS12Vの特徴 ATX12Vとの差異
ATX12V電源のCPU用+12Vの端子が4ピンなのに対して、EPS12Vのそれが8ピンとなっているのは、2CPUのシステムではCPU用電源にもっと大きな出力が求められることや、メモリ用電源としても+12Vを使う設計を推奨しているため、マザーボードに供給する+12Vの電流を増やす必要があったためだ。しかし、現在のようにCPUの消費電力が増え、オーバークロックが容易に行なえるようになってくると、1CPUのシステムでもオーバークロック動作時にはATX12V準拠の4ピン電源端子では電流が不足する場合も出てくるようになった。このため、EPS12Vと同じ8ピンのCPU用電源端子を搭載するマザーボードが増え、同時に8ピン端子を持つ電源ユニットも増えてきた。最近になってCPUの消費電力がさらに増えたことで、+12Vの8ピン電源端子を2個持ち、消費電力の大きなCPUへの対応を強化しているマザーボードおよび電源ユニットも登場している。
EPS12Vに準拠したATX電源って?
ATX12V電源仕様は現在でも+12Vを2系統持ち、定格出力450Wまでのものについて定めているが、それを超える出力系統や定格出力を持つ製品についてはとくに何も定めておらず、500Wを超えるATX電源を設計するにあたってはEPS12Vの仕様を参照することになる。
CPU用電源端子としてATX12V電源仕様が定めているのは4ピンのみであり、8ピンに拡張したCPU用電源端子を持つ電源製品は“その部分については”EPS12V電源仕様に準拠していることになる。このことから、+12Vを3系統以上持ち、CPU用電源コネクタを8ピンにしているという理由でEPS12V準拠をうたう製品は多い。
しかし、EPS12V電源仕様はATX12Vに対して、定格出力を増やし、CPU用電源端子を8ピンにしただけではなく、安定した動作がPC以上に求められるサーバーやワークステーションに供する電源であることを考慮したものとなっている。5Vsbの定格出力も強化されているし、定格出力によって求める出力コンフィギュレーションも変えてきている。騒音や効率についてはATX12Vよりは推奨基準が緩くなっている一方で、動作シーケンスはより細かく決められているし、信頼性に関する要求は厳しい。
自作PC向けでEPS12V準拠をうたう電源がそうした仕様に厳密に対応できている保証はなく、結局のところ、CPU用電源端子が8ピンとなり+12Vの出力が強化された、という程度の意味合いで使われていることのほうが多いことに注意してほしい。
マザーボード上の+12V電源コネクタの種類
ATX12V
Pentium 4の登場とともに広く普及したのがこの4ピンのATX12Vコネクタ。現在でもローエンドのマザーボードを中心にCPU電源供給用として使われている
EPS12V
マザーボードに搭載され始めた当初は、この8ピンコネクタを持つ電源が少なかったため混乱を招いた。今でも多くの製品はATX12V端子を接続するだけで動作する
EPS12V×2
ここ最近、ハイエンドマザーボードで搭載例が増えているのがこれ。主にオーバークロック時に電流に余裕を持たせるための実装と見られる
EPS12Vコネクタを2基実装したオーバークロック向けマザーボード
- GIGABYTE
- GA-X58A-UD9(rev. 1.0)
24フェーズのVRMを持ち、OC機能が充実したハイエンド製品。VRM部に隣接したEPS12Vコネクタ2基は、1基だけつないでも問題なく動作する
OC向けの設定が豊富に用意されており、CPUやチップセットの電圧などを昇圧可能。ただ、8ピン×2の電流が必要なのはごく一部の環境だろう