「静かに冷やす」
シンプルだが奥の深いパーツ
現在のCPUに付属するリテールクーラーは静音性が高く、一定以上の冷却性能も備えている。これをわざわざ交換するからにはコストに見合った性能がなくてはならないだろう。そんなCPUクーラーの中で、1万円以下の売れ筋製品をピックアップしたのが下の表だ。1万円以下としたにもかかわらず、すべての製品が5,000円以下となっており、コストパフォーマンスが重視される傾向が見受けられる。しかし、あまり価格差がないとも言えるこれらの製品の選択基準とは何だろう?
まず、ド定番のマザーボードとケースはATXタイプであるので、小型ケース向けのShurikenシリーズと刀3、SAMURAI ZZは性能面から見て、今回の企画趣旨に合わない。残りの製品は定番的な構成で、共通して12cm角以上のファン大型ヒートシンクを組み合わせている。いずれも定評のあるものばかりだが、外観やスペックだけを見て、どれがもっとも静かなのか、冷えるのかを即答することは難しい。実際、多くの自作派が口コミやランキングなどを頼りに漠然と判断して購入にいたっているはずだ。
次ページからは編集部がこれまでに得たデータから選んだ真の定番製品を紹介している。冷却能力や静音性だけでなく、取り付けやすさや送風方向、ファンコンの有無などと一緒に、どれがもっとも自分に合っているのか総合的に判断してほしい。
ミドルレンジクラスの売れ筋LGA1156対応CPUクーラー
1ファンは大きいほうが有利?
搭載するファンは、12cm角や9cm角が主流だが、さらに大型のファンを搭載したものも存在する。大型であるほど、低速回転でも風量を多く確保できるため、冷却性能と静音性を両立できるというわけだ。
2ファンの向きで選ぶ
ファンの取り付け位置は、上から吹き付ける「トップフロー」と、横に風を送る「サイドフロー」の2タイプが主だが、ケース内のエアフローによってよしあしは変わる。迷ったらトップフローが無難だ。
3ヒートパイプは一般的に
熱伝導性能を高めるヒートパイプは、もはや市販品では標準装備。コストなど、明確な理由なしに、これを搭載しない製品を選ぶのは避けたい。最近ではヒートパイプが直接CPUに接触するタイプに注目だ。
- LGA1156対応
- トップフロー
- PWM
- ピン止め
- 12cm角
サイズ
KABUTOクーラー
実売価格:3,000円前後
問い合わせ先:support@scythe.co.jp URL:http://www.scythe.co.jp/Specification
対応ソケット:LGA775/1156/1366、Socket478/754/939/940/AM2/AM3
ファン:12cm角(0~1,300rpm)
本体サイズ(W×D×H):124×133×132mm
重量:730g
抜群のコストパフォーマンスを誇る定番トップフローモデル
同社の大人気製品「ANDY SAMURAI MASTER」の後継として登場したモデル。搭載ファンを変更したり、ヒートシンクを従来より効率のよい構造にしたりするなど、各部で性能向上の工夫が見られる。3,000円前後という低価格ながら、冷却能力や静音性のバランスが高いレベルで取れている点が魅力だ。取り付け具は、リテールクーラーと同様のプッシュピンを使用するタイプなので、マザーへの固定で悩むことはないだろう。しかし、ヒートシンクが大型なこともあり、使用するPCケースによってはマザーボードをケースから取り外さないと、ピンやクリップに指が届かない場合がある。
テスト結果を見ても、冷却能力、静音性ともに優秀だ。リテールクーラーと比べて、CPU温度は高負荷時で20℃も低い。静音性も今回取り上げている5製品の中でもトップクラスだ。初めてクーラーを交換する入門向けとしてはもちろん、安価にクーラーのアップグレードに取り組みたいという人にお勧めの製品だ。
本命のワケ
- ロングセラー「ANDY」の後継モデル
- お手頃価格で静音性と冷却性能を両立
- スタンダードなプッシュピン式固定
欠点が少なく、コストパフォーマンスの高さも魅力的。初心者にもお勧めだ。固定方法は標準的という意味で3点としたが、大型ヒートシンクなりの難点はある。
リテールクーラーと同形状の固定ピン
各ソケットに対応した取り付け具を、ヒートシンクの背面にネジ止めして使用。Intel、AMD両メーカーのリテールクーラーと同様の固定機構だ
メモリとの干渉には注意を
CPU周辺も覆うトップフロータイプ。ヒートパイプが突き出しているため、背の高いヒートシンクを装備したメモリを使う場合は、クーラーの取り付け向きに注意したい
性能からすると意外に普通の接触面
CPUとの接触面は一般的な構造で、しっかり研磨されているというわけでもない。ヒートシンク自体の寸法は大きく、しっかり放熱できそうだ
【検証環境】CPU:Intel Core i5-750(2.66GHz)、マザーボード:ASUSTeK MaximusⅢ Formura(Intel P55)、ビデオカード:Sapphire HD5450 1G DDR2 PCI-E HDMI/DVI-I/VGA(ATI Radeon HD 5450、ファンレス仕様)、メモリ:Corsair Memory CMX4GX3M2A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×2)、HDD:Seagate Barracuda 7200.12 ST31000528AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit 版
【検証内容】CPU温度はLavalysmの「EVEREST Ultimate Edition v5.50」にて計測。OSが起動してから5分後の温度を「アイドル時」、4コアを同時に使って円周率の計算をする「Hyper PI 0.99b」を実行し、400万桁(4M)の計算が終了した直後の温度を「高負荷時」とした。それぞれの温度は、「センサー」項目の「CPU #1/コア #1」「同#2」「同#3」「同#4」に表示された数値の平均値。マザーボードは「マザーボード」に表示された数値を記載している。動作音はCPUクーラーから20cm離れた位置で測定。環境温度25℃、暗騒音32dB