その他の特集(2011年) | |||
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TEXT:鈴木雅暢 | ||||||||||||||
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さて、このLGA1156版Core i7/i5は、同じNehalemアーキテクチャを採用しているだけあって、LGA1366版のCore i7と共通点が多い。しかし、Bloomfieldはマルチソケットのサーバーユース向けに設計されたものをコンシューマ向けに転用したという性格が強かったが、Lynnfieldではよりコンシューマに最適化された仕様となっており、重要な変更点が数多くある。 CPUのコア部分に関しては、LGA1366版Core i7と完全に共通と言ってよい。一つのダイに四つのコアを内蔵するネイティブクアッドコアであり、各コアに256KBの2次キャッシュと4コアで共有する3次キャッシュを統合している。また、電力や温度などを監視し、余裕がある場合にクロックを上昇させる「Intel Turbo Boost Technology」、Core i7では、OSに対して4コアを8コアに見せかけることで8スレッドを同時に取り込んで処理を効率化する「Hyper-Threading」もサポートしている。これらの機能については後のページで詳細な解説と検証を行なっているが、Turbo Boostの上昇幅はLGA1366版Core i7よりも大きくなっており、基本動作クロックが同じならばLGA1156版のほうがパフォーマンスが高いという場面も出てくるだろう。 CPU内にメモリコントローラを内蔵する点もLGA1366版Core i7と同じだが、トリプルチャンネルのDDR3-1066に対応するLGA1366版Core i7に対し、LGA1156版Core i7/i5ではDDR3-1333のデュアルチャンネルに対応する。チャンネルは一つ減ったが、より高速なメモリに対応しているため帯域では21.2GB/sと、LGA1366の25.6GB/sに対してもそれほど見劣りしない。LGA775のCore 2シリーズではメモリコントローラはチップセットに内蔵されているが、これに対するアドバンテージは明白だ。メモリアクセスの際にシステムバス、チップセットを経由するロスが発生しないため、実効性能では対応メモリのスペック差以上の大きな上昇となる。 さらに大きな違いは、従来チップセットがになっていたPCI Express 2.0コントローラを内蔵していることだ。つまり、メモリだけでなく、ビデオカードすらも外部のICを経由せずにCPUに直結する構造となったわけだ。対応レーン数は16レーンで、8レーン×2として使うこともできる。これはSLIやCrossFireXなどのマルチGPU技術に対応するためである。 この変更を受けて、LGA1156プラットフォームではシステムのスタイルが大きく変わっている。従来のPCシステムのチップセットはNorth BridgeとSouth Bridgeの2チップ構成を採ってきており、Intelではそれぞれの機能からMCH(Memory Controller Hub)、ICH(I/O Controller Hub)などと呼称している。しかし、LGA1156プラットフォームではメモリコントローラに続いてビデオカード用のPCI Expressコントローラと、従来チップセットが持っていた機能を統合したことで、North Bridge(MCH)の存在そのものが不要になっており、チップセットは従来のSouth Bridge(ICH)相当の機能を持つ1チップのみとなっており、IntelではこれをPCH(Platform Controller Hub)と呼んでいる。 なお、LGA1156プラットフォームにおいては、CPUとチップセットの間のシステムバスは、従来North BridgeとSouth Bridgeの接続に使われていた帯域2GB/s(片方向1GB/sの上り下り)のDMI(Direct Media Interface)が使われる。LGA775/1366とLGA1156では、システムバスが意味している部分はまったく違うので、単純な速度比較は意味を持たないことに注意してほしい。 |
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Core 2 Quad | ||||||||||||||
アーキテクチャの特徴 デュアルコアのダイを二つ内蔵 キャッシュ構造は2段階 チップセットとFSBで接続 |
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LGA1366版Core i7 | ||||||||||||||
アーキテクチャの特徴 3段階のキャッシュ構造 メモリコントローラを内蔵 チップセットとQPIで接続 |
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LGA1156版Core i7 | ||||||||||||||
アーキテクチャの特徴 3段階のキャッシュ構造 メモリ/PCI Expressコントローラを内蔵 チップセットとDMIで接続 |
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気になる消費電力もLGA1366に比べて大幅に低くなっている。TDPは95Wで、これはLGA1366版Core i7の130Wより低く、Core 2 Quadのレギュラーモデルと同じである。しかし、これは統合したNorth Bridge分も含めた消費電力であり、CPU機能単体では実質的にNorth Bridgeの分、より低消費電力となっていると言える。P45チップセットのTDPは22Wなので、単純計算ではTDP 73Wと、Core 2 Quad Sシリーズ(TDP 65W)に迫る。性能を考えると電力効率は驚異的と言ってよい。 これほどの低消費電力をどのように実現したのかについてIntelから説明はとくにないが、メモリコントローラのチャンネル数が削減されていることに加え、回路マスクの改良による最適化、低電圧駆動などが考えられる。また、アイドル時にクロックと電圧を下げる「C1E」や負荷状況に応じてクロックと電圧を上下させる「EIST(Enhanced Intel SpeedStep Technology)」が改良されていることも大きいだろう。LGA1366版Core i7の最低クロックが1.6GHzであるのに対し、LGA1156版では1.2GHzまで下げる。実際にCore i7-870の消費電力を同クロックのLGA1366版Core i7-940と同一環境で比較してみた結果、アイドル時や低負荷時ではとくに電力消費が少なく、3/4以下の消費電力だった。 以上のように、LGA1156版のCore i7/i5は、LGA1366版Core i7に匹敵する優れたパフォーマンスを備えながらも、グッと低消費電力となり、扱いやすくなっている。さらに価格設定もかなり戦略的だ。最上位モデルのCore i7-870こそ実売6万円前後と割高だが、Core i7-860は3万円前後。Core i5は2万円前後とCore 2 Quadの売れ筋モデル以下に設定されている。メインストリームとして普及する条件を整えており、今後のCPU市場の勢力図は大きく変わる可能性がある。次ページから行なっていく性能や機能の検証もぜひ注目して見てほしい。 |
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LGA1366版Core i7-940 アイドル状態でのCPU-Zの表示。C1E/EISTが機能し、動作クロックが1.6GHz(ベースクロック133MHz×12)に下がっているのが分かる |
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LGA1156版Core i7-870 同じくアイドル状態だが、動作クロックは1.2GHz(133MHz×9)に下がっている。LGA1366と比べると、動作電圧も低くなっている |
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消費電力の比較 LGA1156版Core i7-870の消費電力は動作クロックが同じLGA1366版Core i7-940と比べて低い。ほぼ同性能だけに電力効率は驚異的 |
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【検証環境】 [LGA1366環境] マザーボード:Intel DX58SO(Intel X58+ICH10R) メモリ:OCZ Technology OCZ3P1333LV3GK(PC3-10600 DDR3 SDRAM、1GB×3) [LGA1156環境] マザーボード:GIGABYTE GA-P55-UD3R(rev. 1.0)(Intel P55) メモリ:Corsair Memory CMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM、2GB×2) [共通環境] ビデオカード:MSI N285GTX-T2D1G-OC(NVIDIA GeForce GTX 285) HDD:Western Digital WD Caviar Black WD1001FALS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB) OS:Windows Vista Ultimate SP2 |
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