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TEXT:鈴木雅暢 |
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アップグレード編 |
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パーツのアップグレードは自作PCの大きな魅力の一つだが、異なる世代のパーツの組み合わせとなると制限も多く、トラブルに遭遇しやすい。ここでは、アップグレードに関するトラブルや疑問点をまとめてみた。 |
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パフォーマンス向上のための特効薬とも言えるのが、CPUのアップグレード。ソケットが互換性の目安にはなるが、ソケット形状が同じCPUがすべて使えるとは限らない。Pentium DとCore 2 Duoは同じLGA775だが、電気的な仕様が大きく異なるために、Core 2 Duo登場以前に販売されていたマザーのほとんどはCore 2 Duoを利用できない。また、最近で言えばシステムバス1,333MHzのCore 2 Duoは、システムバス1,333MHzに対応したP35/G33などのIntel 3シリーズ、またはNVIDIAのnForce 680iシリーズなどでしか利用できないので注意が必要だ。

もっとも、電気的な仕様が同じであれば、BIOSアップデートなどで対応できることもある。実際、P965やG965など公式にはシステムバス1,066MHzまでにしか対応していないチップセットを搭載している製品でもメーカーが独自で対応BIOSを用意し、システムバス1,333MHzへの対応をうたっている製品は少なくない。購入前にはよく調べておこう。 |
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Core 2 Duo
お買い得感が高いシステムバス1,333MHzのCore 2 Duo。旧世代のマザーボードでもメーカーが独自で対応している製品は少なくないので、Webサイトなどでチェックしたい |
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Athlon X2
TDP 45Wの低消費電力と低価格が魅力の新ブランド「Athlon X2」。ソケット形状は従来と同じくSocket AM2だが、マザーボードのBIOSが対応していないと正常に認識されない場合がある |
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P35
最新世代のIntelチップセット“3”シリーズの主力であるP35は、システムバス1,333MHzに対応するのが大きな特徴。ICHの機能も強化されている |
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P965
1世代前のP965はシステムバス1,066MHzまでの対応で、本来1,333MHzのCore 2シリーズは利用できない。ただ、メーカーが独自で対応をうたっているマザーボードは少なくない |
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Intel CPUのチップセット対応表 |
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コア数 |
デュアルコア |
システムバス |
800MHz(Core 2 Duo E4500など) |
1,066MHz(Core 2 Duo E6700など) |
1,333MHz(Core 2 Duo E6850など) |
Intel P35/G33 |
○ |
○ |
○ |
Intel P965/G965 |
○ |
○ |
× |
Intel 945P/945G |
○※ |
○※ |
× |
NVIDIA nForce 680i SLI |
○ |
○ |
○ |
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コア数 |
クアッドコア |
システムバス |
1,066MHz(Core 2 Quad Q6700など) |
1,333MHz(Core 2 Extreme QX6850など) |
Intel P35/G33 |
○ |
○ |
Intel P965/G965 |
○ |
× |
Intel 945P/945G |
× |
× |
NVIDIA nForce 680i SLI |
○ |
○ |
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※Core 2シリーズ登場前に発売された945P/G搭載マザーボードの多くはCore 2非対応 |
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ヒートパイプ式CPUクーラーの装着には正しい向きがある? |
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CPUクーラーの交換は、冷却強化や静音化に効果があり、またビジュアル的なアクセントとしても楽しめるなど、手軽で実用的なアップグレードと言える。最近の人気製品はほとんどがヒートパイプを採用したものだが、ヒートパイプはその性質上、設置する向きによって効果が変わってくることはご存じだろうか。

ヒートパイプのメリットは小さい温度差でも高速な熱輸送ができること。内部に封入された作動液(代替フロンなど)が加熱部で気化されて冷却部に移動し、冷却部で液体化、さらに毛細管現象(液体が重力などに関係なく狭い隙間に入り込んでしまう現象)などによって加熱部へ戻り、再び気化される……ヒートパイプの高速な熱輸送はこの液体←→気体の循環によって成り立っており、この循環がスムーズになればなるほど、より高速に熱輸送ができる(=より冷却能力が高くなる)。液体が加熱部へ戻る際には、毛細管現象により重力に依存せずに移動できるようになってはいても、重力の助けがないよりもあったほうがスムーズになるのは明らか。つまり、ヒートシンクやファンが装着されている冷却部は、CPUに密着している加熱部よりも高い位置に来るよう設置するのが望ましいわけだ。実際の製品の説明書などにも、推奨の取り付け向きが記載されている。物理的な制約がある場合は仕方ないが、取り付ける方向が選べる製品はできるだけその方向に装着するように心掛けよう。

もっとも、ヒートパイプの熱輸送能力を左右するのは重力だけではない。熱は温度の高いところから低いところへ移動する性質があり、この温度差が大きいほうが高速に熱輸送ができる。冷却部のエアフローを最適化することも、高い熱輸送能力の維持にとって重要だ。ケースの外に向かってスムーズな空気の流れができるような設置が望ましい。 |
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サイズ「鎌クロス CPUクーラー」の場合 |
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ヒートパイプが交差するユニークな形状が鮮烈な印象を与えるサイズの「鎌クロス」。説明書にはこのようにパイプがマシンの底面に対して水平になるような向きで取り付けるよう推奨されている |
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このような方向だと、ヒートパイプは重力の影響を受けやすくなり、冷却効率がやや落ちる |
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サイズ「刀2クーラー」の場合 |
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刀2クーラーの場合、マニュアルによるとヒートパイプの向きは意識しなくてもよいようだ。そのため、ケース内のエアフローが最適になるようにファンの向きを優先する。写真は電源ユニットからの排気を優先する場合 |
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これはケース背面のファンからの排気を優先する場合。このような向きにするとVRM部にもスムーズに風が当たる |
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ヒートパイプの数
同じ性能のパイプなら本数は多いほうが熱輸送力は大きいと言えるが、ヒートパイプの能力は内部構造によって大きく変わってくるため、異なる製品間で単純な比較はできない |
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理想的なエアフロー
ヒートパイプは発熱部と冷却部の温度差が大きければより高速で熱移動ができ、効率的な放熱ができる。そのため、ケース全体で見てスムーズな空気の流れができることがCPUクーラーの性能を向上させることにもつながる |
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