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TEXT:鈴木雅暢 |
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AMD CPUの基礎知識 |
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怒濤の低価格攻勢により市場での存在感がアップ! |
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IntelのライバルであるAMDは、Core 2 Duoの登場以来、市場では苦しい立場に立たされていた。主力のデュアルコアCPUであるAthlon 64 X2は当初より性能と消費電力のバランスの取れたCPUとして定評があったが、高性能モデルでは消費電力が高くなるなど、Core 2 Duoとの比較ではどうしても見劣りする部分が残り、Core 2 Duoの牙城を崩せずにいた。5600+、6000+といった上位モデルの投入による最高性能の引き上げ、プロセスルールの65nm化などによる省電力化を進めて対抗するも、評価を完全に覆すまでにはいたらず、停滞感は否めなかった。

それを打破したのが、2007年の初めから行なわれてきた怒濤の価格攻勢。Intelの価格改定を受けてさらに加速し、気付けばAthlon 64 X2 3600+が9,000円強、最上位の6000+も3万円前後と、きわめて手頃で買いやすくなっている。とくに低消費電力のデュアルコアCPUであるAthlon 64 X2 3600+の実売価格が1万円を切った事実は衝撃的と言ってよく、ユーザーの視線を再び、AMD CPUに向けさせるには十分なインパクトがあった。

AMD CPU向けのマザーボードは、グラフィックス機能統合型チップセットを搭載した製品を含めて1万円前後の低価格帯の製品が充実しており、デュアルコアCPUを搭載した高性能なPCをローコストで手軽に作れるという、自作派にはたまらない状況だろう。 |
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AMD64アーキテクチャは、メモリコントローラをCPUに内蔵しているためシステムバスの帯域がボトルネックにならない構造が特徴 |
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AMDがエンスージアスト向けに提唱するQuad FXは、Socket Fのデュアルソケットが前提。そのポテンシャルはそうとうなものだ |
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後に控えるPhenomブランドが低価格攻勢を後押し? |
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近い将来の動向に関しては、すでにAMDから次世代ブランド「Phenom」が発表されている。主力となるのは、クアッドコアの「Phenom X4」およびデュアルコアの「Phenom X2」で、Pehnom X4は、1ダイでクアッドコアを実現した「ネイティブ・クアッドコア」。PhenomブランドのCPUに共通する大きな特徴として、浮動小数点ユニットの128bit化と共有3次キャッシュの実装などがあり、非常に楽しみな仕様となっている。Athlon 64 X2の低価格攻勢の背景には、この新ブランドの存在があったことも大きいと思われる。もっとも、当面の主力がAthlon 64 X2であることには変わりない。 |
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Athlon 64 FX-7xシリーズ |
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Quad FXはSocket AM2とは互換性のないSocket Fの2ソケット構成を採るのが最大の特徴で、二つのCPUはHyperTransportリンクで直結される。販売価格は2個セットとしては格安なものの、トータルで見ればやはり高価だ |
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CPU |
周波数 |
コア数 |
システムバス |
Athlon 64 FX-74(2個セット) |
3GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 FX-72(2個セット) |
2.8GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 FX-70(2個セット) |
2.6GHz |
2 |
2,000MHz |
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CPU |
2次キャッシュ |
実売価格(前後) |
Athlon 64 FX-74(2個セット) |
2MB×2 |
105,500円 |
Athlon 64 FX-72(2個セット) |
2MB×2 |
79,500円 |
Athlon 64 FX-70(2個セット) |
2MB×2 |
73,500円 |
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Athlon 64 X2 |
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AMDのメインストリーム向けデュアルコアCPU。Core 2シリーズ登場後苦戦を強いられていたが、65nmプロセスルールの導入、高クロックモデルの投入などでポテンシャルを高めるとともに、思い切ったプライスカットを断行。コストパフォーマンスの高さから市場での存在感を取り戻している |
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CPU |
周波数 |
コア数 |
システムバス |
Athlon 64 X2 6000+ |
3GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 5600+ |
2.8GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 5400+ |
2.8GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 5200+ |
2.6GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 5000+(65W) |
2.6GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 4800+(65W) |
2.5GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 4600+(65W) |
2.4GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 4400+(65W) |
2.3GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 4200+(65W) |
2.2GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 4000+(65W) |
2.1GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 3800+(65W) |
2GHz |
2 |
2,000MHz |
Athlon 64 X2 3600+(65W) |
1.9GHz |
2 |
2,000MHz |
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CPU |
2次キャッシュ |
実売価格(前後) |
Athlon 64 X2 6000+ |
1MB×2 |
30,000円 |
Athlon 64 X2 5600+ |
1MB×2 |
23,500円 |
Athlon 64 X2 5400+ |
512KB×2 |
25,500円 |
Athlon 64 X2 5200+ |
1MB×2 |
21,000円 |
Athlon 64 X2 5000+(65W) |
512KB×2 |
21,000円 |
Athlon 64 X2 4800+(65W) |
512KB×2 |
17,000円 |
Athlon 64 X2 4600+(65W) |
512KB×2 |
15,500円 |
Athlon 64 X2 4400+(65W) |
512KB×2 |
15,500円 |
Athlon 64 X2 4200+(65W) |
512KB×2 |
13,500円 |
Athlon 64 X2 4000+(65W) |
512KB×2 |
13,000円 |
Athlon 64 X2 3800+(65W) |
512KB×2 |
10,500円 |
Athlon 64 X2 3600+(65W) |
512KB×2 |
9,000円 |
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まずは総合ベンチマークをチェック!! |
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Webブラウズやファイル圧縮など日常的な作業の快適性をテスト |
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CPUのもっとも基本的な要素である性能の把握は、CPUの優劣を判断する上で非常に重要と言える。CPUも用途によって得手不得手があり、性能を一つの指標のみで判断するのは危険だ。複数の観点から評価する必要がある。まずは日常的なオペレーションの快適さに影響する基本性能の比較を見てみよう。

PCMark05は、Webブラウズやファイルの圧縮/展開、暗号/復号化といった、PC上でよく行なわれる日常的な作業をシミュレートしてスコアを出すテストだ。一般作業時の快適性をおおまかに比較するのに適している。ここでは総合スコア(PCMark)と、CPUスコア(CPU Test Suite)を掲載している。前者はPC全体の総合的な指標を示すため、CPUよりもHDDやGPUの影響が大きいテストも含まれており、後者はCPU性能への依存度が高い処理内容を集め、比較的CPUへの負荷が高い内容でもある。

結果だが、同一価格帯ということで、Core 2 Duo E6600とAthlon 64 X2 6000+の比較をしてみると、見事にPCMark、CPUスコアともにほぼ互角。ただ、下のクラスではAMDのほうが全体的に有利だ。また、クアッドコアCore 2 Quad Q6600とCore 2 Duo E6600の性能差は、PCMarkで約11%、CPUスコアで約26%となっている。価格差を考慮するといかにももの足りないが、現在のアプリケーション環境ではクアッドコアのメリットをまだ十分に活かし切れていないことを考慮すれば、悪くない。

また、下のグラフでは、CPUスコアと5月中旬の実売価格をもとに算出した「CPインデックス」という独自の指標により、コストパフォーマンスの比較を行なった。数値が高いほどコストパフォーマンスが高いことを示している。具体的な計算方法は欄外に記載しているが、操作に支障をきたすほど性能が低くても、価格さえ安ければよい数値が出てしまう問題を考慮して、単純にスコアを価格で割らず、基準スコアを設定して補正した改定スコアをもとに算出している。これによれば、現時点ではAthlon 64 X2 5000+がもっともお買い得なCPUと言える。 |
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【ベンチマーク環境】

マザーボード:[LGA775環境]GIGABYTE GA-965P-DQ6 Rev2.0(Intel P965+ICH8R)
[Socket AM2環境]GIGABYTE M59SLI-DSS5(NVIDIA nForce 590 SLI)
メモリ:センチュリーマイクロ CD1G-D2U800(PC2-6400 DDR2 SDRAM 1GB)×2、
ビデオカード:ASUSTeK EAX1650PRO SILENT GE/HTD/256M(ATI Radeon X1650 PRO)
HDD:Seagate Barracuda 7200.9 ST3160811AS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、160GB)
OS:Windows Vista Ultimate |
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※CPインデックスは、改定スコア÷実売価格×20,000(調整係数)で求めている。数値は2万円あたりの改定スコアということになる。改定スコア(y)の算出方法:CPUスコア(χ)が基準スコア5,500に満たない場合は、y=χ+(χ-5500)。5,500以上ならば、y=χ+1.5(χ-5500)。基準スコアを5,500としているのは、PCMark05リリース時(2005年6月)にFuturemarkが当時のハイエンドPCのスコアとして5,500を想定しているため |
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中堅クラスで光るAthlon 64 X2

Core 2 Duo E6600、Athlon 64 X2 6000+という売れ筋クラス対決はほぼ互角だが、CPインデックスの値からも分かるように、中堅以下の同価格帯ではAthlon 64 X2のほうがお買い得。 |
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