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TEXT:鈴木雅暢 |
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高性能かつ低発熱を実現 |
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Core 2 Duo |
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TDPが65WとPentium D 960の半分に!
パフォーマンスも大幅アップ! |
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CPUソケットはPentium D同様のLGA775を利用 |
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CPU-Z(V1.35)でのCPUID表示。EM64T(=Intel 64)のほかにSSE4のフラグが立っているが、原稿執筆時点で正式な情報は公開されていない。追加命令があるのかは不明だ |
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従来の固定観念を打ち破るエポックメイキングなCPU |
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Core 2 Duoは、これまでのPentium Dに代わってデスクトップPC向けのメインストリームをになう、新しいデュアルコアCPUだ。開発コードネーム「Conroe」の名で呼ばれていたもので、新しいCoreマイクロアーキテクチャの採用により、Pentium Dに比べて大幅な性能向上を果たすとともに、消費電力も大幅に下げているのが大きな特徴。従来の枠組みには収まらない、突出した電力効率を誇る。

Core 2 Duoのラインナップは、すべてのモデルが一つのCPUの中にコア(演算を行なう部分)を二つ内蔵するデュアルコアCPU。レギュラーモデルがE6700(2.66GHz)からE6300(1.86GHz)の4モデル。そしてCore 2 Duo E6700のさらに上位には、従来のPentium XEに相当するフラグシップとして、Core 2 Extreme X6800(2.93GHz)が用意されている。Core 2 Duoはプロセッサ・ナンバが「E」で始まり、Core 2 Extremeは「X」で始まるのが特徴だ。なお、Core 2 Extreme X6800は、Core 2 Duoの最上位モデルE6700よりも動作クロックが266MHz高い以外、機能的な差別点はとくに用意されていない。 |
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対応するCPUソケットはPentium D同様、LGA775だ。ただし、VRMまわりの仕様により、現行のIntel 945シリーズ搭載マザーでは非サポート |
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消費電力はPentium Dの1/2 リテールクーラーも静音化 |
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CPUパッケージは、従来のPentium 4/Dと共通のLGA775を採用する。チップセットも基本的には共通のものが使えるが、VRMまわりの仕様がアップデートされている関係で、マザーボードの設計要件は変化している。このため、これまでPentium 4やPentium Dを使っていた方がリプレースする場合、基本的にはマザーボードの買い換えが必要になる。

CPUとチップセットとの間のシステムバスは、従来のPentium Dの800MHzから1,066MHzに拡張され、チップセットやメモリと、より高速にデータのやり取りができるようになっている。2次キャッシュは二つのコアで共有するタイプで、E6400以下が2MB、E6600以上が4MBとなっている。また、EDB(Execute Disable bit)、64bit拡張技術のIntel 64(旧称EM64T)に対応。省電力機能として、負荷に応じて動作クロックと動作電圧を調整するEIST(Enhanced Intel SpeedStep Technology)もサポートする。これによりアイドル時は1.6GHzまで下がる。

消費電力の目安を示すTDP(熱設計電力)は、Core 2 Extreme X6800で75W、Core 2 Duoで65W。Pentium Dでは940以下のモデルでは95Wだが、950以上およびPentium XEでは130Wとなっており、Core 2 Duoの65Wはそれと比べると半分であり、大幅な省電力化に成功していることが分かる。

発熱は消費電力に比例するので、消費電力が減れば発熱も減ることになる。それを分かりやすく示しているのが、リテールパッケージに付属するCPUクーラーの仕様。一見、似たような外観となっているが、Pentium Dのクーラーのファンは定格電力がDC12V/0.42Aだったのに対し、Core 2 Duo付属のファンは見た目にもフィンが小さく、定格電力はDC12V/0.12Aと、低馬力/低回転速度になっている。実際、フル回転で利用してみると、体感ではっきり分かるほどCore 2 Duoのクーラーは静かになっている。 |
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CPUの高速化手法を極端に単純化すると、クロックそのものを高速化するか、1クロックあたりの性能を上げるかの2種類しかない。Pentium 4/Dが採用していたNetBurstマイクロアーキテクチャの設計思想は前者。パイプラインは最大20段だ |
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1サイクルで処理できる命令数を増やしたCoreマイクロアーキテクチャ。デコーダは四つだが、特定の命令を組み合わせるマクロフュージョンにより、最大5命令を同時に処理できる |
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ラインナップ表 |
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動作クロック |
コア数 |
2次キャッシュ |
システムバス |
Intel 64 |
Core 2 Extreme X6800 |
2.93GHz |
2 |
4MB |
1,066MHz |
○ |
Core 2 Duo E6700 |
2.66GHz |
2 |
4MB |
1,066MHz |
○ |
Core 2 Duo E6600 |
2.4GHz |
2 |
4MB |
1,066MHz |
○ |
Core 2 Duo E6400 |
2.13GHz |
2 |
2MB |
1,066MHz |
○ |
Core 2 Duo E6300 |
1.86GHz |
2 |
2MB |
1,066MHz |
○ |
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EIST |
TDP |
製造プロセス |
予想実売価格 |
Core 2 Extreme X6800 |
○ |
75W |
65nm |
130,000円前後 |
Core 2 Duo E6700 |
○ |
65W |
65nm |
68,000円前後 |
Core 2 Duo E6600 |
○ |
65W |
65nm |
41,000円前後 |
Core 2 Duo E6400 |
○ |
65W |
65nm |
30,000円前後 |
Core 2 Duo E6300 |
○ |
65W |
65nm |
25,000円前後 |
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NetBurstの誤算とCoreマイクロアーキテクチャ |
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Core 2 Duoの高性能、低消費電力の秘密は、新しい「Coreマイクロアーキテクチャ」の採用にある。CPUの性能は、「1サイクルあたりの処理性能×動作クロック」という単純なかけ算で表わすことができる。つまりはCPUの高速化手法を極端に単純化すると、1クロックあたりの性能を上げるか、クロックそのものを高速化するか、の2種類しかないわけだ。Pentium 4/Dが採用していたNetBurstマイクロアーキテクチャの設計思想は後者。とにかく動作クロックを高速化しやすい構造とし、動作クロックを上げることでパフォーマンスを稼ぐことを目指していた。しかし、動作クロックを上げれば消費電力は大きくなる。この思想は「プロセスルール(半導体の配線間隔)が縮小されると消費電力も低くなる」という前提のもとで成り立つものであったが、0.18μmから0.13μmへ、0.13μmから90nmへと、プロセスルールの縮小には成功したが、リーク電流(トランジスタのスイッチがOFFのときに流れてしまう、本来流れないはずの電流のこと)の増大が表面化。リーク電流による誤動作を防ぐためには抵抗値を上げるしかなく、抵抗値を上げれば動作に必要な電圧は上がる。Intelではこのリーク電流の対策が遅れたために、アテにしていたプロセスルールの縮小による低消費電力化が得られず、NetBurstマイクロアーキテクチャのCPUは本来想定したような高クロックも達成できず、常に高消費電力、高発熱に悩まされることになってしまった。

Coreマイクロアーキテクチャでは、半導体製造技術の現状を踏まえてクロック至上主義を見直し、電力効率とのバランスを重視しつつ、クロックあたりの性能を高めるアプローチへとシフトしている。モバイル向けCPUであるPentium MのBaniasアーキテクチャ、そしてその後継のCore Duoで採用されたYonahコアの流れを継承しつつも、アグレッシブに発展させたものとなっている。 |
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左がCore 2 Duo付属のCPUクーラー。右がPentium D付属のもの。ヒートシンクは前者のほうが厚いが、ファン部分は簡素になっている |
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上がCore 2 Duoリテールパッケージ付属のCPUクーラー。下がPentium D付属のクーラー。ファン駆動の定格電力が1/3以下に減っている |
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Intelが絶大なる自信を持ってアピールするこのCoreマイクロアーキテクチャは、右に示したように五つの柱から成り立っている。一つ一つ解説していこう。

「ワイド・ダイナミック・エグゼキューション」は、CPU内部処理の並列性を高めるテクノロジ。Pentium Pro(P6)以来、これまでは1サイクルあたりの処理性能を上げるため、CPUの内部でx86命令を内部命令に変換し、並列に実行するスーパースカラという構造を採ってきた。CISCであるx86命令はデコーダによりRISC風の内部命令(μOP)に変換され、命令実行パイプラインの中で、複数の命令を並列してアウトオブオーダー実行(プログラムに記述された順序とは異なる順番で実行すること)される。この基本構造自体はPentiumIIIもPentium 4もAthlon 64も変わらない。

Coreマイクロアーキテクチャの目玉の一つであるワイド・ダイナミック・エグゼキューションでは、x86命令を解釈し内部命令へと変換するデコーダを四つへと増加するとともに、パイプラインを4本に拡張。さらに、特定の条件を満たした二つのx86命令を一つの命令として扱う「マクロ・フュージョン」も導入し、x86命令換算でさらにもう1命令の同時実行を可能にした。つまり、1サイクルで実行できる命令の数(x86命令換算)を、従来の三つから最大五つへと増やしたわけだ。なお、Pentium MのBaniasアーキテクチャでは、二つの内部命令を一つにまとめる「μOpsフュージョン」によりパイプラインのリソースを増やすことなく、パイプライン内の実効的な命令数を増やしているが、Coreマイクロアーキテクチャでも引き続き、フュージョン可能な命令を増やして採用されており、さらにプラスαの効果となっている。

「アドバンスド・デジタルメディア・ブースト」は、マルチメディア系ソフトでは標準装備となったSSE系命令の実行速度を加速するテクノロジ。SSE系命令は、128bitのレジスタに格納した複数の8~64bitのデータに対しての演算を、1命令ですべてのデータに対して実行できる。これまでは実際の処理は2クロックに分けて実行していたが、ALUを128bit化したことにより、128bitレジスタを利用するSSE系命令を1クロックで実行できるようにした。
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最大5命令を同時に実行可能 |
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x86命令を内部命令(μOPs)に変換するデコーダを四つに増やすとともに、特定のx86命令を一つにまとめるマクロフュージョンを実装。x86命令換算で最大5命令の同時実行を可能にした |
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マルチメディア系の処理も高速に |
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128bitレジスタを使ったSSE系命令の演算は、従来64bitずつに分けて2サイクルで処理していたが、実行ユニットを128bitに拡張することにより、1サイクルでできるようにした |
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Core マイクロアーキテクチャの新機能 |
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1 |
ワイド・ダイナミック・
エグゼキューション |
同時処理命令数を従来の3命令から4命令へ拡張。二つのx86命令を一つにまとめるマクロフュージョンにより最大5命令同時実行可能とした |
2 |
スマート・メモリー・アクセス |
プリフェッチャを大幅に強化したほか、予測機能を持った投機的なメモリ読み出し機能を実装し、メモリレイテンシの影響を最小限に |
3 |
アドバンスド・
デジタルメディア・ブースト |
ALUを128bitに拡張することにより、従来64bitずつ2サイクルで処理していた128bitのSSE系命令を1サイクルで処理できるようにした |
4 |
アドバンスド・スマート・キャッシュ |
二つのコアが2次キャッシュを共有することでコア間通信やメモリアクセスを削減、柔軟な容量割り当てが可能。1次⇔2次の転送速度も2倍に |
5 |
インテリジェント・パワー機能 |
コア内部を細かいユニットに分けて使用/非使用を監視。非使用部分の電力をOFFにすることで徹底的にムダな電力を省いている |
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