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ウワサその04 HDD振動設置場所編

TEXT：目黒廣道

置き場所を変えることで、HDDのディスクやヘッドを駆動するモーターにかかる負荷、振動の違いが速度の差となって現われる・・・？　防振グッズは多少の効果がありそうだけど、ヘッドの動きは重力に左右されるのだろうか・・・。

HDDの置き方や防振グッズで
HDDの速度が変わる？

　HDDは円盤状の金属メディアをモーターで高速回転させ、データを読み書きするための磁気ヘッドをボイスコイルモーターで左右に移動するという機械的動作を行なっている。このように機械的な駆動部分が多いため、常に振動が発生している。しかも、ヘッドとディスクの隙間はタバコの煙の粒子よりも小さい空間しかない（動作時）など、非常に精密な構造となっている。

　そのため、ちょっとした環境の違いでも、転送速度に差が出てくるという話がある。通常、一般的なPCケースにHDDを取り付ける場合は、基本的にHDDの基板面が下になる。しかし、キューブタイプや薄型のPCケースの場合、設置スペースの問題から、HDDを縦向きや横倒しにして取り付ける場合がある。

　また、使用するPCケースの材質や剛性、PCケース以外でも設置する場所によっては振動の度合いも異なるだろう。

　しかし、設置場所の違いや振動が、本当にデータ転送速度に影響を与えているのか？　これらの疑問を解消するために、実際にHDDの設置場所によるパフォーマンスの検証を行なってみた。

　テストはPCケース（ソルダム ALCADIA XR-2JV PRO）のシャドーベイに設置した状態を標準とし、むき出しで右倒しや縦置き、手持ち、重りを乗せるなど、さまざまな条件を試してみた。

　また、振動を抑えて高速化を図る「防振グッズ」がどのぐらいの効果を発揮するのか、こちらについても何種類か試してみることにしよう。

HDDの置き方でアクセススピードが変わると考えられているのは、このヘッドが特定方向に往復運動するからだ

この置き方（縦）ではHDDのヘッドが垂直方向に対して上下することになる。上に動くときには重力に引っ張られることになり、ボイスコイルモーターへの負担が増す・・・ことはあるのだろうか？

HDDの標準的な設置方向（横）。ヘッドは水平に動作するため、重力による影響でヘッドの進行方向による動作速度への影響は無視できるものと考えられる

防振グッズの効果

　防振グッズは主に空間にゆとりのある5インチベイ用の製品が多い。HDDとPCケースの間に取り付けることで、HDDの振動を吸収、またはケースの振動をHDDに伝えないようにする働きを持つ。もともとは高速化のためと言うよりも、いわゆる「ビビリ音」を吸収するためのパーツとして登場した。

　HDDの振動が性能に影響を与えると言われ始めた頃から、静音パーツ兼高速化パーツとしてとらえられることが多くなったものである。実際の効果は下のとおり。価格も手頃なアップグレードパーツなので5インチベイが空いているならば導入してはいかがだろう。

アイネックス

HDS01-BL

実売価格：1,800円前後

URL：http://www.ainex.jp/
E-mail：suppot@ainex.jp

ヒートシンクも兼ねた、防振ゴム付きの3.5インチHDD用マウンタ。放熱と防振という、二つの機能を同時に実現する、お得なパーツだ

サイズ

ハードディスクスタビライザー

実売価格：800円前後（4個セット）

URL：http://www.scythe.co.jp/
E-mail：support@scythe.co.jp

3.5インチHDDを5インチベイに取り付けるための、防振機能付きマウンタ。価格が安いので、手軽に使える防振アイテムだ

【テスト環境】
CPU：Pentium D 950（3.4GHz）
メモリ：PC2-5300 DDR2 SDRAM 512MB×2
マザーボード：GIGABYTE GA-G1975X（i975X）
ビデオカード：NVIDIA GeForce 7800 GTX（リファレンス）
システムHDD：Western Digital WD Raptor 740（Serial ATA、10,000rpm、74GB）
検証HDD：Western Digital WD Raptor 1500AFD（Serial ATA 2.5、10,000rpm、150GB）
OS：Windows XP Professional SP2（DirectX 9.0c）
Vsync：OFF

まとめ

　各テストの結果は、上のグラフにあるとおりだ。その結果を見ると、どの方向にHDDを設置しても転送速度に差が出たとは言いにくい。多少、値に差があるものの、ほぼ誤差の範囲内と言えるだろう。唯一、重りを乗せて使った場合だけ、若干の転送速度の向上が見られるが、大幅な向上とは言えない。しかも、誤差を考えなかった場合は、ケースに搭載した場合が一番遅いということになってしまう。

　ところが、アイネックスのHDS01-BLやサイズのハードディスクスタビライザー、そしてp.47で紹介したセンチュリーの裸族の服といった防振パーツを使用した場合は、わずかだが確かに効果が認められた。1MB/sほど転送速度がアップしている。

　しかし、高速化よりも注目したいのが、「転送速度の安定化」である。

　通常、ベンチマークの値は多少のバラつきが出るものである。そのため、本誌では誤差を極力少なくするためにベンチマークテストを複数回行ない、その平均を結果として掲載している。防振パーツを利用した場合では、このバラつきが明らかに少なくなっている。

　この結果から、HDDの設置場所による転送速度の差は気にする必要はないが、振動対策を施すことで、安定化（と場合によっては静音化）には役立つと言えるだろう。

置き方による速度差は誤差程度。防振パーツはわずかに効果あり！